(7)「生命の樹図」の構造
「生命の樹図」の中央には、最も高い「均衡の柱」が立っている。これが父の柱である。向かって右に立つ「慈悲の柱」は、ステファノが垣間見た人の子、救世主イエス・キリストを表している。父の柱の左に立つのが、聖霊を意味する「峻厳の柱」である。聖霊は何事も厳格に対処する。だから、聖霊に対する暴言や妄言は赦されないのだ。
中央の柱の頂点からジグザグに降りる力を「電光の通路」、あるいは「力の下降線」「雷の閃光」という。余談だが、日本では昔から雷が鳴ると「クワバラ、クワバラ」と言うのも、実は「カバラ、カバラ」と言って魔除けにしていたことになる。また、クワバラの「桑原」も、「桑」の解字を見ると三角形を示す三叉「ψ」が三つ集まった木とあり、生命の樹を示している。そこに「原」が付くと天上界を示す「高天原」、すなわち至高の三角世界となる。
「中央の柱」のセフィラ「ケテル」から発した電光は、救世主の柱のセフィラ「コクマー」へと走り、その後、聖霊の柱の「ビナー」へと到着する。電光が走るこの順位は、天界における神の順位でもある。
天地創造、万物生成という大事業を行った造化三神として、「古事記」では天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、「日本書紀」では、国常立尊、国狭槌尊、豊斟淳尊としている。つまり、「父=天之御中主神=国常立尊、子=高御産巣日神=国狭槌尊、聖霊=神産巣日神=豊斟淳尊」ということである。
生命の樹図は、日本の造化三神(元初三神)に対応する至高の神界を、「ケテル、コクマー、ビナー」の3個のセフィロトで構成する三角世界としてあらわしている。これを「至高の三角形」という。
至高世界のすぐ下に位置するのは、「ケセド、ケプラー、ティファレト」で構成される「倫理的三角形」で、その下には「ネツァク、ホド、イエソド」の「アストラル三角形」がある。
最も下の10番目のセフィラ「マルクト」は地獄を表しており、どの三角形の位階にも属さない。いわゆる番外である。そこは日本では3位階を下った半人前と言う意味で「三行半」と称した。これは江戸時代に離縁と再婚の許可文が三行半で書かれていたことから、、元の夫から妻を外すことを意味した。
日本ではカッバーラの奥義が習慣化した異様な国で、それを自覚したわけではないものの、昔からカッバーラを縦横無尽に使っていた。例えば、ヤクザを「八九三」と記したのは、「8+9+3」で合計が20となり、カブでいう「0」だから、すべてがチャラになった人間のことを意味している。こういう数をユダヤ密教は「ゲマトリア→数秘術」といい、れっきとしたカッバーラの一つである。
「太陽の輝き、月の輝き、星の輝きがあって、それぞれ違いますし、星と星との間の輝きにも違いがあります」(新約聖書「コリントの信徒への手紙 一」第15章41節)
10個のセフィロトは、預言者モーセの10個の戒め、いわゆる「十戒」と対応する。上から順に3個ずつ(三角形)の戒めがヒエラルキーを示し、最後の1つが地獄を示している。
至高の三角形の戒めは「①あなたには、私をおいてほかに神があってはならない、②あなたはいかなる像も造ってはならない、③あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」で、いずれも神と直接関わっている。
次の三角形は「④安息日を心にとどめ、これを聖別せよ、⑤あなたの父母を敬え、⑥殺してはならない」で、すべてが倫理上の戒めである。
最下層のアストラル三角形は、「⑦姦淫してはならない、⑧盗んではならない、⑨隣人に関して偽証してはならない」で、一歩間違えば監獄行きの戒めだから、アストラル三角性が下を向く。
最後に地獄に通じる戒めとして、「⑩隣人のものを一切欲してはならない」がある。なぜこれが滅びの戒めかと言うと、サタン(ルシフェル)が天使として天界にいたころ、天の父の支配する世界を独り占めしようと暗躍し、自ら地獄に堕ちる運命を招き寄せたからである。人がサタンの僕になる最初の因子がこの戒めに存在する以上、これが地獄に至る種となる。
人は誰しも、どこかの位階に属しながら生きており、絶えず上を目指して上昇する運命にある。
最終的に至高の三角形に至る者は、「ダアト」をくぐらなければならない。ダアトとは、隠された11番目のセフィラのことである。そこから先は神殿の「幕屋」であり、至高の三角形すなわち神界となる。日本ではそれを「幕の内」と称している。
「イエスは再び大声で叫び、息を引き取られた。その時、神殿の垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂け・・・・」(新約聖書「マタイによる福音書」第27章50~51節)
人は「電光の通路」を上昇し、最後はダアトをくぐり抜けて聖霊(ビナー)を受けなければ至高の三角形に入ることはできない。
カッバーラを授かった最初の人間はアダムである。アダムはエデンの園から追放されるとき、地上で生きるための知識が授けられた。それがカッバーラである。エデンの園を追放された時、アダムが最初に行ったのは、神の祭壇を作ることだった。つまり、知識を得、コンパスと曲尺を用いて石をくみ上げたアダムはメイソン(石工)の始祖と言うことになる。
曲尺の「方形」とコンパスの「円」は、その後も生命の樹を表す根幹となり、生命の樹の典型であるインドに残る仏陀の「ストゥーバ→仏塔)も、方形と円で宇宙構造を表している。また方形と円を用いた「日の丸」や「前方後円墳」は、日本がメイソン国家であることを暗示している。ちなみに、神道と深くかかわる大相撲は、方形の盛り土に丸く土俵を配置して土俵にした。メイソンの伝統はアダムから連綿と続き、ソロモン王の時代には、王の命令で神殿を立てたティルスの指導者ヒラムが継承していた。
「ティルスの王ヒラムは、ソロモンが油を注がれ、父に代わって王となったことを聞き、家臣を遣わしてきた。ヒラムは常にダビデと友好関係にあったからである。」(旧約聖書「列王記 上」第5章15節)
イギリスと発祥とする近代フリーメイソンには、この匠の技術のみならず、古代の秘密の儀式もそのまま受け継がれている。
日本でも、大工だったイエス・キリストを象徴する厩戸豊聡耳皇子、つまり聖徳太子に伝えられ、実際、日本でも大工の祖と言えば聖徳太子を指す。
黙示録の解読には、カッバーラの基礎知識が不可欠で、未来の姿を垣間見るために、飛鳥氏はカッバーラの合鍵を用いて、黙示録の中に入って、ヨハネが隠した秘密を探り出そうとしているのだ。