(1)聖書の謎を解く鍵は「言霊=ユダヤ密教カッバーラ」である
これは飛鳥昭雄著「言霊でしか解けない聖書」の要約である。私は数年前に「ヨハネの黙示録」について飛鳥氏の説の要約の要約をブログに書いている。今回はもう少し詳しい内容を書く予定である。
アメリカの作家ダン・ブラウンが書いた「ダ・ヴィンチ・コード」は、イエス・キリストとマグダラのマリアは夫婦で、かつ二人に間には子供がいた可能性を示唆している。マグダラのマリアがイエス・キロストの妻だったとする説は、昔からささやかれており、それに関する研究書も多数出されている。
レオナルド・ダ・ヴィンチは謎の多い人物だった。その代表が、「モナリザ」であり、「最後の晩餐」である。そこには晩餐に欠かせない聖杯が描かれていなかったり、イエス・キリストとユダのモデルが同一人物だとする説があるなどダ・ヴィンチの絵には謎が多いのだ。
ダ・ヴィンチは当時の秘密結社「シオン修道会」の第20代総長だった。彼は当時から、「地動説」を説き、天動説を標榜するカトリック教会の異端審問官に狙われ、危うく投獄されそうになっている。さらに、近代兵器にも通じる設計図まで残しており、「遠い将来、地表が高くなったり沈んだりして、頻繁に洪水が起きる時代が来る」として、12枚の洪水の絵まで描き残しているのだ。
同様にミシェル・ド・ノートルダム(筆名ノストラダムス)も、天動説を否定し、知人に地動説を説いていた。これはコペルニクスより前であり、ガリレオの100年も前の出来事である。
ノストラダムスはイッサカルの血を引くヘブライ人の末裔とされるが、ユダヤ教からキリスト教へと改宗していた。以後、ノストラダムスはイエス・キリストへの信仰を強め、偶像崇拝に陥ったカトリック教会を非難したことから、異端裁判にかけられそうになり、寸前に脱出している。これもダ・ヴィンチと似ている。また、ノストラダムスもダ・ヴィンチも当時は死を覚悟しなければならないほどの犯罪行為である死体解剖に専念していた。
現時点では、ダ・ヴィンチとノストラダムスが遭遇した歴史的証拠は一切ないが、両者が同じ時代に生きていたことだけは間違いない。そして、ユダヤ密教であるカッバーラに精通した叔父から、様々な秘密の儀式と知識を学んでいったノストラダムスと、秘密結社の総長だったダ・ヴィンチがイエス・キリストの極秘録を通して、どうしても重なってくるのである。
「ダ・ヴィンチ・コード」には「最後の晩餐」の中央に座るイエス・キリストの脇の人物を、ヨハネではなくマグダラのマリアだとしている。その証拠が12使徒の要であるペテロの、右手にナイフを持ち、左手でヨハネと思しき人物の首を掻き切る動作であり、これは「秘密を保たねば殺す」という仕草だというのだ。果たしてそうだろうか?
そこでヨハネが書き残した「ヨハネによる福音書」を見てみる。
「イエスはこう話し終えると、心を騒がせ断言された。「はっきり言っておく。あなた方のうちの一人が私を裏切ろうとしている」。弟子たちは、誰について言っておられるのか察しかねて、顔を見合わせた。イエスのすぐ隣には、弟子たちの一人で、イエスの愛しておられた者が食事の席についていた。シモン・ペテロはこの弟子に、誰について言っておられるのかと尋ねるように合図した。その弟子が、イエスの胸元によりかかったまま、「主よ、それは誰のことですか」というと、イエスは「私がパン切れを浸して与えるのがその人だ」と答えられた」(新約聖書「ヨハネによる福音書」第13章21~26節)
ペテロが合図した「この弟子」「その弟子」はヨハネとされている。書き手が自分のことを名で書き残さないのは常識だからだ。つまりヨハネはその席にいたのである。問題のペテロの左手は何をしているのかというと、早く答えろとヨハネの肩をゆすっていたということだ。ペテロが右手に持つ剣は、イエスを捕らえに来た兵士を切りつける暗示である。
「シモン・ペテロは剣を持っていたので、それを抜いて大祭司の手下に、打ってかかり、その右の耳を切り落とした。手下の名はマルコスであった。イエスはペテロに言われた。「剣をさやに納めなさい。父がお与えになった杯は、飲むべきではないか」。そこで一隊の兵士と千人隊長、およびユダヤ人の下役たちは、イエスを捕らえて縛り、まず、アンナスのところへ連れて行った」(新約聖書「ヨハネの福音書」第18章10~13節)
ペテロの剣はマグダラのマリアに向けられたものではない。他の福音書でも12人がそろっていたと記されている。12人とは12使徒のことで、当時の習慣から女性は人数に数えない。だからこそ、それはすべて男性であり、ヨハネがいなかったとも一切書かれていないのだ。
百歩譲って「ダ・ヴィンチ・コード」の通りだとしても、それはダ・ヴィンチがヨハネとマグダラのマリアを暗号目的に入れ替えただけであり、実際の晩餐はそうではなかった。最後の晩餐に当然、ヨハネはいたのである。
ヨハネがパスモス島で天啓を受けて書ききしたのが「ヨハネの黙示録」である。「ヨハネの黙示録」には謎が多く、今まで完全な形でこの書を解き明かした書物は皆無である。ほとんど誰も手を付けなかった禁断の預言書と言える代物なのである。
その黙示録をユダヤ密教であるカッバーラというカギで解き明かしたのが飛鳥氏の本である。カッバーラによって錠をかけられたがゆえに、黙示録は史上最も難解な書とされ、異端扱いを受け続けている。なぜなら、ヨーロッパのキリスト教会の人々には、ユダヤ密教のカッバーラの知識がないからであった。そのため、黙示録が全く理解できなかったのである。
未曽有の天変地異が地球上で発生することや、イスラム諸国との長引く戦乱の後に勃発する最終戦争、太陽系内に突如として出現する新天体、世界統一政府が樹立し、そこに座る世界総統による凄まじい恐怖支配等々・・・・。
カッバーラを用いてひも解くと、黙示録はヨハネが垣間見た現代、そしてこれから先の世界がどうなるのかの預言も随所に書き記している。そして、未来を先に知っておけば、救いに至る道を見つけられるとヨハネは書き残している。
「ダ・ヴィンチ・コード」がヒットしたことで飛鳥氏が1つだけ危惧することがある。それはイエス・キリストとマグダラのマリアの間に子供がいたとする説が、黙示録に登場する世界を恐怖で支配する「偽救世主」出現預言と関わるかもしれないということだ。その男は自分をメシアと名乗り、エルサレムに再建された「ソロモン第3神殿」に座ると預言されている。この男は「獣」と呼ばれ、悪魔の数字である「666」を構成する。この男がメシア、あるいはイエス・キリストの末裔と名乗る可能性がある。もし、そうだとすれば、そのことを世界中に告知する下地を作る役目を果たしたわけで、「ダ・ヴィンチ・コード」は出るべくして世に出たことになる。