（５８）イスラエル・コード「秦」と「秦始皇帝」
インドを超えると、そこはオアシス国家が点在する西域である。
中国において、もっとも西にあったのが「秦」である。
秦は中国を意味するチャイナやシナ、チンやシンの語源でもあるが、ここに住む人々は漢民族ではない。彼らは馬を飼う遊牧民族であり、定住して農耕を生業とする漢民族からは同族と見られていなかった。
アジアの遊牧民族の中に失われたイスラエル10支族がいたことは確かである。
秦族と同じく遊牧民であった「羌族」はチベット系で、現在のイスラエル国の調査機関アミシャーブの報告によれば、彼らの中に失われたイスラエル１０支族がいたことは明らかであるという。
この羌族の商人であった「呂不韋」が有名な言葉「奇貨居（きかお）くべし」と語り、その器を見抜いて抜擢した男が秦国の王子「趙政」、すなわち後の「秦始皇帝」である。
歴史家の司馬遷は秦始皇帝の本当の父親は子楚ではなく、呂不韋ではないかと疑っている。そうだとすれば、秦始皇帝には失われたイスラエル１０支族の血が流れていることになる。
紀元前３世紀、中国全土を統一して「秦帝国」を築いた秦始皇帝は度量衡や文字、貨幣などを統一し、全国に郡県制を敷いた。
実はこれ、西方のアケメネス朝ペルシャの統治体制と全く同じなのだ。直接的な関係はないと見られていたが、２００６年、秦始皇帝が作った兵馬俑遺跡からペルシャ人の人骨が発見されたことで、一気に流れが変わった。秦帝国の建国には、ペルシャ人が関わっていたことがはっきりしたのだ。
アケメネス朝ペルシャといえば、バビロン捕囚された南朝ユダ王国の住民を解放した国である。
彼らの多くは母国にあるパレスチナ地方へと帰還したが、バビロンに残った連中もいる。
中にはモルデカイのように宰相まで上り詰めた者もいる。彼らのことを「東ユダヤ人」と呼ぶ。
失われたイスラエル１０支族の他に、東ユダヤ人もまた、秦帝国へと流れてきたのではないか。そもそも「秦族」は、みな古代イスラエル人だった可能性がある。秦の字を有する国にイスラエル人の痕跡があるのは、それが理由だったとは言えないだろうか？
紀元前２４６年、趙政は若干１３歳で秦王に即位する。
実質的な政治は呂不韋が取り仕切ったが、成長すると、その政治能力はいかんなく発揮し、ついには王を超える皇帝を名乗る。
紀元前２２１年、長らく続いた戦国時代に終止符が打たれ、史上初の中国統一国家、秦帝国が樹立する。この間、わずか２５年。彼にとって最初の戦争である「肥の戦い」から数えたら約１３年である。優秀な重臣がいたとはいえ、異常である。
知略や政略だけで、これだけの短期間に広大な中国大陸を統一できるはずがない。きっと、他に大きな理由があるはずである。歴史の表には記されていない秘密があるはずである。
もし仮に、秦始皇帝が契約の聖櫃アークを手にしていたら、どうだろうか？
契約の聖櫃アークは兵器である。非常に危険ではあるが、使いようによっては、現代の核兵器と同様、戦略兵器たりえる。超常てきな力によって敵国を打ち破り、短期間のうちに中原を支配することも可能なはずだ。
預言者エレミヤがネボ山の洞窟に隠した時から３００年以上の時間がたっているのみならず、１万キロ以上の距離がある。これらのギャップを埋める史料は、今のところない。しかも、秦始皇帝が契約の聖櫃アークを手にし、それを実践で使用したという記録も、残念ながら見当たらない。
唯一、わずかな印があるとすれば、秦始皇帝が用いた「璽」である。これは国家の印章である。秦始皇帝は史上初めて「国璽」を使用した。国璽は国家権力の象徴である。歴代の中国皇帝も、これに倣い玉璽を使用してきた。日本もしかり。現代においても、「大日本国璽」と篆書で刻まれてた金印を使用している。
注目したいのは、「璽」の字の形である。下には「玉」がある。原意は宝石のことだが、転じて国家における最高権力の象徴を意味する。上の部分「爾」は、きれいな花の象徴文字とされる。意味は汝、二人称として使われる。
だが、見ようによっては「璽」は契約の聖櫃アークを横から見た姿に似ている。古来、字には複数の意味を込める。欧米人には理解しがたいかもしれないが、東洋人には字は暗号である。秦始皇帝は「璽」に契約の聖櫃アークを重ねたのではないか。
もちろん、これは突飛な発想であるが、あえて主張するには訳がある。そう、あの秘密組織の八咫烏が暗闇から、そう囁くのである。