(45)アメリカの白神伝説
世界の創造神が、ある時地上に降臨。人間の姿で人々の前に現れた。神は白い姿をしており、髭を蓄えていた。彼は農耕や建築など、生活に必要なことを人々に教えた。生贄をやめさせ、道徳を説いた。これにより、国は豊かになり、繁栄した。しかし、やがて人々は堕落し、殺人などの罪を犯すようになった。これを嘆いた白神は天に昇って行った。その際、この世の終わりに再び帰ってくると約束した。今も、人々は神の帰還を待ち続けている。
名前は違えど、南北アメリカ大陸には判で押したように、同じ神話伝説が残っている。マヤのククルカーン、アステカのケツァルコアトル、インカのヴィラコチャ、ボリビアのボチカ、北米インディアンのパハナ、ハワイのロノなど、見事なまでに一緒なのだ。
アイヌのオキクルミカムイもまた、この白神神話の一つだといっていい。神話だけならまだしも、これが原因でいくつか民族の存亡にかかわる事件が起こっている。
16世紀初頭、スペインのエルナン・コルテスが軍隊を率いて新大陸へと渡り、アステカ帝国へと侵出する。当初、コルテス達を見たアステカ人たちは、その肌が白いことと髭をたくわえていたことで、白神ケツエルァルコアトルが帰ってきたと思い込んだ。アステカ王は予言通り、国を明け渡すことを表明。勘違いされたことを逆手に取ったコルテスは、易々とアステカ帝国を征服してしまう。
同じころ、スペインのフランシスコ・ピサロが軍隊を率いてペルーへと侵攻する。ここでも、彼らを見たインカ人たちは、白い肌と髭から、すぐさま白神ビラコチャを連想。予言通り、ビラコチャが帰還したという噂が広まり、これまた易々とスペイン軍の侵攻を許してしまい、ついにインカ帝国は滅亡する。
時代は下り、18世紀後半、イギリス人ジェームズ・クックは海洋探検に出かけ、ハワイ諸島に到着する。見慣れない白人を見たハワイの人々は、クックの船が掲げていたマストを見て驚く。白い帆に十字の帆柱はロノの象徴だった。乗っていた人間も白い肌で髭をたくわえている。ついにロノが帰ってきた。そう信じたハワイの人々はクックたちを盛大に歓迎する。しかし、ロノにしては様子がおかしいと気づいた人々は暴動を起こし、クックらを殺してしまう。
偶然にしては出来過ぎている。一体感太平洋全域で語られる白神とは何者だろうか?
ハワイの場合、十字架の形をしたマストの帆柱がロノの象徴だった。十字架と言えば、イエス・キリストの象徴だ。つまり、この白神こそ、イエス・キリストだったのではないのか?
イエス・キリストは十字架上で死んで、3日後に復活した。復活したイエスの体は、もはや不死不滅である。時に白く輝くこともあった。伝道する際、白い服を着ていた。イコンなどに描かれるように、長い髪に豊かな髭をたくわえていた。白人ではなかったが、復活した体は白人以上に白い肌をしていた可能性がある。全ての色の光を合わせると白になる白で、白人の白とは違う光の白だった。
イエスは弟子たちに伝道するにあって、「自分はイスラエルの失われた羊に遣わされており、パレスチナとは別の羊も導かなくてはならない」と述べている。
「イエスは私はイスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていないとお答えになった」(「マタイによる福音書」第15章24節)
「私には、この囲いに入っていないほかの羊をも導かねばならない。その羊も私の声を聞き分ける」(「ヨハネによる福音書」第10章16節)
イエス・キリストの使命はイスラエル人を導くことにある。パレスチナ以外の失われたイスラエル人たちの所にも行って、救いの教えを伝えなければならない。不死不滅の復活体となった今、イエスは12使徒たちと別れて、全世界に散らばったイスラエル人たちのところへと旅立った。イエスは肉体を伴ったまま、天に昇った。天空を飛翔し、しかるべき時に、しかるべき場所に降臨した。もし仮に、シャハン博士が言うように、環太平洋のモンゴロイドたちが古代イスラエル人の末裔ならば、彼らの前に復活したイエスは姿を現したであろう。
広く輝く復活体は、まさに白い神である。白く輝くイエスが天空から降臨して、人々を教え導いた。環太平洋の人々にとって、イエスはケツァルコアトルであり、ククルカーン、ヴィラコチャ、ボチカ、パハナ、ロノ、そしてオキクルミカムイであったはずである。
「新約聖書」によると、昇天するにあたって、イエスは弟子たちに、この世の終わりに再び地上に降臨すると約束した。イエスの再臨である。白神は、全く同じことを預言している。つまり、白神の正体はイエス・キリストだったのだ。