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世界皇帝の死(16)

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(16)EUはEV(電気自動車)、木造都市、脱石油へシフト

 2017年、最初の衝撃波が襲った。それがEV(電気自動車)ショックである。欧州諸国が一切にEVシフトを宣言した。それだけではない。ガソリン、ディーゼル、さらにはハイブリッド車も販売禁止を宣言したのだ。規制ではない。禁止である。その差は天と地の差ほどある。まさに、脱石油宣言そのものである。石油王が生きていたら、とても恐ろしくて、できなかっただろう。

 ヨーロッパ諸国は、世界皇帝の余命が幾ばくも無いことを知っていた。だから、水面下で素知らぬ顔で超高性能EVの開発を密かに進めながら、その時を待っていたのだ。そして、その死を見計らって、ここぞとばかりに脱石油つまりEVシフトを打ち出したのである。それまで、世界の自動車メーカーにとって、脱石油は絶対タブーであった。石油王ロックフェラーが全世界に睨みを利かせていた。そのタブーを踏み越える者に魔王は容赦しなかった。

 その典型がスターリン・マイヤー毒殺の悲劇である。水で走るエンジンを開発し、実際に走行テストを公開した愛すべき発明家だった。彼は記者たちにこう断言した。「80リットルの水でアメリカ大陸横断も可能だ。水は水道水でも雪解け水でも、なんでもかまわんよ」と笑顔でカメラに向かって快活に話す映像が残されている。そして、北米大陸横断の完走を祝う乾杯のグラスを飲み干した瞬間に、胸をかきむしって悶絶したのだ。恐怖はさらに続く。明らかに毒殺なのに、地元警察は、それを病死で処理したのだ。魔王の威光は、そこまで及んでいる。

 魔王の闇の力は、それ以外でも発揮された。それがGMのEVI潰しである。GM社は、かって全米に先駆けて高性能電気自動車を開発した。それが「インパクト」である。これは当時としては群を抜いた高性能EVであった。それは、EVIと言う商品名で市販される予定であった。当然、購入希望者は殺到した。しかし、不思議なことに、普及はカリフォルニア州とアリゾナ州の2州に限定された。さらに不可解なことに、それは販売ではなく、リース契約とされた。さらに、契約には異常なほど細かい条件が課せられた。ハリウッド俳優のトム・ハンクスやメル・ギブソンなども真っ先に手を挙げていた。そのギブソンが呆れて肩をすくめる。

「車と何の関係もないことまで、契約時に質問、詮索されるんだ。どうしてだい?」 殺到した希望者たちは首を傾げた。「本当は売りたくないみたいだった」 その通り、むろん、開発したGM社は売りたかった。そのため社運をかけて開発した量産EVである。投資コストを回収するためには全国展開の販売が不可欠だ。しかし、闇の力がそれを許さなかった。GM首脳陣はしぶしぶ闇の命令に従うしかなかった。こうして、アメリカ初の量産EVIは突然の悲劇をたどった。

 ユーザーたちに唐突にEVI回収が通告されたのだ。当然、エコに目覚めた彼らは「ノー」と拒絶した。すると、なんとGM社は警察権力まで行使して、回収を強行した。ユーザーたちは連帯し、徹底して抵抗した、自然にそれは電気自動車を守る市民運動に発展していった。こうしてGM社のEVI撤収に抗議した。それはまさに主婦や学生など草の根の抵抗だった。しかし、GM社は警察を呼び、警官たちは次々に市民に手錠をかけて連行したのだ。何人もの逮捕者を出して、数多くのEVIがトレーラーの荷台に積まれ、砂漠の中のとある解体工場へと運ばれていった。空撮の映像は、衝撃的な光景を写し出す。そこには、ペシャンコに潰されたEVIのおびただしい残骸が山と積まれていた。これら一連のGM社の行為は、奇妙と言うより狂気そのものである。さらにユーザー全員が継続使用を訴え、回収に反対しているのに、警察まで動員して多くの逮捕者まで出しても、回収を強行したのは、さらに異様である。

 ユーザーから愛車を強硬に没収するというGM社の一連の強行は、メデイアでは一切報道されなかった。この異常事態の顛末は、唯一、市民グループが作成した記録DVD「誰が電気自動車を殺したか?」で知ることができる。そこには、アメリカ社会の異様な病んだ一面が生々しく告発されている。脱石油を許さないということはこういうことだったのである。メル・ギブソンもトム・ハンクスもただ呆れ果てている。市民たちは抗議のメッセージを込めて盛大に葬式を行い、数多くの市民が列席した。その死を弔われるのは電気自動車・・・EVIなのだ。この電気自動車の葬儀の映像には、アメリカと言う国家への痛烈な皮肉が込められている。


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