(45)トランプ大統領は旧勢力を一掃し、かっての常識が通用しない世界がやってきた!
2016年11月、アメリカで大激震が発生した。トランプ大統領の誕生である。大慌てした安倍首相は、まだ大統領にもなっていないトランプを表敬訪問し、媚びを売った。一方で、アーミテージ・リポートに盲従した安倍自民党にとって、トランプの登場は青天の霹靂だったはずである。それはリチャード・アーミテージの敗北であり、CSIS(戦略国際問題研究所)の存在理由が吹き飛んだ瞬間だった。TVカメラの前で意気消沈するアーミテージとマイケル・グリーンの姿が印象的だった。これでジャパン・ハンドラーとして日本から莫大な指南料が入らなくなる。彼らが顔面蒼白になったのは当然だった。
アメリカでは政権が代わるだけでワシントンで職を失う人間が1万人を超すという。公職を含むほとんどが入れ替えになる。CSISも例外ではない。
アメリカと日本の大きな違いは情報とその分析力の差にある。それは大企業にも言えることで、中間管理職は「同調圧力重視」で思考停止状態になっている。結果、莫大な利益を得ても、重役たちは内部留保で資金を社会還元しない。こうしているうちに東芝やシャープのような有様に陥り、同じことがSOHYやパナソニックでも起きる。
トランプはなるべくして大統領になったことが判明する。トランプは、白人中流層とブルーカラーを取り込み大勝利した。ヒラリーでは問題が解決せず、改革どころか悪化した構造を延命させると判断したわけである。そのトランプが真っ先に手掛けたのが「TPP撤退」だった。これには強行採決でTPPを通そうとする当時の安倍自民党にとって、梯子を外された状況を晒すことになった。だから安倍首相はトランプと会ったわけである。それは同時に「日米安保=TPP」の証拠ともいえる行動だった。TPPは経済協定ではなく、軍事協定だったのである。つまり、環太平洋軍事同盟(新・連合軍)だったからである。これがTPPのブラックボックスの正体である。
アメリカを支配するのは、議会・大統領・ペンタゴン(国防総省)の三匹の蛇である。そのなかで、軍産複合体の象徴であるペンタゴンの力は絶大で、アメリカ最大の官僚組織であり、ペンタゴンの決定に逆らう大統領に明日はない。J・F・ケネディのように大衆の目前で公開処刑されるのである。ケネディ暗殺劇は、それまでの大統領暗殺とは違う。ケネディの場合はテロではなく、クーデターである。軍がアメリカの民主主義を転覆させたのである。正確には軍産複合体であり、そのトップがロックフェラーだった。軍とNSA(国家安全保障局)は一心同体で、その配下のCIA(中央情報局)もFBI(連邦捜査局)も警察も協力したとされる。そのペンタゴンが中核となって動いたTPP交渉は、最後の日本が要になっていた。日本が「集団自衛権」を承認しなければ、対ロシア・対中国を想定した新連合軍は意味をなくす。そのため安倍自民党は強行採決したのである。その最大の目的は対ロシア戦略である。中国は軍事的にもアメリカの敵ではないからである。
一方、プーチンはロマノフ王朝時代のロシアを復活させるため、EUの弱体化と混乱に乗して侵攻する危険性を持っている。北方領土返還を盾に日本を揺さぶり、邪魔な太平洋の軍事同盟に楔を打ち込もうとする戦略だった。2016年12月、プーチン大統領は来日し、安倍首相とトップ会談を持った。プーチンは最初から「引き分け」と言っているが、4島一括返還など全く考えていない。さらに、ロシアは返還ではなく譲渡を貫いている。譲渡とは割譲と同じように、返すのではなく、ロシアの外交上有利となる場合の取引材料である。引き分けとは2島対2島の意味で、ロシア有利の引き分けは領土的に大きな方をロシア領土のままにする意味である。ロシアは「国後島」「択捉島」を領有し続ける。
プーチンはTPPで日本にを凋落させる目的で、小さいほうの2島を譲渡するつもりだった。ところが、アメリカで次期大統領がトランプになり、TPP離脱を再表明したのである。おまけにトランプはプーチンと気の合う指導者の一人と公言した。トランプがTPPの離脱を実行したら、北方領土の2島を日本に譲渡する必要がなくなる。こうして自民党の目論見は大きく外れ、安倍首相が大慌てでアメリカに飛んで行ったのである。
事実、TPPが消え去ることでロシアは東側の圧力がなくなり、全力で西側侵攻に向けることができる。ところがアメリカは状況がどちらに転んでも同じ結果になる戦略を持っている。もし、トランプではなく、ヒラリーだったら、TPPの要となる日本を再び大地震で壊滅させ、自衛隊が全国的な救援活動で麻痺状態に陥ることで太平洋軍事同盟どころではない状態を作っただろう。つまり、結果は同じで、ある意味、トランプは日本を救ったことになるかもしてないのである。