(35)東西枠組み争いのカギを握るのはインド
次の時代に向けた東西の枠組みに関する動きを見ていきたい。
2018年6月に開かれた複数の国際会議や交渉の場では「朝鮮半島和平」や「中近東和平」、「アジアと欧米の関係」、「ドイツを中心としたEUの今後」など世界規模の大きなテーマが議論されてきた。その最大の議題が「アジアと欧米の覇権争い」の行方であった。この東西枠組み、要するに「縄張り争い」と言い換えてもいいが、どうのような枠組みにするのか、どこまでが陣地になるのか、何をもって仲間するのか、東西融合の前段階として、この争いは活発化している。
その陣地争いのホットスポットがインドである。東西によるインド争奪の動きが強まっている。まず、動いたのがアメリカ軍である。2018年6月1日、アメリカは「太平洋軍」という名称を「インド太平洋軍」に改めた。いわばインドを中国包囲網の中心に据えようと動いたのである。司令官も日系のハリー・ハリスからフィリップ・デーヴィドソン海軍大将に交代して、日本の自衛隊、インドネシア軍、インド軍、オーストラリア軍との連携を強化すべく急いでいる。そのハリスは韓国大使へと左遷された。
対する中国は、同盟国パキスタンと、その歴史的ライバルであるインドとの関係修復に尽力し、又ロシアもインドとの友好関係を生かして、上海協力機構(SCO)を中心としたユーラシア同盟を新たな世界権力の中心に育てようとしている。
こうした綱引きが引き金となり、2019年2月26日、インドとパキスタンが軍事衝突を起こした。インド空軍が「パキスタン側テロ組織の最大の訓練施設を攻撃した」と発表。その翌日には、パキスタン軍がインド戦闘機3機を撃墜、インド軍もパキスタン戦闘機1機を撃墜した。両国は軍事的な緊張を即座に緩和する方向で動いた。
これらはクリミナル・ディープ・ステイトの仕掛けであったことが判明している。クリミナル・ディープ・ステイトは、東西の枠組み争いの隙をついて蠢いている。これ以外にも「オーストラリア・日本・インド・アメリカ」と「中国・ロシア」の対立も煽ってきたが、こちらのシナリオも空中分解した。それで今度は核保有国同士であるインドとパキスタンを嗾けて来たわけである。
しかしインドは、2017年に中国やロシアを筆頭とする上海協力機構(SCO)の加盟手続きを完了しており、ライバルであるパキスタンも同時に加盟手続きを完了した。つまり、上海協力機構を通じて同盟国となっているのだ。要するに、「旧体制勢力が描いていた世界の対立構図」と「現実」が乖離し、いくら対立を煽ろうとしても全く効果が無くなったのである。
インドのナレンドラ・モディ首相は、中国の習近平と首脳会談後、「勝者と敗者のどちらかしか生まれないような戦いに中国とインドは参加しない」と声明を出している。核戦争になりかねないパキスタンと本格的な軍事衝突など起こり得るはずはなかったのだ。
インドの動向が、東西枠組み争いのカギを握っているのは間違いない。
ハノイで行われた2度目の米朝会談について、もう一つ重要なポイントがある。トランプがレームダック化したことを全世界に知らしめたという点である。
アンドリュー・キムが2019年3月20日、韓国で開かれたAPARC関連の会合に出席、2月末の米朝首脳会談の決裂について興味深い発言をしている。彼によると、北朝鮮は首脳会談の際に「グアムやハワイなどにあるアメリカの戦略兵器の撤去」及び「米軍インド太平洋司令部の無力化」を要請したという。経済制裁を受けている北朝鮮が、超大国アメリカに対して最重要方面軍を無力化しろと要求したとすれば狂気の沙汰であり、決裂どころか、下手をすれば戦争になるような暴挙である。
だからこそ、このニュースを読み解くには、米朝会談そのものが「大国アメリカ」と「北朝鮮と言う小国」の間の交渉ではなかったという視点が必要である。裏では革命を主導してきた結社や米軍当局が極秘交渉を行っていたというのが正しい。だから、この「インド太平洋軍」の問題が議題に上がっているのだ。つまり、東西の枠組みをどうするのか、と言うのが米朝会談の真の目的なのである。
表舞台となった米朝交渉の続きは、中国を通じて、今現在、トランプの司令塔の一つとなっているイタリアP2フリーメーソンの下で進行中だという。イギリス連邦は、すでにアジア側の結社と連携し、新国際機関である未来経済企画庁の設立などに向け、大筋合意に達しているという。真の議題はトランプ抜きで行われているのだ。
その証拠に2019年3月21日、中国の習近平がイタリア・ローマを訪れた時、バチカン上部組織のP2フリーメーソンと会い、その結果P2フリーメーソンはアジア側の結社と和解し、世界政府誕生に向けて交渉を進めているという。
当初、東西の枠組みを決める秘密交渉は、トランプとの間で行われる予定であったが、トランプが愛国派軍部連合体に見放されたため、習近平は会談をキャンセルしたという。もはや「欧米権力においてトランプに力はない」と判断して、習近平はアメリカではなく欧米権力の中核の一つ、イタリアを先に訪問したのだというのである。