(16)「心音治療」はどのようにして行うのか?
「心音治療」は、特殊なマイクによってお母さんの心臓の血流音を採取する。その録音を患者の子供に聴かせるのである。この時に、耳ではなく子供のツボ(経穴)に直接聴かせるのがポイントとなる。具体的な施術は次のとおりである。
「採録した母親の心音を、マイクロ・アンペアという微弱な電流に変換します。それを子供の腰にある「命門」と「後頭部」のツボに通電します。その時は電極をツボに当てて、シールを貼って固定します」(三角医師)
お母さんの心音を、子供にヘッドホンで聴かせるものと思っていたが、意外だった。
「電流を我が子に流すと聞くと世のお母さんたちは大変驚かれますが、微弱な電流なので、子供は全く何も感じません。当然、痛みや不快感も全くありません」(三角医師)
船瀬氏は、ここまでで三角医師の慧眼にうなずいた。さすが、海外の出版社から英語で鍼灸の専門書を出されているだけのことがある。
お母さんの心音を微弱電流に変換して、子供の「経穴」から聴かせる。これは立派な漢方の鍼治療の発想である。言い換えれば、見事な「気エネルギー療法」と言える。
ツボに心音を微弱電流の波動で送り込む。それは、波動を気エネルギーに変換したことに他ならない。三角医師は優しく母親に諭す。
「ただ2カ所のツボにシールを貼るだけです。このシールをイヤホンと思っても、何ら差し支えありません。耳で聴くのがイヤホンで、ツボで聴くのがシールです」(三角医師)
「たったこれだけで治るのかしら?」と我が子の治療風景を見た母親は、一様に不安になるだろう。
具体的な「心音治療」の次のとおりである。この治療は家庭でも可能であり、「心音装置」を貸し出して、家庭で自主的に行ってもらっているという。
①心音録音→お母さんの心音を録音する。「心音装置」で、聴診器でも聴くことのできない心臓血流音を、特殊マイクを使って2分30秒録音する。
②ツボに貼付→子供の腰にあるツボ「命門」と、後頭部の直下にあるツボに電極シールを貼り付ける。
③再生送電→「心音装置」の再生ボタンを押す。すると、子どもの2つのツボに心音の情報が伝わる。勿論、子供は何も感じない。2分30秒の録音を2度再生して、合計5分間の通電で終わる。
拍子抜けするとは、このことである。最初はキツネのつままれた思いがする。子供たちもナーンダと呆れて、お母さんを見上げる顔が浮かぶ。これなら嫌がる子供は一人もいない。
「心音を録音するとき、常に意識を我が子に向けていることが絶対必要であり、子供への愛を感じながらの心音が大切です。さらに大事なことは、子供に強要しないことです。あくまでも話しかけるような気持ちで無心で我が子と戯れるような気持ちが大事です」(三角医師)
船瀬氏は子供のころから病院が大嫌いだったという。それはあの注射の恐怖があったからだ。さらに、薬くさい病院には、子供心に危険な臭いを感じ取っていた。しかし、この「心音治療」なら、誰でも笑顔でクリニックを訪れることができるだろう。たった5分間の治療で、痛みもなく、薬も使わない、もちろん注射の無い。
「どのくらいの間隔で治療を受けたらいいのでしょうか?」(船瀬氏)
「1日に何度でも構いません。心音録音はその都度行ってもよいし、子供が劇的に変わったのを気付いてから録音し直しても構いません」(三角医師)
「子供がまだ赤ちゃんの場合、心音治療は可能ですか?」(船瀬氏)
「時間帯は、子供が寝ているときの方がやりやすいでしょう。起きていると泣いたり、暴れたりするからです。しかし、それはあやしながら行うのも一興かと思います」(三角医師)