(32)「未来記」第三章 近代日本と終末国際世界の預言
(第三章 読み下し全文)
爾時仏法は興隆し僧道が繁栄する 法華秘密の両宗は威を加え天台不空の代を超える 戒律仏心の二家は正全にして曇無達磨の時に勝る 浄土の宗門は興繁して慧遠善導の出世に同じ 王臣は各信じ貴賤は共に帰す 都鄙遠近に流布するは唯極楽の経戒なり 僧尼も男女も専修するは是れ念仏の一行のみ
(第三章 現代語訳)
その時、仏教が盛んになり、僧道が繁栄することになる。法華経と秘密経の両宗派は勢力を増し、その勢いは天台宗の不空の時代を追い越す。戒律と仏心を重んじる両宗派は公平にして誤りが無く、曇無と達磨大師の時に勝るほどである。
慧遠や善導のように出家して、浄土宗の僧となる者が多くなる。王臣(君主に仕える人)は、思い思いに信仰し、身分の高い人も低い人も一緒に身を寄せる。都や田舎のそこかしこに広まるが、唯極楽往生のための経と戒めるだけで、僧も尼も男も女も専ら念仏の一行だけを修めるだけである。
(歴史的現代 日本)
徳川幕府の方針で、神仏混交がさらに進み、寺社は同じ境内で並立していた。神道行事に僧侶が、仏事に宮司が同席した。この時、寺は葬式を担当し今に残る葬式仏教の習慣を確立させ、幕府の恩恵に浴することになる。
徳川家の菩提寺として選ばれたのが、上野の「寛永寺」と芝の「増上寺」だったが、寛永寺は天台宗、増上寺は浄土宗で、どちらも天台宗派の寺だった。やがて、明治政府の「神仏分離令」(1868年)により、全国の寺は廃仏毀釈の波にさらされ、いったん衰退したかに見えた。
ところが、「日清戦争」(1894年)、「日露戦争」(1904年)と続く中、戦死者を葬ることで、各地の寺は再び盛り返す。特に日露戦争の戦死者は膨大で、38万人にも達した。陸軍の白米主食の脚気による病死者数が、2万7800人に上がっている。魂は靖国に祭られても、墓は生まれ故郷に置くのが常で、皮肉なことに全国の寺は戦争と共に発展した。
弘法大師が建立した「金剛峯寺」には、太平洋戦争で散った多くの英霊の墓が並び、浄土宗と浄土真宗の寺は、檀家の数も多いので繁盛した。
多くの寺は太平洋戦争中は軍部と手を組み、「戦いに捨てる命は国の命として永遠に生きる」と教え導き、尼寺は「銃後の守り」を説き、東条英機内閣時に発足した大日本婦人会の女性たちを導いた。
結果的に全国の仏教は、軍部と足並みをそろえ、法話を通して多くの兵士を戦場へと駆り立てたのである。日本中が念仏を唱えて息子や父親の無事を願い、戦死の公報が来れば、極楽往生を願って念仏を唱えた。江戸時代以降、葬式仏教は日本に再び復活し、敗戦と共に熱狂は冷めて現代に至っている。
(歴史的現代 世界)
世界規模で見た場合、仏教のみにとらわれない。テロを含む戦争の数は年々増えているのが現実で、特にアフリカから中東におけるイスラム圏での死亡者数は、うなぎのぼりの傾向にある。「アフガン戦争」「イラク戦争」でも、誤爆による民間人の死亡は激増し、イラクでは今も民間人多数が宗派間の争いやテロで死亡している。
2003年1月13日、ヨハネ・パウロ2世はイラク攻撃に反対する演説を行い、「戦争を行うべきではない。戦争は不可避ではなく、戦争突入は人類にとって敗北」と語った。ところが、ブッシュ・ジュニア大統領は全国のキリスト教徒に向かって、対テロ戦争が平和を招くと演説し、イラクへの攻撃が聖戦であることを強調した。共和党の上下両院議員に対するキリスト教シオニスト派の影響力は大きく、ブッシュ・ジュニアも福音派で、キリスト教原理主義者の強い影響下にある。どういうことかというと、十字軍志向が強いのである。
イスラエルのシオンの丘をキリスト教の聖地とし、異教徒(イスラム教)は排除すべき対象となる。これはブッシュ・ジュニアの聖戦発言の中核にあるのだ。一方、イラクのサダム・フセインも、当時、アメリカを悪魔とし、アメリカと戦うことが聖戦と強調していた。
イスラム原理主義を唱えるオサマ・ビンラディンも、ジハード(聖戦)を旗頭にアルカイダを組織し、世界規模でアメリカと同盟国に対して無差別テロを決行し続けている。一時、腸チフスで死亡したという憶測が流れたが定かではない。
世界中が平和を祈っても、アメリカは私利私欲的判断でイラクを侵略し、非難を浴びても居座る構えを崩さない。→いずれ必ず中東から追い出されるように撤退せざるを得なくなる。
沈黙を守るユダヤ教を別にすれば、現在の世界は、アメリカを筆頭とするキリスト教国VSイスラム教国の「新十字軍戦争」の状態にある。そのうち、奇麗事が通用しなくなるだろう。明らかに宗教戦争の様相を呈してくるからだ。
2001年9月16日、ブッシュ・ジュニアは対アフガン戦争を「新たな十字軍の戦い」と言い放っている。本音が出たのである。
増大する戦死者に向かって死後の安寧を祈っても、戦争指導者の傲慢な掛け声にかき消されていく。もはやイデオロギーの戦いではなく、世界を破壊しかねない21世紀の「宗教戦争」の様相さえ見せている。