(29)仏教は表面的に最盛期を迎える
「第三章 二」
法華秘密両宗加威而超于天台不空代
(読み下し文)
法華秘密の両宗は威を加え天台不空の代を超える。
(現代語訳)
法華経と秘密経の両宗派は勢力を増し、その勢いは天台宗の不空の時代を追い越す。
(現代注釈訳)
「法華」は法華経のこと。大乗仏教の経典「サッダルマ・ブンダリーカ・スートラ」の漢訳の総称である.天台宗は法華経を重視したが、一方、「秘密経」つまり密教はさらに活発化し、真言宗が天台宗を追い越してしまう。
(歴史的事実)
「正倉院」に法華経の断簡が保存されている。そのことから法華経は古くから馴染み深い経典で、聖徳太子以来、法華経は仏教の重要な経典の一つとされ、最澄により日本に伝えられた天台宗は発展を遂げているが一方、密教重視の真言宗も勢力を拡大し、多くの信者を集めて天台宗を超える勢いとなる。
しかし、弘法大師も最澄も、8世紀から9世紀の奈良時代から平安時代にかけての人間で、「未来記」が預言を開始する1222年の以前である。つまり、それまでに仏教の発展を支えて来たのが、弘法大師である空海と、最澄であると語っているのである。
これはある意味で肯定的な預言であり、後の鎌倉新仏教と称された新興仏教への否定につながっている。