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聖徳太子の「未来記」開封(26)

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(26)「未来記」第二章(4)~(5)の出来事

(賊の女に打ち滅ぼされる)

「未来記」第二章 四」

己經三代尼女為将軍而主弓馬之道

(読み下し文)

已に三代を経て尼女が将軍と為し、弓馬の道を主どる。

(現代語訳)

はや三代が経過して、尼女が将軍となり、武道を支配する。

(現代注釈訳)

 三代の時代を経る尼将軍と呼ばれる女が、弓道や馬道にも通じる者である。「三代尼女為将軍」とは、尼将軍の異名を持つ源頼朝の正室、北条政子のことを指す。同時に政子は2代将軍・頼家と、3代将軍・実朝の実母でもあった。

(歴史的事実)

 北条時政の娘だった政子は、源頼朝が伊豆蛭ヶ小島に流されて来た時に妻となり、頼家と実朝を産んでいる。頼家の死後は尼となり、頼家の将軍補佐として幕政に参加し枢機に与ったが、やがて頼家を将軍職から降ろして、実朝に引き継がせている。さらに政子は、官位として従二位に叙せられたため、「二位の尼」ともいわれた。

 この時代、女武者の姿は決して珍しいものではなかった。人一倍血気盛んな政子は、男のように弓を引き、馬も自由に乗りこなす女武者のようだったため、頼朝の目にとまったのである。初代頼朝の妻であり、2代将軍・頼家と、3代将軍・実朝の母だった政子は、まさに3代将軍に仕えた尼と言えた。

 その政子によって、朝廷の討幕軍が完膚なきまでに打ち破られ、三人の天皇が島流しの憂き目に遭う。「未来記」は朝廷を倒す女として、将来の世に登場する政子の姿を「弓」と「馬」で見事なまでにいい当てている。

(前代未聞! 三人の上皇の島流し)

「未来記」第二章 五」

三皇遠嶋流行而武将圍朝廷

(読み下し文)

三皇は遠嶋に流行し武将は朝廷を圍む。

(現代語訳)

三人の天皇は島流しとなり、武将が朝廷を包囲する。

(現代注釈訳)

 三人の天皇が島流しにされる。武士はますます権力を握り、朝廷をも従わせるだろう。「三皇」とは三人の天皇で、順徳天皇、後鳥羽上皇、土御門天皇を示す。「武将」が「朝廷」よりも権力を持つことが記されている。

(歴史的事実)

 島流しにあった天皇は、一人目は順徳天皇で佐渡に流され、二人目は後鳥羽上皇で隠岐へ流され、三人目は土御門天皇で土佐に流されている。順徳天皇は佐渡島に流された後、20年余り過ごした後に没している。後鳥羽上皇は隠岐にあること19年余りでこの世を去っている。土御門天皇は土佐に流されるが、その後さらに阿波に流され、そこで天寿を全うしている。

 こうして「未来記」は見事なまでに預言を成就させている。また、源氏と平氏に始まる武力集団の躍進は、鎌倉幕府の執権政治の確立で、朝廷を押さえ、後の南北朝時代に一時は揺らぐが、結局、武士が調停を抑え込む時代が到来した。言い換えれば、武器を持つ者が国を支配する力の論理がまかり通る時代を意味する。その変革期に「未来記」は預言を開始していることは、一つの大きな示唆を含むと見てよい。なぜなら、鎌倉時代と同じように「未来記」が世に出た現代こそ、当時と同じ武力が世界を支配する時代になっているからである。


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