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聖徳太子の「未来記」開封(24)

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(24)「未来記」第一章 近代日本と終末国際世界の預言

「第一章 読み下し前文」

「両王は位を諍い二臣は世を論う 黒鼠は朝食を噉らい黄龍は金殿に登る 兄王は西海に沈み武士は禁裡を汚す 寳剣を失い兵乱は止まず 弟王は禪り無し而るに位に即く 神璽明鏡は武士に依りて再び官闕に入る」

(第一章 現代語訳)

 二人の王は位を争い、二人の家臣は政治についてとやかく口を挟む。黒鼠(主家に忠実でない奉公人)は朝飯を食らい、黄龍(天子)は金殿において即位する。兄王は西の海に沈み、武士が宮中にまで入り込む。三種の神器の一つである宝剣を失い、なお戦乱はおさまらない。弟王は王位を譲られないまま位に就く。神璽と明鏡は武士に依って、再び宮廷に戻る。

(歴史的現代→日本)

 二極対立構図はいつの世でもあり得ることである。だから、現代のどれと特定するのは難しいが、「未来記」はあくまで祭政一致を前提とする以上、祭と政の国政に絞られる。「黄龍」である昭和天皇は、1928年11月、「金殿」となる京都御所で即位の大礼を行い天皇となった。その直後、二つの武力勢力が動き始める。二つの王とは、二つの強大な集団を指し、この時代は日本陸軍と海軍となる。(当時、空軍は独立組織としては存在していない)

 陸海軍は設立当初から対立を続け、太平洋戦争の最中でも手柄を争い、敗戦までいがみ合い続けた。その意味からすれば、本道を忘れて米を食いつくす「黒鼠」だった。頭が黒い鼠ということで人を指す。

 歴史的に日本海軍の方が陸軍より先に設立されている。王権復古で成立した明治新政府は、徳川幕府の軍艦、海軍操練所、海軍伝習所を受け継ぎ、日本艦隊として再編したからである。その後、陸軍が海軍から分離されているため、「兄」は海軍のことを指す。

 明治初期は海軍が主で陸軍が従だったが、「西南戦争」(1877年)で薩摩勢力が退行すると、陸軍が政府内で勢力を持ち始める。その後、両者は「日露戦争」で手柄を競い合い、海軍は大艦巨砲主義を目指して艦船の量産を開始する。しかし、「ロンドン海軍軍縮条約」(1930年)で、日本は巡洋艦以下の補助艦艇の数を制限されてしまう。それに恨みを抱き、政治的に動いたのが海軍だった。

 1932年5月15日、武装した海軍の青年将校らが首相官邸に乱入し、護憲運動の旗頭だった犬養毅内閣総理大臣を射殺する。犬養は軍縮を支持していたからである。このテロで日本の政党政治は瀕死の状態になる。武力で支配される世の中を招き寄せたからである。

 海軍が成功したなら陸軍もと、今度は陸軍将校がテロを起こす。手柄を海軍にばかり挙げられては勢力争いで遅れを取るからである。

 1936年2月26日、「昭和維新」を旗印に、陸軍の青年将校を中核とする1400人が、首相官邸と大臣宅を急襲、岡田啓介首相は難を逃れたが、高橋是清蔵相、鈴木貫太郎侍従長、渡辺錠太郎教育総督らが暗殺された。まさに家臣である軍人たちが政治に介入し始めたのである。それを機に、陸軍が一気に暴走を開始する。

 1937年7月7日、北京近郊の盧溝橋付近で夜間軍事演習をしていた日本軍に中国軍が発砲したとして、中国侵攻を開始したのである。これを「盧溝橋事件」という。その後、議会の命令を無視して進軍を止めず、結果的に「南京事件」を起こし、陸軍主導で「日独伊三国同盟締結」を行い、国の行く末を過たせ、日本を泥沼に引き込んでいく。

 昭和天皇が臨席した「御前会議」にも、陸海軍の軍人が出席し、互いに面子にこだわり時局の判断を誤っていく。大本営が発表する戦果も、下で捏造された水増しデータで、更に上層部で訂正を加えた出鱈目情報ばかりだった。大本営は、大本営海軍部と大本営陸軍部に分れ、互いに相手を牽制する中、嘘の勝利を面子にかけて連呼しあい、その行為が敗戦まで続く。

 「弟」である陸軍は「太平洋戦争」の主導権を握る続ける中、「兄」である海軍は「西」である西太平洋で全滅の憂き目に遭う。三種の神器で唯一の武器とは「宝剣」である。それは武力の象徴で、アメリカの圧倒的な物量作戦の中、ついに日本軍は砂上の楼閣のように大崩壊する。昭和天皇の「ポツダム宣言」受諾を御前会議で承諾したとき、ついに「神璽」である真の支配権は軍の手から離れ去ったのである。

(歴史的現代→世界)

 第二次世界大戦後、国際平和の象徴である国連が設立された。それは世界の「金殿」であり、平和の旗頭でもあった。国連自体が錦の旗頭となったのである、ところが、実際は軍事力で対峙する二人の「王」の時代だった。アメリカと旧ソ連である。超大国だった米ソが核兵器で互いに脅し合う「東西冷戦」の時代が訪れたのである。アメリカがNATOに代表される西側陣営を従え、旧ソ連がワルシャワ条約機構に代表される東側陣営を従えた。それらの国々は王に使える「家臣」の存在で、互いに国連の場で論戦しあった。しかし、日本から見た西に当たる旧ソ連は、1991年に崩壊し、勢力を失って国際舞台から退いていった。旧ソ連は、ロシア帝国時代から連綿と続く歴史を持つ「兄」であり、歴史の浅いアメリカは「弟」となる。

 しかし、自由主義経済で豊かだったアメリカは軍縮交渉をちらつかせながらも、核兵器信仰に陥った旧ソ連を軍拡競争に巻き込み、旧ソ連を経済破綻させてしまう。これにより、アメリカが最も恐れた、旧ソ連崩壊前の核による先制攻撃の恐怖は消え去った。

 結果、アメリカは国連で主導権を握り、世界最大の超大国として国連を牛耳るに至っている。


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