(17)「未然記」第五百歳の出来事(4)
「第五百歳の出来事 四」
「山鷲捨てる野鳥を馳せ 野鳥飛びて捨てる東の魚を呑む」
(預言内容→世界編)
「鷲」であるアメリカを中心に、「野鳥」であるヨーロッパが連合して、NATOの東進と拡大が行われていたった。かってのワルシャワ条約機構だった東ヨーロッパの国々は次々に呑み込まれ、最後の砦だったウクライナもEU加盟に動いている。(2008年現在)
それはロシアの鎧兜を武力で剥ぎ取る行為に等しく、ロシアは超大国としての威信を傷つけられ、みじめな屈辱を強めていった。
当時でさえ、米国カナダ研究所のビクトル・クレメニック副所長は、「今のロシアは、大国としての威信を見せつけるため、核兵器の威力を思い知らせるしかなくなった」とまで言い切っていた。
強硬派で知られるプーチン前大統領が、このありさまを良しとするはずがない。必ず、形勢逆転に動き始める。その鍵を握るのが中東であり、ロシア復興の鍵を握る重要な国がイランになる。
中国もロシアの動きを察知してイランに接近している。中東で影響力を持つためである。ロシアは、かっての旧ソ連時代に培ったヨーロッパ侵攻の電撃作戦のマニュアルを持っている。さらに、NATO軍が必ずしも一枚岩ではなく、使う兵器も統一されておらず、内懐に敵を入れられたら最後、EU圏内に核兵器を使う際、必ず躊躇することも知り尽くしている。
ロシアが動くには、アメリカを世界の悪者に仕立てねばならない。国連の席上で公然とアメリカが罵倒され、中東戦略を過たせ、アメリカを中東から追放する機運を巻き起こさせねばならない。
最近、アメリカのお膝元の南米で反米運動が激しくなりつつある。ボリビア、ベネゼエラ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ウルグアイなど、南米12か国中6か国が反アメリカ的政策を打ち出している。
2006年9月20日、国連演説で、ベネゼエラのチャベス大統領が、ブッシュ(ジュニア)大統領を悪魔と8回呼び、前日にブッシュが演説したテーブルに硫黄の臭いが残っていると十字を切る仕草までした。アメリカにとって衝撃だったのは、その発言の内容よりも、発言に対して巻き起こる盛大な拍手だった。
そのチャベス大統領の強気発言の裏に、ロシアの姿が見え隠れしている。国連演説の2か月前、チャベス大統領はプーチン大統領とモスクワで会談していたのだ。その際、ベネゼエラはロシアから最新鋭の「スホイ戦闘機」を24機、「軍用ヘリコプター」を53機、他にも様々な最新兵器の供与を受ける協定に調印している。他の南米の反米勢力の国々にも、ロシアは影響力を発揮している。
同じことは中東でも起こり、そうなれば国連の国々は中東で無謀な作戦を行うアメリカを非難し、中東から追い出す提案さえ出しかねない。
その前兆がチャベスである。チャベスは反米政策として、ベネゼエラの石油掘削企業を国営化し、アメリカ企業を追い出している。
もし国連でそうなれば、アメリカは国連を見捨てることになるかもしれない。もともと、アメリカは自国だけでやっていけると豪語する国である。第5代アメリカ大統領ジェームズ・モンローは1823年の年次教書演説の中で「モンロー主義」を打ち上げ、アメリカは世界に干渉しないとまで宣言した。これを「孤立主義」ともいい、やがてアメリカはその解釈範囲を狭めて、世界に干渉するようになる。もし、アメリカが孤立主義に入ったら、世界から警察がいない状況が生まれる。アメリカは世界の警察を標榜してきたからである。
この状況こそ、ロシアにとってまたとない復活の機会となる。それはイランなどイスラム諸国にとっても同じことである。恐らくアメリカに代わって中東で勢力拡大を狙うEUは、イスラム対策に失敗するだろう。
イスラム軍のヨーロッパ侵攻の被害は、凄まじい傷跡をイスタンブールからヨーロッパに残し、二度とヨーロッパは連合組織を組めなくなる可能性がある。ヨーロッパがそうなるのは、アメリカがヨーロッパからも撤退し、警察がいなくなるからである。
結果、旧ワルシャワ条約機構国は軌道失った小惑星のように見放され、再びロシアの軍門に降ることになる。これがロシアの望む最高の結果であり、更にうまくいけば全ヨーロッパを手中にできるかもしれない。
ところが、ロシアがヨーロッパ獲得を望んでも、最後はアメリカが参入してくる。その結果、ロシアは一部だけを奪い取って引き下がることになるだろう。
ついにアメリカは、悪いイスラムを懲らしめる十字軍よろしく、世界の願いを聞き届けるため、大戦争の鎮圧に乗り出してくる。
アメリカが再び世界の警察に返り咲いても、アメリカはもはや以前のアメリカではない。平和の執行を盾に世界制覇を強行する国に変貌している。核戦争による人類絶滅を防止するため、アメリカは強大な軍事力を中心とする「世界政府」の樹立を宣言するはずである。勿論、完全なるアメリカ主導である。
ロシアと中国が反対しても、アメリカの英雄的行為と戦争鎮圧の実績、世界最大の軍事力の前に引き下がらずを得なくなる。巨大な白頭鷲が東の帝国を退けに乗り出すことも両義的に預言されている。「鷲」であるアメリカが、「野鳥」の大連合を率いて、「東魚」のロシア(中国も東にある)を封じる預言になっているからである。