(15)「未然記」第五百歳の出来事(2)
「第五百歳の出来事 二」
「青魚躍りて四海を呑む 赤鳥囚れて六浪に没す」
(預言内容→世界編)
世界から見た東の軍事大国という場合、冷戦時代から一貫してロシアを指す。
旧ソ連は崩壊したとしても、ロシアが世界第2位の核兵器保有国であることに変わりはない。
そのロシアが、4つの海に再び勢力を伸ばすことは、旧ソ連崩壊時なら信じられなかったが、プーチン政権下で躍動したロシアは、石油埋蔵量でサウジアラビアを脅かす存在にまで成長し、石油価格高騰の追い風の中、莫大な利益を挙げている。
経済発展が著しい、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を合わせた「BRICS(ブリックス)」に代表されるように、ロシアは旧ソ連時代を彷彿させる勢いを盛り返しつつある。
そうなると、ロシアはいつまでもアメリカの足元に屈していることはない。旧ソ連崩壊で失った旧ワルシャワ条約機構の国々の奪還に乗り出す可能性が出てくる。
実際、プーチン前大統領(統一ロシア党首&首相)の発言から推測できることは、栄光あるロシアの復活である。それは領土拡大を指すといってもいい。
ロシアは、EUの「拡大NATO構想」により、西からの拡大にさらされ、軍事的防衛面では脅かされる立場に陥っている。
スターリン時代の「ヤルタ・ポツダム体制」により、東側諸国の一員だったポーランド、チェコ、ハンガリーが真っ先にNATO軍に加わり、その後、ルーマニア、ソロべニアが加わり、ロシアはEUから真綿で首を絞められるような屈辱感を味合されてきた。
さらにロシア最後の防衛ラインともいえた、エストニア、ラトビア、ロストニアの「バルト三国」までNATOに吸収された今、ウクライナまでNATOに呑み込まれつつある。(2008年9月時点)
そのため、プーチン前大統領は、EU加盟を公約する新西欧派のユシチェンコ大統領が、2005年に再選されるや、政治圧力をかけるためウクライナに送る天然ガスをストップさせる強硬手段に打って出た。
それがEU諸国の反発を招くと、今度は大幅な天然ガス価格アップの圧力を加えたのである。このことから、ロシアがメドベージェフ&プーチンの双頭政治時代になっても、黙ってNATOの東侵を見過ごすはずがないのである。
もし同じことをロシアがヨーロッパに対して行っていたら、次々とワルシャワ条約機構に呑み込まれるNATOの国々を見て、EU諸国は生きた心地がしないはずである。
現在、ロシア軍の内部では、再び領土拡大主義の気運が、民族主義の復活と共に蘇りつつある。
EUの拡大NATO構想は、歴史上最大の愚行としてヨーロッパに跳ね返ってくるかもしれない。
一方でロシアは、EUとアメリカと対抗するため、外交的に有利な中東に勢力を伸ばす可能性が高い。事実、ロシアは、核開発疑惑と国連制裁で揺れるイランにテコ入れし、中東の重要な足掛かりを築きつつある。中東はロシアから見た南に位置する。中東の石油資源とイスラム諸国への外交的接近でEUと対抗するのである、
そこで石油を支配する中東の主要イスラム国家を見ると、シリア、サウジアラビア、リビア、クウェート、イラン、イラクの6か国となる。
一方、同じイスラム諸国のエジプト、トルコは石油資源をほとんど持っておらず、トルコはNATOの加盟国である。
「未然記」にある世界規模の「六波羅」は、ユーフラテス川の東にあるロシアが、南の石油6カ国と関係を深めることを預言するかもしれない。
EUも高圧的な態度のアメリカをヨーロッパや中東から追い出そうと画策している。特にフランスの態度は如実で、アラブ重視の外交はアメリカより成果を挙げている。
一方のロシアも、EUがアメリカを中東から追い出せば、その油揚げをさらう腹積もりでいることは確かである。それがパワーバランスにおける国際外交である。そのことを「未然記」は示唆している。