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聖徳太子の「未来記」開封(4)

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(4)「未来記」の未来とプロフィール

 国立国会図書館の「日本国未来記」は、末尾の「慶安元年」(1648年)の記述から、第3代将軍・徳川家光の時代に写本されたことが判明する。

 四天王寺から「未来記」を引き出せたのは、時の最高権力者だった徳川将軍しかいない。「未来記」の出所が「右の此書はここ摂州天王寺の宝庫より出つ」で示され、四天王寺だったことが判明する。四天王寺の旧称が「天王寺」だからである。

 家光が、徳川幕府の権力と権威を使い、四天王寺の宝物庫を開けさせたことが、「宝庫」の記載から判明する。

 幕府は「未来記」を四天王寺から出させた後、徳川家お抱えの海譽大僧正に命じ、全文を写本させたのである。これは「日本国未来記」第1ページの「海譽大僧正の御牌所の書籍なり。出門は不許なり」の印で判明する。

 家光というと「武家諸法度」を整備し、「参勤交代制度」や「領国体制」を敷き、幕藩体制を完成させた将軍で知られている。

 また、家光の頃に、「島原の乱」(1637~38年)が起き、鎖国(1939年)も開始されているため、日本史では避けて通れない人物である。

 国立国会図書館に収蔵されている「日本国未来記」は写本とは言え、絶頂期にあった徳川幕府が所持していた門外不出の秘文献だった。

 具体的に「未来記」の構造を見てみる。

 第1ページの「帝国図書館蔵」の印で、徳川家から明治新政府に売却されたことが判明する。徳川側の人間は最後の将軍・徳川慶喜以外にない。

 一番下にある「請求・明治三一・五・二九」の印で、明治31年(1898年)5月29日に購入された事がわかる。事実、慶喜は大正2年(1913年)まで存命だった。

 これら正式な印と記載は、写本の由緒が間違いないことを物語っている。だからこそ、「日本国未来記」が国立国会図書館の「国史類」に分類されている。

 それは、四天王寺が楠木正成に「未来記」を閲覧させた噂が、歴史的事実だったことを物語る。確かに四天王寺は「日本国未来記」を所持していたのだ。同じことは法隆寺にも言える。

 法隆寺は世界最古の木造建築物として、ユネスコに登録された世界遺産である。歴史から見て、聖徳太子との関わりは四天王寺よりも古いはずで、四天王寺と同じ「未来記」を所蔵していることは間違いない。

 「未来記」の表紙も漢文で書かれている。「日本国未来記」の大きさは縦19センチ5ミリ、横12センチ2ミリ、右5カ所に幅4センチ2ミリ間隔で糸綴じがある。本文すべてが二つ折りの和紙に書かれ、二つ折り9枚18ページ分。表裏の表紙を加えると、和紙の枚数は11枚の袋綴じになる。

 表紙を開くと裏は白地で、表紙を1ページ目とすると本文は3ページ目から始まり、そこに「海譽大僧正御牌所書籍不許出門」の印と、「請求・明治三一・五・二九」の印があり、「帝国図書館」の印も押されている。今の国立図書館のことである。

 ページ1行目に「聖徳太子日本国未来記」の表題があり、聖徳太子の名がある分だけ表紙の「日本国未来記」よりも長い。

 1行開けて「太子厩戸は之を勘え奉る」とあり、聖徳太子に関わる書であることが明示されている。

 そこから未来記」の本文が始まる。3ページ目は4行しか文章がなく、1行11字で収まっている。以降、行ごとに字数が違うことはない。

 最初の3ページ目だけが字数44文字で、それ以降、4ページ目から19ページまで、全ページ7行11字で収まっている。

 字数は各ページ77文字、16ページで1232文字となり、最初の本文44文字に最終ページの3行33文字を加えた文字総数は119行1309文字となる。

 本文の締めくくりに「大日本国未来記終」とあり、「大日本国未来記」は表紙の「日本国未来記」とも3ページ目表題の「聖徳太子日本国未来記」とも違う「未来記」の別名になっている。

 その次の行に「右の此の書はここ摂州天王寺の宝庫より出つ」とあり、出所が四天王寺の宝物庫と表記されている。

 さらに末尾には、写本した年「慶安元年初冬吉且」とある。慶安元年は1648年で、間違いなく徳川家光の時代を指す。これらの文字を加えた1360が総文字数となる。これが国立国会図書館の収蔵する「未来記」の外面的特徴である。


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