(29)天変地異と大飢饉の「第三の封印」→紀元前2000年~1000年の千年紀
イエス・キリストが第3の封印を解くと、第3の生き物が叫び、そこから黒い馬が現れたとある。その乗り手は秤を持っていたと記されているが、ヨハネは何を示唆していたのだろうか?
「小羊が第三の封印を開いたとき、第三の生き物が「出て来い」というのを、私は聞いた。そして見ていると、見よ、黒い馬が現れ、乗っている者は、手に秤を持っていた。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章5節)
カッバーラでは、血と罪の赤と同じく、黒も闇を表すという意味で不吉な色である。だから、葬儀には黒が用いられる。そのことから「黒い馬」は死を暗示している。
第3の封印の時代は、大洪水が終わった直後の紀元前2000年~1000年に該当し、封印の千年紀の第3期に属する。
黒い馬が出てきたと言うことは、この間に尋常でない死者が出たことを意味する。それでは、その馬の乗り手が「秤」を持っているのは、何を意味しているのだろうか?
分量や重さを測る道具である秤で人を殺させるとは考えにくい。だから秤は、戦争ではなく災いで人が死ぬことの比喩である。
災いとは「飢饉」のことである。それも大量死となれば大飢饉である。それが世界規模で起きるということは、その千年紀において相当長い間、地球は尋常ではない状態にあったということである。
「私は四つの生き物の間から出る声のようなものが、こういうのを聞いた。「小麦は1コイニクスで1デナリオン。大麦は3コイニクスで1デナリオン。オリーブ油とぶどう酒とを損なうな。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章6節)
「コイニクス」はローマ帝国で使っていた枡1杯のことで、現在の約1リットルに相当し、「デナリオン」は銀貨の1単位で、小銀貨を意味した。当時の小銀貨は、ティべリウス皇帝の顔があり、「アウグストゥス→いと高きもの」と刻まれていた。
その頃の1日の平均労働賃金は、デナリオン銀貨1枚だった。声のようなものが語っているのは、丸1日働いても、主食の小麦なら1枡分、安価な大麦でも3枡しか食べられずに苦労するという意味で、どちらも飢えに関わる表現である。
小麦と大麦は見かけは似ていても、全く別な植物である。大麦は食するには粗雑な穀物で、日本におけるヒエや粟クラスの穀物だ。
「オリーブ油とぶどう酒とを損なうな」は、そういう飢饉にあっても、オリーブ油と酒は確保されたという意味である。だから人類が全滅するには至らなかった。
この頃、アブラハムの兄ハランは、カルデアのウルで飢饉に遭遇して餓死している。
「ハランは父のテラより先に、古郷カルデアのウルで死んだ。」(旧約聖書「創世記」第11章28節)
ウルが滅亡したのが紀元前2000年頃だから、ハランが死んだのはそれより少し前で、その頃大飢饉の第1波が襲ったと考えられる。その飢饉があまりにひどかったので、アブラハムの父テラは、妻と息子たち夫婦を引き連れてウルを出発し、カナンへと向かっている。
「テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった。」(旧約聖書「創世記」第11章31節)
「アブラム」とは「アブラハム」の幼少名である。大飢饉の状態が長年続いたことは、アブラハムの孫で預言者だったヤコブが、エジプトに売られた息子ヨセフに呼ばれ、11人の息子家族を率いて古代エジプトに逃れたことからもわかる。ヤコブのエジプト入りは紀元前1700年前後の頃である。
「こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行った。」(旧約聖書「創世記」第46章7節)
ノアの大洪水が世界規模だったことは、恐竜化石が世界中から発掘されることから分かる。一度水中に没して泥に埋まらなければ、死骸が化石になることはない。骨が化石になるには、空気と遮断された状態で、腐敗せずに他の元素と置換される必要がある。そのためには膨大な量の泥が不可欠で、恐竜化石が世界中から発見されたということは、世界中が一度は泥の海に沈んだ証拠になる。
ノアの大洪水は、未曽有の大豪雨が40日も怒涛に様に降り注ぐ中、山が崩れて流れ落ち、天文学的な規模の泥流が河や海に流れ込んだ。つまり、泥水の大洪水だったのである。
恐竜などの古代生物は、鉄砲水のように谷底や窪みに集められ、そのまま泥に埋まっていった。かろうじて生き延びた生物たちも、やがては溺れて底へ沈み、沈殿する膨大な量の泥に埋まっていった。
その後も泥は沈殿し続け、層を成した。その高圧下で、恐竜などの遺骸は、化学変化が急速に進んで化石化していった。恐らく1000年もたたないうちに、恐竜は化石になったはずである。
中には高圧下でなくても、数年で化石になる生物がいる。珊瑚である。珊瑚の場合は化学変化の上では同じプロセスを踏むが、珊瑚礁になるには数千万年もかかるわけではない。
世界中に恐竜の化石が発掘され、中にはクラゲの化石まで発見されている。クラゲが化石になるということは、瞬時に泥に埋まったことの証拠である。そうでなければゼリー状の体はすぐに溶けてしまう。それは、いかに大洪水が急激だったかという証拠でもあるのだ。
特筆すべきは、人の化石も恐竜化石と同じ地層から発掘されていることである。アメリカのテキサス州ダラス市の近くで、恐竜の足跡化石と一緒に人の足跡化石が多数見つかっており、グレンローズ市を流れるパラクシー川では、今でも恐竜の足跡と交差した人に足跡が見つかっている。
グレンローズ市には「創造の証拠博物館」があり、人の指紋の化石や鉄のハンマーの化石などが展示されている。つまり、恐竜は人類と共存していたことになり、旧約聖書にそのことが記されている。
「神は水の群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。」(旧約聖書「創世記」第1章21節)