(25)人生最後の10年、他人頼りの「要介護」とは・・・・!
政府は「日本は世界一の長寿国」だと自慢し胸を張る。しかし、その内容は、とても自慢できる代物ではない。まず、平均寿命と健康寿命の差が大きい。
男性の場合、平均寿命は80・98歳だが、健康寿命はなんと72・14歳となる。それから9年は「日常生活に制限」のある不健康な期間なのだ。早く言えば、「要介護期間」だ。
女性も87・14歳と一見すると長生きに見えるが、健康寿命は74・79歳である。それ以降の「要介護」期間は12・35年にも達する。
つまり、日本の老人は、人生の残りの約10年余りを、第3者に頼る要介護老人として生きることになるのだ。これでは、とても長寿国家とは自慢できない。それだけではない。日本は、世界に比べて寝たきり老人が異様に多いのだ。それを裏付ける数字もある。
「日本はアメリカの5倍、ヨーロッパの8倍くらい「寝たきり老人」が多い」と指摘するのはブログ「アリスのすてきな生活」である。さらに、日本の「寝たきり老人」と「認知症」患者の総数は約250万人と言う。これは、80歳以上の4人に1人に相当する。まさに、日本は世界に冠たる「寝たきり」「ぼけ老人」大国なのだ。
「私、介護士辞めました」と女性のOさんが船瀬氏のきっぱりとこう言い切った。
「船瀬さんの言う通りです。日本の介護は、医療と全く同じで、老人をわざと寝たきりにして、食べ物漬け、薬漬けで死ぬまで食い物にしています」
「要するに介護利権を食い物にしている」と船瀬氏。
「そうです。介護現場はひどすぎます。私は本に書いて告発したいくらいです」とOさんは悔しそうに、悲しそうに唇をかんだ。しかし、このような現場の介護士さんたちの悲鳴に似た告発は、介護学の先生方には届かない。政治家の偉い先生方にも届かない。そうして、介護現場では、ベッドで寝た切りならぬ、寝かせきりにさせられた老人たちが、日々衰弱して、うつろな顔で横たわり、死を待っているのである。
「日本の介護は地獄です」とポツリつぶやいたのは、船瀬氏の友人Y君である。Y君は大手保険会社の部長を務めている。彼は北欧に研修旅行に行って、現地の老人施設を見学して驚愕したという。
「あちらは天国、日本は地獄です・・・」
「どこが違うのか?」と船瀬氏。
「向こう側の介護は、自立させることです。ベッドで寝た切りなら、起きられるようにする。起きることができたら、建てるようにする。立てたら、歩けるように・・・。それが基本です」
「なるほど」
「まず、歩いてトイレに行けるようにする。歩けたら今度は散歩させる。介護士は付き添っているけど、じっと見守るだけ。手を取ったりしない。転びそうになって、やっと支える」
「そうして、普通の生活ができるようにするのですね」
「そうです。だから、向こうの施設の老人たちは明るい笑顔で迎えてくれました。日本の老人は表情が暗い。死んでいます」
こういって、Y君はまたもや、深いため息をつきのである。
寝たきりがヨーロッパの8倍、アメリカの5倍とは余りにも日本は異常である。
船瀬氏は「間違いだらけの老人介護」と言う本をまとめた。この本を日本のシルバー世代への応援歌として書いたという。船瀬氏は精神年齢10代、肉体年齢20代をいまだに自負している。背筋も伸び、自分が老けたという実感が全くないという。船瀬氏の生き方のモットーは「人に頼るな。己に頼れ」である。同窓会に出ると、かっての紅顔の友も、白髪や禿の爺連合である。誰でも年をとるのは避けられない。しかし、努力次第で老化を遅らせることはできる。それどころか、若返りすら可能である。
「自立を助ける」-これが真の介護である。
しかし、日本の介護老人の現場は、「生きる力と心を奪っている」
あなたは「2025年問題」をご存知か?
約800万人の団塊世代が75歳(後期高齢者)に達することを指す。このまま日本の老人介護が放置されれば、間違いなく彼らの残りの人生約10年は、要介護となる。具体的には、おびただしい数の寝たきり老人や認知症が生み出されるのだ。その時、いったい誰が800万人もの老人を介護するのか?
介護費も医療費も、間違いなく高騰、破綻する。それは、国家財政の破綻を意味する。それは少子高齢化社会の恐るべき末路である。日本と言う国家の終焉を意味するのではないか? それを回避するには、「間違いだらけの老人介護」を根本から見直すしかない。