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どうしても伝えたい日本の真相(21)

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(21)蜜蜂の羽音消え、蝶もトンボもいない「沈黙の春」

 船瀬氏の住む奥武蔵、名栗渓谷は自然の光に満ちている。しかし、春になっても蜜蜂の羽音は一切聞こえてこない。それどころか、蝶もトンボも見かけない。影も形もない。

「自然は沈黙した。鳥たちはどこかへ行ってしまったのか・・・」

 この嘆きの警告を発したのは、アメリカの生物学者レイチェル・カーソン女史である。環境汚染の恐怖を世界に先駆けて警告した衝撃書「沈黙の春」は、1961年に発表されたが、その後の地球を暗示する黙示録でもある。

「春が来たが、沈黙の春だった。・・・・白い粉が、雪のように、屋根や野原に降り注いだ」

 それは害虫駆除で撒かれた農薬である。警告は、すでに現実となっている。

 船瀬氏が子供のころ、九州の田舎では、春はのどかな蜜蜂の羽音とともにやってきた。さらにモンシロチョウは畑に乱舞し、トンボは空高く春の到来を告げて飛翔した。しかし、今や自然豊かな渓谷に、蜜蜂の姿は一切見られない。蝶々の羽ばたきも、トンボの回遊も、1年間、全く目にすることはない。まさに沈黙の春である。

 原因は、ほぼ推察はついている。名栗渓谷には、斜面に茶畑が多い。狭山茶の本場であり、自家用に自作している農家も多い。そこでは、ある農薬が撒かれているはずである。ネオニコチノイドである。

 船瀬氏は、「悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」」と言う本で警告を発したことがある。その恐るべき農薬が、風光明媚な渓谷の斜面で使われている。それは間違いないだろう。農家の人々に罪はない。彼らはそれが蜜蜂、蝶々、トンボなどを殲滅する悪魔の農薬であることなど、一切知らない。これは、日本列島全てに言えるはずだ。あなたは春先に蜜蜂の羽音を聞いているか? 蝶の可憐な姿を最後に見たのは、いつのことだろうか? トンボの飛翔は、もはや記憶の彼方ではないか? 

 カーソン女史は鳥も鳴かない、蜜蜂の姿も見えない、沈黙の春の先に、恐ろしい未来を予測している。それは人類も死に絶えた「沈黙の地球」である。

 さらに新しいニュースがある。「ネオニコチノイド系投与? 活発な精子、雄の4割減」

 これは「東京新聞」(2016年12月26日)の見出しである。さらに「蜂減少証明の一刺し?」とある。

「世界的な蜂の現象との関連が指摘されているネオニコチノイド系農薬を蜜蜂に与えると、雄バチが作る精子の量が4割減るなどの悪影響が出るとの実験結果を、スイス・ベルン大学などの国際研究チームがまとめた」

「与えた農薬量は、実際に野外で検出されるレベルで雄の生殖能力に影響を及ぼして、蜂の減少につながっている可能性を示す結果として注目される」(東京新聞)

 その実験には2種類のネオニコチノイド系農薬を混ぜた花粉などの餌を、蜜蜂の群れに半年間与えて飼育し、農薬を与えない群れと、生殖能力を比較した。その結果、農薬を投与した群れでは、以下の異変が見られた。

①動きの鈍い精子が増えた。

②活発な精子は39%減った。

③雄バチ死亡率は50%激増した。

 蜜蜂の群れは特殊である。女王バチ、雄バチ、働きバチの3種類で構成されている。働きバチはすべてが雌なのだ。そして雄バチが繁殖期に、他の群れの女王バチと交尾することで次世代の蜂が誕生し、群れが維持される。

 ネオニコチノイドで、その雄バチの生殖能力は4割も阻害され、死亡率は5割増である。研究チームはこう結論付けている。

「蜜蜂繁殖に重要な雄の生殖能力にネオニコチノイド系農薬が悪影響することを解明したのは世界で初である。他の昆虫を含めて野外調査が必要だ」

 野外観察でも、同様な結果が出ることは明らかである。

 


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