(2)化学調味料が「アミノ酸等」に化けた謎
最近は、世を挙げて健康志向である。誰もが、自分の食べるものに注意を払うようになってきた。体は食べたものでできている。だから、変なものを食べれば、変な体になる。わかりやすく言えば不健康になる。病気になる。企業の中にも、目覚めた良心的な会社が出てきている。「化学調味料、無添加!」をアピールする商品も目にするようになってきた。
化学調味料と言えば、子供のころからおなじみの「味の素」がある。化学物質名はグルタミン酸ナトリウムと言う。グルタミン酸とナトリウムが化合した化学物質だ。グルタミン酸はアミノ酸の一種であり、ナトリウムは金属元素だ。実は、船瀬氏が32年前に独立して、最初に著したのが「味の素はもういらない」である。味の素を取り上げたのは、それを批判することがマスコミの最大のタブーだったからだ。同社は食品業界の最大のスポンサーだ。同社を批判することなど、神を冒涜するに等しい。だから、メデイアは怯み、口をつぐんでいる。ならば、タブーに挑もうではないかと思い、ペンを執ったという。
そこで、味の素を「白いインベーダー」と批判した。「知らないうちに世界中の食卓に侵入してきた白い粉の実態は?」「タイの小学校の教科書には、味の素は体に有害だから、食べ過ぎてはいけない、と書いてあります。・・・また自然な食べ物には、化学調味料とか着色料なんかは、必要ない、とも書いてある」
「味の素は有害である」と、タイの大使館の参事官が証言しているのである。「初めて聞いた!」とびっくりする日本人が多いのではないか。
実は、生理学界で味の素(グルタミン酸ナトリウム)が有害物質であることは、常識である。脳生理学の分野では、神経毒物(ニューロ・トキシン)と呼ぶ。脳への毒性は、凄まじい。味の素は脳細胞を破壊するのである。
1970年、米ワシントン大学のオルニー博士が行った実験結果は衝撃的だった。「生後10~12日目のマウスに体重1キロ当たり味の素を0・5グラム経口投与する。すると、その52%に、1グラム投与群では100%に、神経細胞の損傷や破壊が起こった」
100%とは投与したマウス全匹の脳が破壊されたということだ。
本来、脳には「血液ー脳関門」と呼ばれる保護機能がある。ちょうど、関所に様に有害物質の侵入を阻止し、脳を守る働きである。ところが、出生直後の幼いうちは、この関所を閉じていない。それで神経毒物味の素は自由に侵入し、未成熟の脳を直撃する。だから52%~100%と言う高率で幼い脳が破壊されたのだ。
このショッキングなオルニー報告を受けて、WHO(世界保健機構)も「グルタミン酸ナトリウムは、生後12週(約3か月)未熟の幼児には投与しないように」と勧告を出した。
神経毒味の素は、幼児の脳を破壊するだけではない。子供や成人でも、程度の差はあれ、この神経毒物でダメージを受ける。つまり、脳細胞が損傷される。脳破壊は深刻な後遺症をもたらす。「幼児期に味の素を食べてもその害は成人後でないと現れない」(1977年、米ノーザン・イリノイ大学の報告)
幼児期に化学調味料添加の食べ物を与えられると、潜在的な脳損傷を受けるが、その害は成人してから現れるというのだ。つまり、味の素は発達障害の原因になる。その証拠もある。「少量の味の素をヒヨコに与えて育てると知覚能力が遅れる」これはオーストラリア・モナシュ大学、薬理学教室の警告だ。
海外でも良心的な学者は、この神経毒の化学調味料に警鐘を鳴らしてきた。「味の素(MSG)は子供に危険」と一面トップで警告するのはマレーシア最大の消費者団体CAPの機関誌「ウタサン・コンシューマー」(1981年7月)である。
東南アジアでは、野犬を捕まえるのに、缶詰の魚に味の素を振り掛け、広場に置くと、腹を減らした野犬が食べて、しばらくすると野犬は足がふらつき、昏倒するので、それを捕まえるという。彼らは味の素に野犬を倒すほどの毒性があることを知っているのだ。
暴力キャバレーでホステスたちが、客のビールに味の素を多量に混ぜて飲ませ、悪酔いさせ、法外な高額料金をぼったくっていた。警察は、ホステスたちを強盗罪で逮捕した。窃盗ではなく強盗逮捕とは、化学調味料を混ぜた酒を飲ませた行為が、強盗とみなされたのだ。この顛末は毎日新聞夕刊(1972年12月14日付)で大きく報道された。
味の素の急性毒性で有名なのが「中華料理店症候群」である。中華料理店で食事をした直後に多発することから命名された。最初は原因不明の奇病とされていたが、やがて厨房でワンタンやスープなどに多量に入れた化学調味料(味の素)が原因だと判明した。アメリカ厚生省もこれを化学調味料による急性の独立疾患と認定し警告している。
中華料理店症候群は、実際に研究者たちが人体実験した報告もある。36人の被験者に化学調味料(味の素)をどれだけ与えると症状が出るかを、測定したものである。わずか4グラムで最多の10人が発症している。味の素たっぷりのラーメンを食べて、気持ちが悪くなった人もいるだろう。その急性毒性は、死者すら出しているのだ。
「中国に旅行中、アメリカ老人ツアーのうち14名が死亡した。うち1人は化学調味料の過剰摂取による拒絶反応によると断定された。味の素による中華料理喘息発作で死亡したという」(AP外電、1980年10月31日)