(22)「米中経済戦争」と中国経済の不安材料
中国の急激な経済成長と、一連のアメリカ外しを意図する動きに対して、当初からアメリカはヒステリックな反応を見せていた。
そして、中国を中心とする世界の流れに、アメリカと日本だけが「蚊帳の外」と言う状態になってしまっている。
トランプは、選挙期間中、「中国は経済面でアメリカをレイプしている」「為替操作国だ」などと中国を非難し続けた。しかし、政権発足後、習近平書記との会談後には「友情が芽生えた」と態度を一変させる。その後も、トランプの対中発言は二転三転していく。
トランプは、最側近であったスティーブ・バノン主席戦略官・上級顧問を「マスコミへの情報漏洩」などの理由で解任した。
ペンタゴン筋からの情報によれば、その解任の本当の理由は、中国に対して強硬路線をとり「中国との経済戦争」を主張していたバノンのバージだという。水面下で中国・ロシアとの同盟を模索しているアメリカ軍から、対中強硬路線の撤回を求められていたバノンはそれを拒否した。2017年8月、最終的にアメリカ軍によって解任される運びとなったのだという。だが、その裏ではきな臭い小競り合いも続いている。
2018年1月6日、東シナ海の上海沖でパナマ船籍の石油タンカー・サンチ号と香港船籍の貨物船・CFクリスタル号の衝突事故が発生した。ペンタゴン筋によれば、この事故は、金本位制の人民元建て先物取引に反対する勢力が工作したものだったという。だが、ペンタゴン筋などの情報を総合すると、アメリカ軍の上層部は、経済・軍事の両面で中国との戦争までは求めていないようである。中国の力が増大することの脅威は否定できないが、今は、国際金融の支配権をハザールマフィアから奪い返すことのほうが先決問題と判断しているのだ。
トランプ政権内は、対中強硬路線をとる「商務省が率いるグループ」と貿易、軍事共に中国との戦争を望まない「トランプ政権内の軍人」との間に亀裂が生じている。それが「ブレ」の多い対中政策として表に現れているのだ。
中国への世界経済覇権の移行が日本に与える影響について考える。
日本は地理的に言えば、一帯一路と言う人類史上最大のプロジェクトの恩恵を大いに受けられるポジションにある。今後、朝鮮半島の南北問題が解決すれば、中国、ロシア、朝鮮半島、さらに日本まで海底トンネルが通じる可能性が生まれる。そうなれば、巨大なインフラ整備で、日本の建設・土木業界などに大量の人民元が流れ込み、不景気を一掃する契機となるだろう。
中国アレルギーの強い日本の世論の中には、いまだ「人民元は偽札が横行する信用度の低い通貨」といった声も聞かれる。それはすべて「ドル本位制カルト」に刷り込まれた偽のイメージである。この先、世界の流れを見誤り、世界の片隅に追いやられないためには、しっかりと自分たちの目で現実の中国の力を見つめる必要がある。
しかし、中国経済も2007年以降は、GDPの伸び率は徐々に減少に向かってる。これは、ソ連がぶつかったのと同じ壁である。長期にわたる大量の設備投資によりソ連は高度経済成長へと向かった。しかし、市場がすでに飽和状態であるにもかかわらず、新たな工場を次々と建設し続けた結果、「倉庫に在庫を積み上げているだけ」と言う状況が生まれ、最終的にGDPの伸び率はマイナス圏内に陥ってしまった。今の中国も、それと同じ道をたどっているように見受けられる。今後、人民元が世界の基軸通貨になり、中国の経済は剣が現実となるには、まだクリアされるべき問題が数多くあるのだ。