(7)金融支配で大英帝国を乗っ取ったロスチャイルド
ハザールマフィアが人間を支配するのに作り出したシステムは3つある。「宗教」「貨幣」「暴力」である。
そのうちの2つ「貨幣=金融」と暴力=戦争」を結び付けて強大な力を得たのがロスチャイルド一族とヨーロッパの王室や貴族を中心とするハザールマフィアであった。
ハザールマフィアの勃興を体現したロスチャイルド一族の歴史を見てみよう。ロスチャイルド一族の祖は、18世紀ドイツ、フランクフルトのユダヤ人居住区(ゲットー)で暮らすユダヤ人家系出身のマイアー・アムシェル・ロスチャイルドだ。古銭商人から身を起こして財を成し、ロスチャイルド一族の家業となる金融業・銀行業を営むようになる。そしてマイアーは欧州各国に戦争資金を貸し付けることで、その国の政治への影響を手に入れていく。この手法は、ロスチャイルド一族の伝統となり、子孫たちにも受け継がれていく。マイアーは、貨幣と言うのもが世界を支配する要であることを熟知していた。それはマイアーが1970年に残した「我に通貨発行権を与えよ!さすれば法律など誰が作ろうとかまわない」と言う言葉にも如実に表れている。
マイアーの5人の息子たちは、ヨーロッパ中に事業を拡大していく。父親の通貨発行権への願いを実現したのは、イギリスで事業展開をしていたマイアーの3男であるネイサン・メイアー・ロスチャイルドである。
19世紀初頭、ナポレオン戦争がナポレオン・ボナパルトによって起こされ、イギリスとフランスの間で戦争が始まった。ネイサンは、イギリスに戦費や物質を調達して莫大な利益を上げる。戦時、財政難に陥っていたイギリスにとって重宝する存在であった。しかし、ネイサンは単なる便利屋ではなかった。胸中に悪魔的な計画を秘めていた。まずは、ナポレオン戦争で築いた莫大な資産で、イギリスの中央銀行「イングランド銀行」が発行する銀行券(政府紙幣)の買い占めを行った。そして、イギリス政府に対して、銀行券と金(ゴールド)との交換を求めた。当時、イギリスは金兌換制である。金兌換制とは、金といつでも交換できる約束の上に貨幣の価値が成立する制度である。逆に言えば、金と交換できなかった時点で、その貨幣の価値は破綻するのだ。
しかし、戦費調達のために、一時的にイングランド銀行の金はほぼ海外に流出した状態であった。そこを狙っての一斉攻撃である。イギリスがイングランド銀行の破綻を回避するには、ロスチャイルドと和解するしか道はなかった。
ロスチャイルドが出した条件は、①イングランド銀行の株式譲渡である。イギリスは苦渋の選択であったが、これを飲んだ。つまり、国有銀行がロスチャイルド一族単独経営の民間銀行として民営化されてしまったのである。こうして1825年、イングランド銀行はロスチャイルドの経営するN・Mロスチャイルド&サンズに買収され、中央銀行が持つイギリス通貨(ポンド)の発行権がロスチャイルド一族の手に渡っていく。ついに、ロスチャイルド一族はマイアーの求めた「通貨発行権」を得たのである。
②ロスチャイルドの出したもう一つの条件が「シティ」の割譲だった。シティとは14世紀にロンドンの一角に建造された、イングランド銀行をはじめとしたイギリスの金融機関が密集する城塞都市である。シティには、有事に備えて、イギリス政府と同格の行政機能が与えられていた。いわば独立した「都市国家」に近い区域なのだ。そのシティが、ロスチャイルド一族の支配下に置かれたのである。ロスチャイルド一族は、国家システムの管理から脱して、自らが「システム」となり「法」と化したのである。
その後、世界中に植民地を持つイギリスのシティには、国際金融資本が続々と集まってきた。それに伴い、シティが発行するポンドは、世界最強の基軸通貨となっていく。そしてロスチャイルドが経営権を持つイングランド銀行は、第1次世界大戦の終わりまで「世界の銀行」と呼ばれ、世界中に基軸通貨「ポンド」を投資し、莫大な収益を上げた。通貨発行権を得たことでイギリスを支配したロスチャイルド一族を中心とするハザールマフィアが、次なる標的に選んだのが新興国家アメリカであった。
ハザールマフィアは権力と財力、そして壮大な策略でアメリカのドル発行権をも手に入れる。ポンドと、それに続くドルと言う基軸通貨を手中に収めることで、ハザールマフィアは近代のマネーカーストの最上位に君臨していくのである。