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マネーカースト(5)

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(5)石油取引通貨で進行する「ドル外し」

 金と並んでドルの価値を支えてきたアメリカの「石油覇権体制」もまた、大きく変貌しつつある。2017年9月、アメリカの重要な輸入元の一つであるベネゼエラの政府が、「今後はドルでの原油の支払いを受けない」と発表した。「今後、人民元建て原油決済を実施する」とドルを決済通貨から排除する方針を示した。その理由として、「ベネゼエラをドルの暴政から解放するためである」と説明している。

 アメリカから受け続けた金融制裁に対して、ついに抵抗を始めたのである。この宣言に対して、ロシアは「アメリカによる侵略行為からベネゼエラを守る」と公言したのである。一方、ドナルド・トランプ大統領は、今回の政策を打ち出したニコラス・マドゥロ大統領を「かって繁栄していた国家を崩壊の瀬戸際に追いやった」と罵倒し、「ベネゼエラは腐敗した社会主義独裁国家で、善良な人々にひどい苦痛と苦悩を与えている。アメリカは行動に出る用意がある」と激しく怒りを示した。

 しかし、これは、トランプ政権の後ろ盾であるアメリカ軍の方針とは全く異なる発言であった。ここにも大統領就任後、アメリカ軍と寡頭勢力の間で揺れるトランプの腰の落ち着きなさが現れている。

 ドル以外の通貨での原油取引を提唱している国はまだまだある。2017年10月4日には、サウジアラビアのサルマン国王がロシアを訪れて、翌日プーチン大統領と会談した。今回のサウジアラビア国王のロシアへの公式訪問は、画期的なことである。ペンタゴン筋によると、その会談の際にサウジアラビアはロシア製の地対空ミサイルの輸入を協議するとともに、「ドル以外での通貨での原油取引」を提唱したという。そこには、ドルを切り捨てた場合、「ロシアはアメリカからサウジアラビアを守ってくれるか」と言う打診が含まれている。

 ベネゼエラの宣言については、トランプの強硬姿勢と別の見解を示したアメリカ軍だが、サウジアラビアの離反の動きには拒否反応を示した。直ちに、サウジアラビアを含む湾岸協力会議(GCC)加盟国との共同軍事演習の停止を発表した。つまり、サウジアラビアに圧力をかけたのである。しかし、アメリカの圧力にめげず、現在、ロシアやイラン、カタール、ベネゼエラと言った原油輸出大国が次々と「ドル以外の通貨での原油取引」の導入を発表している。さらに、中国も、「人民元で原油代金を決済するように」と、それぞれ輸出元の産油国と契約を交わしている。さらに、アメリカの石油覇権体制に追い打ちをかける流れが起こっている。フランス、ドイツ、イギリス、ノルウェー、中国などの多くの国々がガソリン車とデイーゼル車の販売禁止を計画しているのだ。アメリカが軍事力で世界の石油資源の要を押さえることで覇権を維持できた時代は終焉を迎えようとしている。

2017年5月、プエルトリコが破産手続きを申請した。その負債総額は740億ドル。先に破産したデトロイト市がアメリカ政府から独立した州の管理下にあったのに対し、プエルトリコは事実上ワシントンD・Cの直接管轄に置かれており、元首はアメリカ大統領である。つまりアメリカ政府の子会社と言うことになる。しかしながら、大手マスコミは今回の破産について「2017年9月に発生したハリケーン・マリアに直撃されて、プエルトリコは壊滅状態にある」と言う虚偽情報を流している。アメリカ政府は「天災」を理由に、その莫大な負債を帳消しにしようとしているのだ。トランプ大統領もプエルトリコの負債について、「プエルトリコが発行した債券を保有する人は、償還されるという希望と、「おさらば」すべきだと述べ、さらにツイッターで「プエルトリコの債務は全額免除すべき」とのメッセージを発信した。この発言に対して、行政管理予算局長のミック・マルバニーが「大統領の発言は、プエルトリコの債務問題を解決する方法を見出す必要があるという意味だ」と否定したが、かなり苦しい説明である。

 アメリカ政府にはプエルトリコの破綻問題を解決する力さえ残っていない。そして負債をなかったものとして逃げようとしている。しかし、プエルトリコ債を持つ債権者(民間金融機関、企業、個人投資家)が黙って許すはずがない。その矛先はアメリカ政府に向けられるであろう。つまり、プエルトリコの破綻はアメリカ政府の破綻をも予言しているのだ。

 2017年12月7日、アメリカ国防総省はアメリカ政府の財政難により、「軍人や職員の給与が支払えなくなる可能性」及び「国防総省の機能停止が生じる可能性」を記者会見の席で正式に認めている。2018年1月20日、おりしもその日に、アメリカ政府の暫定予算が議会で成立せず、結果、政府機関の一部が閉鎖に追い込まれることとなった。そのため,中国の格付け機関「大公国際資信評価」が、アメリカの信用格付けを「BBB+」に引き下げた。ペルーや、コロンビア、トルクメニスタンなどの経済破綻すれすれの国々と同水準にされたのである。格下げ理由は、大公国際は「アメリカの政治システムと戦略、経済基盤によって規定される借金経済モデルは変わらない。減税は政府の返済財源にますます悪影響を与えるだろう」。さらに「現在のアメリカ政治の生態系には欠陥があるため、政府の効率的な運営は難しく、この国の経済発展が適切な軌道から外れている」と断じている。

 果てしなく続く財政赤字の膨張、国民を搾取し続ける政治、金の亡者が利を食らいつくした未来のない経済・・・。すでにアメリカ経済から中国マネーは引き上げられ始めている、


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