(4)リーマンショックを超える「バブル崩壊」の危機
アメリカ経済の安泰と言う幻想を支えているのは、「ドル」の信用力である。しかし、そのドルを発行する権限を持つ、アメリカの中央銀行FRBもまた、すでに「死に体」になっている。近年、FRBやEU(欧州連合)の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)の買い支えにより欧米金融市場は高騰を続けた。しかし、それは、実体経済の回復による健全な株価上昇ではなく、人為的に作られたものである。量的緩和と超低金利政策によって、投資熱が煽られた結果、7・4兆ドル分の債券が取引されている現状は、明らかに異常事態である。
2017年、FRBは、4・5兆ドル規模にまで膨れ上がったバランスシートをリセットするために、「市場の買い支えを止め、資産(株、債券など)を売却する」と言う方針を示した。しかし、経済専門家らの見解は、「時すでに遅し」と言ったものだ。
著名な投資家であるピーター・シフは、ITバブル、リーマンショックと繰り返してアメリカ金融市場に起こっては弾けたバブルを生みだしたのはFRBだと指摘している。そして、現在のバブルは史上最大規模であり、リーマンショックやITバブルよりもはるかに危険だと断じている。
また、シフを初めとする経済エキスパートたちは、FRBが大規模な資産の売却を始めれば、住宅ローンなどの金利の急上昇を招き、結果アメリカ経済が崩壊すると警告している。結論として、アメリカ経済の崩壊を避けるためには、FRBはバランスシートが10兆ドル規模に膨れ上がるまで投資を続けるしか術はないという。行くも地獄、戻るも地獄である。FRBは既に後戻り出来ないところまで来ている。その状況の中で、2017年9月6日、FRBのスタンレー・フィッシャー副議長が早期辞任を発表した。その後さらに、ジャネット・イエレン議長を初めとした、寡頭勢力の息のかかったすべてのFRB」理事の退陣が発表された。
実体経済の活性化を伴わない金融政策によって生じたバブルは、いつか必ず弾ける。彼らがアメリカで行っていたまやかしのドルシステムが限界に達したことを意味する。現在、FRBの新経営陣が「中央銀行による金融政策の戦略見直し」「実体経済への資金の導入方法」などについて新たな手法を検討している。しかし、ドルシステムと言うものの根本的な崩壊を避けることは既に難しい状況である。
戦後、特権的寡頭勢力が金融詐欺ともいえる悪魔的な手法で世界をペテンにかけて「ドルの価値」と言うものを演出し続けてきた。その価値を裏付けてきたのは金と石油である。現在、金と石油両面において、「ドルの価値」の化けの皮が剥がれつつあるのだ。それは「ドル体制崩壊」が迫っていることを意味する。
2017年8月、トランプ大統領により財務長官に指名されたスティーブン・マヌーチンが金絡みで妙な動きを見せた。8月21日、マヌーチンがケンタッキー州のフォート・ノックス陸軍施設を訪れたことがメデイアで報じられた。マヌーチンは「皆既日食を見に行った」と語ったが、これは建前である。マヌーチンはその日のうちに陸軍施設内にあるFRBの金塊保管庫を視察している。そして、視察後すぐ「金は安全に保管されている」とツイートした。本当の目的は「このツイートをするjことなのである。以前から、「フォート・ノックスの金塊は既にない」と、CIA筋などの複数の情報筋が断言している。金がすでにないことを前提に、マヌーチンと政府の動きを見る必要がある。つまり、財務省のトップがプライベートで皆既日食を見に行ったついでに、「たまたま」その地にあった金塊保管庫を視察して、「ふと思いついたので」その安全についてツイートしたなどと言うことは絶対にありえない。ツイートのさりげなさを演出するために、逆算して皆既日食を見いくと言うストーリーを描いたのだ。突発的な視察を名目に報道取材もほとんどされていない。何よりも、最後にフォート・ノックスの金塊の量が数えられたのは、1953年なのである。これで「金の実在」を信じろという方が無理がある。
さらに、財務省は「フォート・ノックスに貯蔵された1億4700万オンスの金塊を政府は保管している」と「わざわざ」報告している。なぜ今、尋ねられてもいないのに、「金の安全」を必死でアナウンスするのか? その裏にはドル体制の崩壊が迫っている状況が透けて見える。金を取り巻く混乱した状況の中、アメリカ情報機関に国際金融・貿易などについてアドバイスを行っているジェームズ・リッカーズは金の価格について「今の約4倍の1オンス1300ドルから1オンス5000ドル、最終的には約8倍の1オンス1万ドルにまで跳ね上がる」と予測している。そして、「迫りくるドルシステムの終焉に向けて、今後ますます世界中の国々が金を取得するペースを上げるだろう」とその理由を説明している。