(3)破産を予兆させる財政赤字「獣の数字666」
アメリカ政府が破産に瀕しているのは莫大な財政赤字からも明らかである。2017年9月末のアメリカの年度末決算で、アメリカ政府はさらに6660億ドル(約75兆円)の財政赤字を計上した。アメリカの政府債務はついに総額20兆ドル(約2100兆円)を突破し、さらに、年金や医療などで将来支出が見込まれる社会保障費を含めれば65兆ドル(約7150兆円)まで膨れ上がる。アメリカは人類史上例のない借金超大国なのである。
2017年度の財政赤字は、獣の数字を連想させる「666」となった。アメリカ政府の破産を予兆させるものだ。実際、アメリカの財政危機は、現実的な形で全米各地にも現れている。2017年9月14日、ペンシルバニア州議会が記者会見を開き、「未払いの手形を約8億6000万ドル残して、15日には財源がゼロになる」と発表した。年金の積立金不足も深刻だ。超低金利政策の影響を受けて、アメリカ国内では「財政が比較的安定している」と言われてきたアメリカ最大の公的年金基金であるカルパース(カルフォルニア州職員年金基金)が、年金支給額を大幅に引き下げる事態に陥っている。ムーディーズも「州政府と地方自治体の年金制度は7兆ドル、企業の年金基金は3750億ドルの資金不足に陥っている」と発表した。さらに、世界最大級の米投資信託運用会社バンガードの創業者ジョン・ボーグルも「現在の超低利金利が続けばアメリカ公的年金基金のほぼすべてが破滅に向かう」と警告しているのである。
世界経済フォーラムの統計では、アメリカの年金積立の不足額は2015年の時点で28兆ドル(約3080兆円)に上ると算出している。2050年には137兆ドル(約1京5070兆円)に及ぶと予測している。給付金が未払いになることは必至である。若い世代は払い損となり、高齢者も受給開始年齢の引き上げや受給額の引き下げとなるなど、絶望と不安だけがあふれる社会となるはずだ。その怒りの矛先は大規模なデモや暴動と言った形で政府に向けられるであろう。
アメリカ政府は水面下で公的資金を導入して事態のごまかしを図っているという。しかし、年金破綻への流れを止めることは不可能である。年金の破綻は、国家と言う集合体までもが破綻することを意味する。アメリカの崩壊は必ず起きることなのだ。にもかかわらず、アメリカ政府及び大手マスコミは「株価最高値を記録ー好景気だ」「アメリカの経済は大丈夫、安泰だ」などと根拠のないアナウンスを続けている。
国家破産の危機に瀕しながら、その状況から国民の目をそらすために、アメリカ政府はさまざまの「意味のない数字」をまき散らしている。例えば、2017年10月の失業率だが、マスコミは「アメリカの失業率が改善された」と大々的に報じていた。
「米雇用統計10月は26万人増 失業率4・1%に改善」(「毎日新聞」インターネット版 2017年11月3日付)
しかし、このような表面上の数字に騙されてはいけない。データを見ると、数字上の失業率が改善したのは、9月に比べて労働力人口が約96万人減少しているからに過ぎない。失業者が減ったのではない。96万人もの人々が失業率統計の対象から外されただけのことである。つまり、職探しを諦めた人や、何らかの事情で求職活動ができなかった人、過去4週間より前の求職活動の結果を待っていた人などは、職にあぶれていても「失業者」としてカウントされないのだ。まさに数字上のトリックである。
失業率に限らず、この数字上のトリックはアメリカのいたるところで行われている。例えば、アメリカでは庶民の所得の上昇分は物価の値上がりによって消えてしまう「悪いインフレ」が続いている。そこでインフレ率を実際より低く見せるために、高騰する住宅費や医療費、教育費などを正確に反映させず、消費者物価指数を低く抑えている。庶民の家計を直撃する生活必需品の価格上昇などは無視しているのだ。
GDP(国内総生産)の計算方法もトリックだらけだ。主婦の家事労働や、日曜大工、ボランティア活動などは市場で取引されないため、GDPには含まれない。一方で、膨大な軍事費や無駄な公共事業などは「公共サービス」としてGDPに加算される。
GDPを実際以上に高く見せるために、数値を「中央値」ではなく「平均値」で示すという姑息な手段が用いられている。格差が広がり、貧困層が増えれば中央値は下がる。しかし、平均値であれば、多くの人々が貧困であえいでいても、そこにビル・ゲイツ1人の莫大な資産を加算すれば、一気に上げることができる。数字のトリックなど容易なことなのだ。
トリックに騙されてしまうのは、「経済を見るのに数字に偏りすぎて、現実が見えていない」と言う現代人の傾向にも一因がある。何よりも、数字を信用しすぎて肌で感じる現実を軽視する。これは情報化社会に生きる現代人の弱点ともいえる。
アメリカでは格差が拡大した2000年以降、10年間足らずでフードスタンプ(国による食料費補助)の受給者が2倍の5000万人近くに増加した。国民の約7人に1人が食うに困っている計算になる。そんな国が世界一豊かであるはずがない。我々を支配しようとするものは、わざと何もかも数字に置き換えることで民衆の目をくらませて、真実を覆い隠してしまう。