(21)サウジ政変の狙いは脱石油、緑の技術導入である!
ビンラディン一族は、ブッシュ家とお友達だ。今回のサウジ政変はそのお友達を狙い撃ちにしている。それはブッシュ一族に敵対宣言をしたに等しい。ムハンマド皇太子による大々的な汚職摘発の目的は、改革反対派の旧勢力一掃だという。では、皇太子の改革とは、一体何か?
伝えられる情報によれば、石油依存からの脱却だという。国庫収入の8割が石油頼りでは、旧勢力が反対するのも当然である。しかし、若い王子は、世界が脱石油に急激にシフトしていることを知り、脱石油改革を図っている。酒池肉林の放蕩三昧におぼれていたサウジの王族たちを襲った突然の粛清の嵐・・・・。当事者たちにとっては、何が起こっているのか戸惑うばかりだろう。なにしろ、数十年間も、何のおとがめなしに王族の特権で贅沢三昧の暮らしをしてきた。その連中が、突如、身柄を拘束され、資産を凍結、剥奪されているのだ。
32歳皇太子の、改革への熱い思いは、よくわかる。脱石油→オイルマネーをグリーンマネーに変える。それも石油が無価値になる前に、出来るだけ早めに手を打つ。そのためには、必ず反対する旧勢力を急襲し、身柄を拘束する。
これからは船瀬氏の憶測だが、若き王子に実力行使を強行させたのは、父国王の意向もあるはずだ。そうでなければ、汚職摘発の責任者には抜擢されない。さらに、旧勢力一掃の決断に踏み切らせたきっかけこそ、2017年3月の魔王の死であった。石油王の死は、まさに石油利権の死を意味する。その証拠に、世界自動車業界を震撼させているEVシフトの衝撃を見よ。自動車が「もう石油は一滴もいらない」と宣言したのだ。国家財政の大半を石油に依存するアラブ諸国にとって、天と地がひっくり返るほどの衝撃であったはずだ。そして、これら自動車業界を支配してきた世界皇帝も死んだ。つまり、石油王に弾圧されてきた各業界のタガが外れたのだ。さらに、サウジ皇太子を改革に駆り立てたのがトランプ大統領の誕生だろう。この金髪のキングコングの行動原理は「アメリカ・ファースト」「俺様ファースト」である。
これまでも石油王ロックフェラーのようにアラブ諸国の面倒を見て、石油利権を保証してくれる可能性はゼロである。アメリカの利益、俺の利益がまず優先する。だから、アラブ諸国は石油利権が消滅する前に、何とかサバイバルの道を模索しなければならない。
実は、32歳の皇太子が、手本とすべき改革をすでに達成したアラブの国がある。それが「マスダール計画」だ。目標は「砂漠に脱石油のエコ都市を建設する」ことである。つまり、中東の砂漠地帯に、脱石油の都市ができる。その計画は着々と進んでる。砂漠の中の「緑の都市」建設を推進しているのがアブダビだ。石油立国で繁栄してきた同国は、今、国を上げて脱石油の道を進んでいる。アブダビは、アラブ首長国連邦(UAE)を構成する王国だ。ペルシャ湾南岸の国土に人口190万人と小さい国ながら豊かな産油量で潤う金満国家だ。おなじUAEに属する国にドバイがある。両国は同じ脱石油でも目指す方向が180度違っている。ドバイは世界最高800メートルの超高層ビルをシンボルとする超近代都市を砂漠の中に出現させた。同国が目指したのは、世界の富が集中する金融と観光都市だ。しかし、2009年、世界金融危機によるバブル崩壊で青息吐息の状況だ。
対照的にアブダビは地道ながらエコロジー都市建築の道を選択した。その緑の都市を広大な砂漠のど真ん中に展開している。同国が、脱石油の国家戦略「マスダール計画」を打ち出したのは2006年のことだ。その目玉と言うべきプロジェクトが「マスダール都市」構想なのだ。「マスダール」とはアラビア語で「源泉」と言う意味である。つまり、「生命の源」と言う理想をこの緑の都市に託したのだ。産油国が脱石油の自然エネルギーによる自然都市を目指す。それも10年以上も前に計画をスタートさせている。
アブダビの指導者たちは、その第2のエネルギー源に着目した。よって、温室効果ガスのCO2排出はゼロ。当然ガソリン車は1台も走らない。石油産油国が建設推進ている都市で、ガソリン車の走行禁止とは、皮肉なことである。
実は2009年の時点でも、中東アラブ諸国は、すでに脱石油を模索している。カタールは太陽光発電で海水淡水化プロジェクトを進めている。バーレーンは風力発電ファームを計画中だ。サウジアラビアも広大な砂漠に太陽光発電所の建設計画を進めている。自然エネルギーだけではない。アメリカの発明家スタンリー・マイヤーが命を賭して世に問うた「水エンジン」「燃える水」が表舞台に出てくるのも時間の問題である・水が燃えるなら、石油の存在は無価値となる。その他、圧殺されてきたフリーエネルギーの理論と技術も解禁されるだろう。ペンタゴンは原子力空母などですでに燃える水を導入しているという。サウジアラビアの32歳の皇太子が欠航した旧勢力の抵抗排除は、「マスダール計画」のような大規模国家プロジェクトへの第1ステップではないかと思える。