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世界皇帝の死(20)

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(20)サウジアラビアは国家収入の8割が石油依存

 中近東で最も保守的、封建的な大国がサウジアラビアである。国土はアラビア半島の大部分を占める。建国は1932年と意外に新しい。それは、サウド国王の一族が支配する国なのだ。アラビア半島では、長い間部族間の争いが絶えなかった。現在の首都リヤドで、権勢をふるっていたサウド家出身のイブン・サウドが周辺部族を制圧し、1932年に、サウジアラビア王国を打ち立てた。ちなみに、この国名は「サウド家のアラビア」と言う意味である。だから、代々国王に就任するのは、サウド家の者に限られている。さらに、国王は首相も兼任するので、まさに絶対権力者だ。現在の民主主義の思想とは、程遠い支配体制が続いている。一応、顧問評議会と自治評議会があり、政府への助言を行っているが、法律を作る権限は与えられていない。社会制度では、イスラム教の戒律が徹底しており、2015年、自治評議会への女性の立候補が初めて認められたほどである。旅行すら、男性の後見人の許可が必要と言う。我々の感覚からすると、想像を絶するアナクロな国家なのである。

 サウジアラビアの経済を支えるのは、膨大な産油量を誇る石油である。1938年、油田が発見され、世界有数の産油国に急成長した。確認埋蔵量は世界第2位で、国家収入の8割を石油に依存している。日本は輸入石油量の30・7%をサウジに頼っている。膨大な石油売り上げで得た莫大な富は、王族に集中している。サウジ王族は何千人もいる。彼らはロンドン、パリ、ロサンゼルスなどで豪華の限りを尽くしている。これだけ王族が多いのも、国王が生産する子供の数が尋常ではないからだ。一夫多妻制はイスラムでは伝統だが、それが国王レベルになると妻の数も半端ではない。2017年、同国から46年ぶりにサルマン国王が来日した。その時随行した閣僚や息子の数は1000人超であった。サルマン国王は、初代イブン・サウド国王の25番目の男の子と言う。25人兄弟とは絶句である。初代には36人の息子がいた。娘を合わせれば70人は超えそうである。これでは王族が鼠算式に増えて当然である。国王は、判明しているだけで7人の息子(皇太子)がいる。

 1932年の建国から1938年の油田発見まで、わずか6年。同国の発展に、この膨大な石油利権は不可欠である。そして、想起するのが魔王の存在である。

 デイヴィッド・ロックフェラーは1915年生まれだから、石油発見当時には23歳。兄ネルソンも30歳。実権は当時64歳のジョン・ロックフェラー2世が握っていたことは間違いない。しかし、その後、デイヴィッドは頭角を現し、石油王として、20世紀に君臨し、世界国定として恐れられている。サウジが石油で超大国に変貌する背景には、石油王の存在があったことは言うまでもない。埋蔵量2位の石油超大国とデイヴィッドは不即不離の立場にあったはずである。

 2017年3月、魔王が101歳で死んだ。同年11月5日にサウジで政変が勃発。サルマン国王の息子、ムハンマド皇太子(32歳)配下の汚職対策委員会が、突如、元閣僚ら数十人の身柄を拘束したのだ。検挙された人数は約200人以上に達する。その中には、超富豪で投資家として知られるワリード・ビンタラール王子ら11人の王子や現職閣僚4人も含まれていた。委員会は国家警備相のムトイブ王子まで拘束し、即、解任した。こうなるとまさに、ムハンマド皇太子のクーデターである。逮捕容疑は、ワリード王子には資金洗浄、汚職、当局への強要などの疑い。ムトイブ王子には横領、架空の職員採用、自らの企業への特注など・・・。

 汚職対策委は、サルマン国王の「国王令」により設置されたばかりだ。そこには、容疑者への捜査、逮捕、渡航制限、資産差し押さえなど広範な権限が与えられている。32歳とまだ若いムハンマド皇太子が、ライバルの王子たちまで拘束、摘発したのはなぜか? 今回の拘束理由についてムハンマド皇太子は容疑者たちが「不当に富を得るために公益よりも、私利を優先させ、権力を悪用した」と説明している。アナリストたちは、ムハンマド皇太子が推進する改革への抵抗勢力を排除するための拘束劇と分析している。

 この拘束は荒っぽいようである。「17人が虐待され治療をうけ、そのうち王子は6人。次期国王候補に挙げられた王子のムトイブ前国家警備相も拷問を受けたという。また、自殺を図った王子もいる模様だ」(「毎日新聞」カイロ支局)

「今回摘発された汚職の金額も桁外れだ。「サウジ司法当局は、高官ら数十年にわたる収賄や横領で1000億ドルが流用されたと発表。拘束者は銀行口座を凍結され、首都リヤドにある高級ホテルに監禁されている。政府は拘束者の氏名や容疑の詳細を公表していない。だが、中東メデイアによると、世界的大富豪の投資家あるワリード・ビンタラール王子、2001年、米同時多発テロの首謀者である国際照り組織アルカイダの故ウサマ・ビンラディン容疑者の兄で、サウジ建設大手ビンラディン・グループの実業家バクル・ビンラディン氏も拘束された」(同)


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