(18)トヨタがはまった燃料電池車FCVの罠
世界EVシフトの激動に、唯一、取り残されている自動車大国がある。それが日本である。安倍政権は不思議なことに、この2017年ショックに全く何の対応もしていない。危機管理すら皆無である。それどころか自民党政府のキャッチフレーズは、「未来は水素文明」である。つまり、水素が未来エネルギーだという。船瀬氏は呆れて開いた口がふさがらないという。しかし、安倍政権は本気のようだ。水素文明なら走る車は水素を燃料とする。それが燃料電池車だ。自民党政権の水素文明への、のめりこみようは半端ではない。全国に水素ステーション網を張り巡らせて、燃料電池車を走らせるという。燃料電池車とは、水素と酸素を化合させて発生する電気で車を走らせる。ちょうど、学校で習った電気分解の逆の現象である。なるほど、発生するのは電気と水だけである。だから、FCVも一応ゼロエミッション(無公害)ではある。
船瀬氏が電気自動車の父として尊敬してやまない人物がいる。それが清水浩工学博士だ。約30年前、国立環境研究所に在職中、たった一人で構想し、設計したスーパーEV「IZA」を完成させている。清水氏は水素燃料電池車について、あっさりこう言った。「水素がなければただのハコです」
それなのに、トヨタは社運をかけてFCVを開発した。名前は「MIRAI}である。スタイルはかっこいい。そして価格は723万円と半端ではない。水素1充填で650㎞走行するという。注意書きに「仕様の異なる水素ステーションでは走行距離も異なります」とある。自民党政府は、全国に水素ステーション網を拡充するという。実態を調べて絶句した。全国のステーション数は、なんと100か所以下であった。あの広い北海道には札幌市内に1か所あるのみ。北海道では「MIRAI}を買ったら悲劇と言うより、喜劇が待っている。東北地方にステーションはゼロだという。トヨタは「今後、多くの水素ステーションの整備が予定されています」と言うがお先真っ暗である。燃料電池車の未来は絶望的だ。
日本全国どこでも各家庭に電気は供給されている。つまり、EVインフラ網は完璧である。だから、電気自動車の購入者は、誰でも自宅で充電できる。燃料電池車ではそれが不可能だ。外出時でも、EV充填設備は全国に数え切れないほど整備されている。かたやFCV水素充填設備はお話にならない。さらに、水素は常温で可燃気体であり、常に水素爆発の危険が伴う。だから、充填設備にも安全確保の様々な投資が必要となる。だから、建造費も雲泥の差だ。電気スタンドは1基約200万円、ガソリンスタンドは約2000万円、水素ステーションは約2億円だ。つまり、水素設備1基分で電気スタンドが100基できる。今後、コンビニ駐車場などに、コイン式電気スタンドが雨後の竹の子のように普及するだろう。さらに近年、リチウム・イオン電池の性能が向上し、10分前後で充電可能と言う。ちょっとした買い物時間で満タンならぬ満電も可能となる。それに対して、現時点では、水素の運搬、貯蔵、充填の公的基準すら確立していない。「水素は極めて危険な気体で爆発する。それを車に使うなんて正気じゃないですよ」と東北大名誉教授・斎藤武雄氏はあきれ果てている。
さらに、燃料電池車には致命的欠点がある。その燃費の異常な高さである。燃料電池車の燃費はガソリン車の3倍だという。3倍も燃費が悪い車をわざわざ買う馬鹿な消費者はいない。EVの燃費はガソリン車の三分の一以下である。だからFCVの燃費はEVの9倍も悪いことになる。つまり、同じ燃料代でEVの9分の1しか走れないのだ。もはや勝負あった。
こんなバカバカしい燃料電池車がどうして登場してきたのか? その謎は先述のDVDで判る。何とFCV推進セレモニーに、ベビー・ブッシュがにやけた顔で愛嬌を振りまいている。ブッシュを動かしているのは国際秘密結社イルミナティだ。その頭目が魔王ロックフェラーである。つまり、燃料電池車の推進は魔王の命令なのである。その目的はEV潰しである。偽のプロパガンダで嘘の宣伝を繰り広げ、夢の水素文明の幻想で一般大衆を洗脳しようとしたのだ。しかし、欧州諸国は騙されなかった。それも当たり前である。EVに比べて燃費が9倍も高いFCVが普及するわけがない。誰でもその嘘に気づくはずである。ところが唯一、この嘘にころりとだまされた国がある。それが日本である。
日本とトヨタがはまった燃料電池車の罠・・・・。まさに痛恨の選択ミスである。世界広しといえども日本だけがとんでもない我が道を進んでいる。ブッシュやロックフェラーなどのイルミナティが仕掛けた水素文明幻想に、日本だけがたぶらかされてしまった。この先に待つのは奈落の底への地獄である。このまま進めば、トヨタは第2の東芝になる。プリウスは「ガラケー」になる。しかしトヨタは日本の屋台骨を支える基幹産業である。同社がコケルことは日本経済がコケルことを意味する。トヨタはようやく2017年ショックの衝撃に気づいたようである。慌ててマツダと提携した。マツダの技術に頼ったのだ。パナソニックとの突如の提携はリチウム電池技術にすがったのだ。しかし、いまだ同社の水素への妄想、FCVの迷走は続いている。もはや「MIRAI}に未来はないのだ。メンツにこだわっている時ではない。勇気ある撤退の決断の時である。