（２５）棚機津女（たなばたつめ）伝説と七夕祭り
杣「マリ共和国のバンバラ族にも七夕の祭りもあるとシャハン教授は書いている。実際に向こうに行ってわかったことですが、ナイル川は7000キロぐらいの長さがあって、エジプトのほかに、クシュ（現在の南エジプトと北スーダンに当たる地域）などのように、ナイル川に沿った部族が連合国を作っていたりした。でも、もう一つのグループがあって、ヴィクトリア湖から東西へ横に繋がっている」
飛鳥「東西ですか」
杣「西のナイジェリアとかマリとかまで繋がっている。なぜかと言うと河川ですよ。ヴィクトリア湖に注ぐ側と、その反対側に流れていく河川があって、その横の線の繋がりと言うのが結構大きい。つまり、アフリカは縦横に繋がっている。これまでは、縦のエジプト王国のイメージしかなかったけど・・・」
飛鳥「どうしてもナイルに沿ったイメージしかない」
杣「横も繋がっていた。河川でもっと強く繋がっていた」
飛鳥「つまり、十字になっている」
杣「そうなのです。その東側の端っこに私は行ったのです。それで、シンポジウムで一緒に講演したアフリカ人の語学の先生は、アフリカの元植民地では英語やフランス語が公用語になっていて、アイデンティティーとなる言語的ルーツを忘れているという。だから、先祖からの古代の言葉を大切にして、もう一度勉強し直さないといけないと、その先生は言っている」
飛鳥「クシュって、そういう古代の言語が残っているじゃないですか」
杣「そうでしょうね。その先生は、私の資料を見て興味を持っていましたね。やはり、古代から繋がっているということを知るのは大切だと。「だから、私も言葉で取り戻そうとしているのだ」と言っていた。背景を聞くと、アフリカ人はクリスチャンが多いが、銃を突きつけられて、「聖書か、先祖から続く信仰か」と問われて、どちらかを選ばされた部分がある。強制されて、先祖からの物を捨てざるを得なかった。日本の国家神道がアメリカ軍に排除されたのと同じように、500年前に、いやいやながら先祖の物を捨てたという気持ちがアフリカ人にはある」
飛鳥「エジプトの首都・カイロのはずれの方にクシュの村があって、結構差別されている。ただ、クシュの面白いところは歌手とかが多い。アメリカでも黒人がジャズシンガーとかになるように、エンターテイメントの部分で活躍している人が多い」
杣「音楽的才能があるのでしょうね」
飛鳥「なお、先ほどの七夕ですが、中国の織姫と牽牛が天の川を挟んで年に一度会う物語として日本でも定着している。だが、日本では古代から「棚機津女伝説」が存在していた。記紀にもその記述が出てくるので説明させてください。
地上の葦原中国を平定するために、高天原から降臨した天若日子は、大国主命の娘と結婚して高天原とは連絡を絶っていた。その罰を受け、彼は高御産巣日神が地に投げた矢に当たって死んでしまう。代わって阿遅すき高日子根神が降臨する。その際、多那婆多（たなばた）と言う名称が登場し、万葉集にも織女（たなばた）の織姫が降臨する。そもそも、七夕は七日の意味で、日没で一日が終わるユダヤ暦なのです。そのころに輝くのが一番星の金星の「宵の明星」で、このことから織女は「「織女＝織姫」であり、「織姫＝金星」となって美の女神・ヴィーナスとなる。矢に当たって死んだ天若日子は、大国主の娘の下照姫命を妻にしていた。下照姫の意味は「地平線近くで輝く星」です。さらに、下照姫命に「照」の一時があることから、丹後の籠神社の海部光彦宮司が公開した「多次元同時存在の法則」によると、同じ字を共有する神は同一神となり、「下照姫命＝天照大神」と言うことになる。一方、阿遅すき高日子根神は「雷」の神であり、京都の賀茂神社の祭神・迦毛大御神と同じとされる。さらに、雷神は古事記の荒ぶる神、須佐之男命が、高天原の境の大河である「天の安河」を挟んで誓約を行った「二神の誓約」の物語なのです。天照大神は織姫を暗示させる機織り機を持ち、須佐之男命は「牛頭天王」とも言われ、牽牛の牛と符合する。新約聖書は、イエス・キリストを「明けの明星（金星）」と記載する。つまり、イエス・キリストは金星を通して天照大神と同一神になり、黄泉を司る須佐之男命とも、「黄泉＝陰」で同じ金星の「宵の明星」として同一となる。誕生は初めで、死は終わりだからですね。「私はアルファであり、オメガである。最初に者にして最後の者。始めであり、終わりである」（「ヨハネの黙示録」第22章13節）
ヨハネの黙示録にはこうあります。実際、天照大神は、記紀編纂の前まで天照国照彦と呼ばれる男神でした」