(18)火星探査車ソジャーナのテスト走行を見る
飛鳥「JPL(ジェット推進研究所)はどうですか?」
高野「あそこにも友人、知人がいますよ。火星に探査車を飛ばす前に、地上でのテスト走行を見せてくれた。火星に行く前です。そのモーターがコスモアイル羽咋に展示てある。デジェブ・ダザイ博士から直接いただきました。彼は天才ですね。「どうやって考案したのですか」と尋ねたら「昆虫を徹底的に調べた」と言う答えが返ってきた。ソジャーナを作る前に昆虫を徹底的に分析して解析した。「見せてあげるよ」と言って、ダザイ博士自身が見せてくれた。実際に動かして「そこにあるサッカーボールをゆっくり蹴ってください」と言われてゆっくり蹴ると、ソジャーナはピタリと止まって、後ずさりして進行方向を変える。危険を感知するのです。僕たちはスコップを持ってJPLの中庭に穴を掘って、落ちるか実験してみた。穴の縁まで行って落ちそうになるのだが、そこでピタリと止まって、少し考えて迂回する。彼は「半年で作れと言う無理を言われて、その通りに作った」と言っていた。最終的な組み立てはJPLの中で行われる。その際、防護服を着て、チリとかホコリが全くない状態の中で行われる。基本的な設計は一人で、半年でやってしまったようです」
飛鳥「その人物とどうやって接触できたのですか?」
高野「たまたまいたのです」
飛鳥「それはありえないでしょう。向こうは最初から高野さんをターゲットとして選んでいて、わざと紹介して見せたりしているのです。まあ、それは置いといて、JPLとNASAの関係について聞かせてください」
高野「JPLは惑星探査が中心です。特に火星を徹底的に調べている。始めてJPLに行ったとき、見せてもらったのは、エアジェルです。ガラスの中に入っているものを見せられたが、「触ってはいけない」と言われた。エアジェルが何かと言うと、最初は火星探査で活用するために作られたもので、バイキング計画では実用化されたようです。機材をパラシュートで落とすわけだが、その周りをエアジェルで固めてしまう。だから、パラシュートが切れても機材に損害は出ない。転じて、パラシュートなしで戦車を輸送機から落としても壊れないということです。彼らが考えたのは宇宙開発への利用より軍事利用だった。こうしたきわどい技術は沢山ある。JPLで火星探査車のソジャーナを組み立てているところなども見せてもらった。自動サンプル採取に関して言えば、今度発表される予定になっているのは、サンプルリターン計画です。火星に生物がいるというところまで発表されるでしょう。サンプルをどこまで持ってくるかと言うと、ISS(国際宇宙ステーション)です。地球上には絶対に下ろさない。だから飛ばし続けている。…発表の段階は、先ず地球以外の惑星に下等な生命体が存在していたという内容になると思う。下等な生物がいるのだったら、中程度かそれ以上の生物がいてもいいじゃないかという具合に徐々に慣らしていける。最終的には、エイリアンは本当にいるかもしれない、と言うところまでいくでしょう。…次は居住区域がどの程度まで広がっているかということになってきて、火星に生物がいるくらいなら、他の星や恒星系にも生物がいてもいいじゃないかというところまで認識が広がっていく」
飛鳥「JPLは自由な研究と風習を重んじる私立大学から誕生した。一方、NASAは官僚が支配する国家機関です。NASAは議会でJPL潰しを平然と行った時期があり、カリフォルニア工科大学とJPLを切り放なそうと必死だった。しかし、当時のピケリング所長の猛反撃でJPLは独立性をまもり、その結果、JPLはアメリカの宇宙開発史に数多くの業績を残した。
旧ソ連に人類初の人工衛星を打ち上げられたアメリカは、その屈辱を挽回するために、NRL(海軍開発研究所)からリリーフを受けたレッドストーンは次々に大爆発して、アメリカの宇宙開発の信用はがた落ちだった。そこに登場したのが、ジュピターロケットで、載せられた人工衛星がJPLの「エクスブローラー」です。その10か月後に誕生したのがNASAですからJPLの方が兄貴格となる」