(32)幇は、裏世界での交通・通信・密輸を仕切ってきた!
幇(パン)は星の数ほどある。しかし、大切なのは洪門(ホンメン)と青幇(チンパン)である。
原点は共に中国の戦国時代、紀元前の話である。戦国時代の思想家の墨子の思想を原点にしている。その後、洪門は、三国志の時代、関羽、張飛、劉備の時代に根源が出来上がったと言われている。さらに水滸伝の時代(12世紀)に梁山泊を拠点に洪門が再結成されたとも言われている。そして、洪門が本当の意味で、一本化されて強くなったのは、17世紀後半である。台湾の開祖始祖と言われ、日本では歌舞伎の「国性爺合戦」に出てくる和藤内と言う人物である鄭成功が、台湾から東インド会社を追い出して、清に対抗する巨大な勢力を作った。その鄭成功が、洪門の中興の祖と言われている。
それまでの洪門には、たくさんの流れがあった。例えば、哥老会、三合会、天地会、三点会などである。これが17世紀後半になって、反清復明、清をひっくり返して明を復興させようという大きなうねりとして一本化されて、洪門が出来上がった。
哥老会は、主に密輸、特に麻薬の密売をし、人殺し、暗殺を行っていた。テレビドラマの「仕事人」とか「仕置人」のようにお金をもらって義のために人殺しをする。これが哥老会の流れである。また、三合会は密輸が専門であり、天地会は政治結社である。清をひっくり返すという政治結社である。
幇の原典は墨子と言う古代中国の思想家にあるが、中国が海外に行くとき、怖いので、自分を守ってくれる組織として幇が必要だった。では、中国人はいつから海外雄飛を始めたのか? それは唐の時代である。西暦では7世紀から8世紀にかけて、中国人は海外に飛んで行った。この時代に中国人は自分たちの身内を守るために結社を作った。また、朱元璋が明を建国して、最初は貿易を推進したが、すぐに海禁政策を行い、政府が認めない貿易は禁止した。政府が禁止すれば、当然ながら密輸が活性化する。幇が生まれた7~8世紀からやってきたことは、交通と通信と密輸である。そして今日も幇は裏社会で交通・通信・密輸を仕切っている。この裏社会のアジアの拠点は台湾と香港マカオにあった。
香港マカオ及びアジア結社として知られているものに、新義安(しんぎあん)、14K、竹聯幇(ちくれんぱん)の3つがある。
14Kは、香港のある町の4番地にあった国民党と言う意味である。1987年~2000年くらいまで14Kは、世界最強、史上最大の暴力団だった。構成員は20万ともいわれたが、現在は見る影もなく衰退している。なぜ衰退したのか? 組織の老化である。14Kは国民党軍である。そして国民党の洪門員が香港に逃れて14Kをつくった。作った人たちは、1990年代には70~80歳である。世代交代を行わなかったため、老化の結果、組織が恐ろしく衰退している。
今、香港マカオで力のあるのが新義安である。彼らは昔から通信、密貿易が得意である。新義安の構成員は10万ともいわれている。新義安も14Kも、洪門系と言われている。そのトップの2000人は、洪門の人間である。
竹聯幇というのは、青幇系の組織である。これは、亡くなった陳啓禮氏が広げた団体である。今は香港マカオ、シンガポール、クアラルンプールを中心にして、アフガニスタンにも支部がある。この奥への広がりも、大変興味深い世界である。