(2)トランプ政権の3つの見方
これは高島康司氏の見解である。アメリカやヨーロッパで有名な地政学者の間でもトランプ政権は捉えきれていない。見方は3つぐらいに分かれている。
①トランプは、バノンによて操られた反エリート主義の革命政権ではないか、何をやるかわからないぞ」と言った観測がされている。現実を見ると、主要メディアやCIAのような情報機関と真っ向から戦う。共和党の主流派と戦う。民主党とも戦う。既存のワシントン政権に対して「湿地帯を全部きれいにする」と挑発的な宣言をする。→トランプは反エスタブリッシュメントだから、手に負えないという見方をされている。
②トランプは全くのブラフで革命政権のように見せかけているだけだ。エネルギー産業とウオールストリートは、外交問題評議会(CFR)のロックフェラーに結集して、ヘンリー・キッシンジャーが後押ししている。つまり、ネオコンとか軍産系である。外交政策でブレジンスキーがいて、ロシアに敵対政策を取っていた。ところがロシア敵視策は失敗した。ロシアを敵視過ぎて、中国と一体感を強めてしまった。その結果、中国の経済力に乗っかって、現在アメリカの手の及ばないユーラシア経済圏が急速に成長いている。つまり、ロシア敵視策は間違ったと、エリート間で対立が起きた。とりあえず、ロシア敵視策はやめようというがトランプである。ロシア敵視策を止めて、中国とロシアとイランの同盟関係に亀裂を生じさせれば、イランは敵対する。ユーラシア同名の動きに歯止めをかけようと結成された政権だというのが第2の見方である。
③元々エリート層の分裂など初めからなく、みんな一枚岩で固まっている。表面上はCIAや主要メディア、ワシントンの中央政権と対立し、バノンを抱き込んで革命政権のように見せかけている。没落した中間層の怨念は、トランプが勝利するためのリソースとして使うために仕掛けだ。トランプ政権の本性は全部違うところにあるという見方である。
その本性とはどういうものか? NSCー68と言う文書がある。1975年に極秘指定が解除された。この報告書によって、アメリカの国防予算は3倍になっている。つまり、軍産複合体であるアメリカの軍需産業を大々的に再編成せよという内容である。
トランプが勝利した後の12月26日、アメリカの軍需系のシンクタンクから「未来の鋳型」と言う報告書が出た。トランプ政権下ではどのような軍事政策を取るべきか書かれていて、「我々は軍事テクノロジーでロシアに負けた」と言うのが何度も出てくる。アメリカの製造業を中心に、軍需産業を建て替えなければダメで、立て直すぞと言うプランが書かれている。アメリカの覇権の再強化を狙っているのである。
一方、バノンを切ることができない。バノン主義と言う没落した中間層、オルト・ライトと言われる人たちの膨大な支持を集めているからである。ロシア・中国・イランと言うユーラシアを中心として発展している3か国の同盟による非ドル圏は、中国では一帯一路という構想の下に発展した。アメリカは軍事力を強化することで一帯一路に徹底的に歯止めをかける。
トランプ政権の外交政策を握っているのは誰か? ネオコンである。多極化は容認しない。アメリカの軍産複合体を再強化する。極端に言うと、TPPやTTIPをトランプ政権が破棄したように、国際協調によって何かやるのではなく、全部自分の論理で進めて、自分たちの覇権の秩序に他の国々を埋め込んでいく強権的な政権である。