(13)アメリカを動かす啓蒙思想と太平洋を略奪するアメリカ!
太平洋はアメリカが支配する海域と言うのが国際常識である。世界最大の覇権国はアメリカだからである。南北戦争終結後、国内を統一したアメリカは、一気に植民地獲得へと乗り出していく。アメリカはスペインを相手に「米西戦争」を起こし、キューバ、フィリピン、グアムを次々と手中にし、その勢いでハワイ共和国を併合して自治領ハワイ準州にした。その頃のアメリカは、ネイティヴ・アメリカン(インディアン)との長年にわたる戦闘を終え、軍の首脳たちは新しい戦場と戦争を望んでいた。同時に、南北戦争の和解を促進するのに必要な共通の敵も捜していた。
アメリカは身近なキューバをスペインから略奪するために、ジョン・オサリヴァンの「明瞭な使命」の啓蒙思想を拡散させた。要するに、アメリカによる略奪や虐殺を全て神の導きと考え、国内のみならず国外においても正当化できるとする思想である。
オサリヴァンはアメリカからネイティヴを追放し、国内に共和政民主主義を成立させる使命を神がアメリカに与えたとした。テキサス共和国併合もその摂理の一環とした。アメリカには天命があるのでネイティヴを大虐殺しても罪にならないとし、国内でのフロンティア拡大に息づまると、外へ向かうようにした。「明瞭な使命」を使えば、アメリカの太平洋での侵略を正当化でき、「米西戦争」や「米墨戦争」を次々と起こし、ハワイ王朝を消し去っても「明瞭な使命」があれば構わないとした。つまり、アメリカ帝国主義的領土拡大主義と、世界を略奪する覇権主義を正当化する合言葉となった。
同じころ、イギリスの政治家ジョセフ・チェンバレンも「明瞭な使命」の標語を使い、「アングロ・サクソンが世界で最も植民地経営に抽んでた優秀な民族であり、未開地のアフリカに文明をもたらす義務を負っている」と宣言した。だから、植民地を拡大して世界の四分の一を支配し、黒人を大量拉致して売っても正当化できるとした。、
アメリカの財界は、アメリカの使命(明瞭な使命)からスペインとの開戦を要求していた。1898年2月15日、キューバのハバナ湾に停泊中のアメリカ海軍の戦艦「メイン号」が、突然に謎の爆発をして沈没し、266人が死亡する事件が起きた。これをきっかけに、アメリカのメディアは、「スペイン人による卑劣なサボタージュが原因」と主張し、「メイン号を忘れるな」のスローガンがアメリカ中を埋め尽くした。
「真珠湾を忘れるな」と同じ構図である。同じ手口は「2001・9・11の同時多発テロ」にも使われた。メイン号の爆発も自作自演だったのである。
結果は当然アメリカの勝利となった。しかし、フィリピンの独立を約束したにもかかわらず、アメリカはスペインに変わってフィリピンを植民地化し、「米比戦争」を起こして、抵抗するフィリピン人60万人を虐殺した。
アメリカの略奪史はまだ続く。アメリカはフィリピン、グアム、プエルトリコをスペインから略奪し、後にハワイを得て太平洋の覇者となった。実はアメリカが覇権国となる土台を築いたのが日本の金と銀だった。ペリーが「日米修好通商条約」を締結した際、「条約第5条」によって、日米貨幣の金銀等価交換が定められたが、その金銀比価は「金1に対する銀4・65」だった。しかし、外国の相場は「金1に対し銀15・3」で銀の価値が著しく高かった。ハリスは「銀貨基準」の交換を主張し、幕府を力でねじ伏せた。つまり、アメリカが1ドル銀貨を一分銀3枚と交換し、それを両替屋に持ち込んで4枚を小判に両替してアメリカに持ち出し、地金で売却すれば莫大な利益が得られる仕組みである。地金としての1両は4ドルに相当する為、次のような流れになる。
1ドル(メキシコドル)→3分(一分銀)→0・75両(天保小判)→3ドル(20ドル金貨)と両替を行うだけで莫大な利益を上げることができた。結果、大量の金(小判)がアメリカに流出し、ハリスもこの仕組みによって私財を増やしたと日記に書いてある。
結果、日本の金と銀が共に無尽蔵にアメリカに流出し、アメリカはその莫大な日本の金を使って「南北戦争」を起こし、国内を北軍中心にまとめたのである。