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「リッチスタン」とは何か(2)

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(2)世界はすでに世界大戦前夜に入っていた!

 これから先に起る大激変を予測には、2015年まで遡らなければならない。

 2015年5月6日、イスラエルのネタニヤフ首相が率いる政党「リクード」は、極右政党「ユダヤの家」と連立政権を発足し、4期連続でネタニヤフ主導内閣が形成された。この新政権は、1996年に始まった第1次ネタニヤフ政権以降最も極右で、特に「ユダヤの家」はアメリカの入植拡大反対姿勢について差別的と噛付く強硬な政党だった。

 極右の「ユダヤの家」は、「第3神殿建設」を党の最大目標に掲げている。第3神殿とは、紀元前のソロモン時代に建設された第1神殿(ソロモン神殿)と、イエス・キリストの時代に存在した第2神殿(ヘロデ神殿)に次ぐもので、イスラエルが独立を勝ち得た最大の目的が、神殿建設にあったとされる。

 なぜなら、「旧約聖書」に神殿の預言があるからである!

「時が来て、彼は再び南に攻め入るが、これは最初でも最後でもない・・・・・彼は軍隊を派遣して、砦すなわち聖所を汚し、日ごとの供え物を廃止、憎むべき荒廃をもたらすものを立てる」(ダニエル書」第11章29~31節)

 現在、神殿再建の際に使用される石は、イングランド中部のベットフォードとアメリカ中西部のインディアナで切り出され、既に船でイスラエルに輸送されている。

 一方で、エルサレムの「嘆きの壁」と隣接するように、タルムードを学ぶ「神学校」を2か所に建設し、そこで常時200人のユダヤ人が、神殿祭司として奉仕する訓練を受けていた。

 神殿完成時の落成式に必要な「赤い雌牛」も、ラビたちが既にヨーロッパから入手し、イスラエルの牛の群れに移植していた。ユダヤ教では、神殿で赤牛を殺し、その灰を集めて祭司が身を清める決まりがあるからである。

「主はモーセとアロンに仰せになった。主の命じる教えの規定は次の通りである。イスラエルの人々に告げて、まだ背に痾を背負ったことが無く、無傷で、欠陥の無い赤毛の雌牛を連れて来させなさい」(「民数記」第19章1節)

 さらに、エルサレム旧市街に「神殿研究所」を建設し、第3神殿のための準備を着々と整えていた。

 もともと、嘆きの壁の上の高台は、かってイスラエルの神殿があった「神殿の丘」とされるが、ユダヤ教徒が敷地内で祈ることは禁止されていた。イスラエル政府が、宗教対立を避けるために、イスラム教徒だけ丘での礼拝を認めてきたからである。

 そこはイスラム教の聖域「ハラム・シャリーフ」で、「岩のドーム」が建つイスラム教第3の聖地である。

 ところが、近年、過激なユダヤ教徒たちが、自分たちも丘の上で祈りを奉げる権利があると主張し、丘に侵入して礼拝を繰り返すようになった。当然、パレスチナ人の怒りを買い、パレスチナ人がユダヤ人を襲撃する事件が多発した。

 2014年10月30日、とうとうイスラエル政府が丘を全面封鎖する事態に発展する。ユダヤ教右派の集会で、聖地活動拡大を呼びかけるユダヤ人活動家が銃撃されたからである。小事から大事に発展するのは戦争の常である。もし、そんなところへ第3神殿が築かれたら、世界的な宗教戦争に発展しかねない。

 軍産複合体に支配されているアメリカは、平和時では国が成り立たないため、定期的に戦争を起こし、その戦火を消化するマッチポンプ・システムが公共事業化している。

 第3神殿で中東が大戦争になれば、ホルムズ海峡が封鎖されるため、石油でライフラインを支える日本は、間違いなく巻き込まれる。

 旧世界から新世界へ脱皮することで、今より強力な支配権が手に入るとしたら、アメリカは平気で旧世界を潰せる国なのである。トランプ現象はその予兆とみるべきである。


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