Quantcast
Channel: 日本と世界の情報ブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1382

カゴメ唄の謎(3)

$
0
0

(3)カゴメ探偵団が迫った徳川幕府と天海の陰謀①

 童唄「カゴメ唄」には何か暗号が隠されている。誰でも知っている唄である反面、その歌詞が意味するものが判然とせず、謎解きを待っているような印象さえ受ける。そのため、これまでも多くの好事家が謎解きに挑んできた。

 中でも不定期連続で人気を博したのが、「カゴメ探偵団」である。筆者は幻想文学評論家として知られる東雅夫氏である。東氏が注目したのは「籠の中の鳥」である。東氏は、悪霊として知られていた「姑獲鳥」こそ、籠の中の鳥にふさわしいと考えた。姑獲鳥とは出産に伴って死んだ妊婦の霊が化生した鳥の妖怪で、幼児や幼子を襲うと信じられてきた。つまり、「カゴメ唄」はいつ出てくるかわからない不吉な姑獲鳥を封じ込める呪文になっていて、子供たちは日々の遊びの中で、この呪歌を唱えることで、無意識のうちに姑獲鳥封じの呪術を実践してきたのではないかと言うのである。

 実は「カゴメ唄」には発祥地がある。千葉県野田市である。その根拠は、作曲家・山中直治が、野田で「カゴメ唄」を採取し、譜面として起こしたことによる。それまで「カゴメ唄」は地方によって様々なバリエーションがあった。そうした数ある「カゴメ唄」の歌詞を統一しスタンダード・バージョンを確立したのである。今日、全国的に歌われている標準的歌詞とメロディが成立したという意味において、野田市は「カゴメ唄」の発祥地なのである。

 野田市出身の幻想文学者・宗谷真爾も「カゴメ唄」の魅力に取りつかれた一人である。宗谷が注目したのは、野田にある愛宕神社の社殿だった。そこには伏せた唐丸籠の中にたたずむ一羽の鶏が刻まれている。しかも、籠の一部が破れており、そこを覗き込むように一人の人物が彫刻されている。宗谷は、これを「破れ唐丸」であるとにらむ。破れ唐丸とは、一部を最初から壊しておくことで、罪障から逃れるという呪術の事である。宗谷は愛宕神社の彫刻も、そうした除災の願いが込められているに違いないと考えた。宗谷は、鶏を鳥類全体の象徴として位置づけたうえで、彫刻上部にあるヤマトタケルの像に注目する。ヤマトタケルは景行天皇の皇子であったが、戦いの途中で命を落とす。死んだヤマトタケルの魂は白鳥となって昇天したとされる。古来、日本人は鳥を魂のシンボルと見做した。飛翔する鳥は天と地を結ぶ存在であり、人の魂を天に運ぶ、もしくは天へと昇っていく魂そのものと考えた。ただし、封じられるという状況から考えて、この魂は善良なものではない。邪悪な魂、つまり悪霊に違いない。今は、まだ封じられているが、いつかは外へ出て災いをもたらす悪霊がおり、それを人々に警告していると宗谷は主張するのである。籠の中の鳥を不吉な存在であるという見方は、東氏が主張する「姑獲鳥説」にも通じる。

 匠の里として知られる花輪村の彫刻師の祖は高松又八といい、江戸時代の名匠・左甚五郎の流れを汲む。花輪村の彫刻師たちも徳川幕府ご用達の職人だった。群馬県には天領、すなわち徳川幕府の直轄領地が多く存在する。理由の一つは、群馬県は徳川家発祥地の地として知られているからである。徳川家康は新田源氏を名乗り、本貫は群馬県の世良田だと称した。歴史の定説では、徳川家康が権威づけのために系図を改ざんして、清和源氏の本流、新田源氏を自称したのではないかとされる。しかし、地元の人は、そう見ない。あくまでも徳川家のルーツは群馬県であり、その証として世良田東照宮があるというのである。世良田東照宮は第3代将軍家光による日光東照宮改築の際、奥宮の社殿を移築して建立された。数ある東照宮の中でも、日光東照宮と並んで、世良田東照宮は別格扱いなのである。

 世良田が徳川家発祥の地であると断言するのは、菊池宮司である。世良田東照宮建立は、全て壮大な呪術的トータル・プランに基づいているからであるという。世良田を拠点に南東方向に富士山が位置する。このラインを延長した先に久能山東照宮がある。久能山は徳川家康の遺体が最初に埋葬された場所である。逆に今度はラインを東北方向に延長すると、そこには日光がある。言うまでも無く、日光東照宮が鎮座し、ここに徳川家康の遺体は最終的に埋葬された。

 かくして、この徳川ラインの起点である世良田に、徳川家光が日光東照宮の奥宮を移設することによって、3つの東照宮及び、二つの霊山を貫く呪術的な結界が鬼門・裏鬼門上に描かれたのである。

 ここに至り、東氏は確信する。徳川幕府の背後には呪術者集団が存在した。彼らは陰陽道や密教呪術に熟達しており、壮大な魔術的仕掛けを施した。ならば、「カゴメ唄」もまた、そうした呪術プランの一環だった可能性がある。では、その中心人物は誰だったのか? 考えられる黒幕は天海である。天台宗の密教僧、南光坊天海こそ、江戸幕府守護を目的とした壮大な呪術を施した張本人に違いないと考えた。ここに至り、カゴメ探偵団はオカルテイストの巨人と対峙を余儀なくされることになる。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1382

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>