(16)アメリカの保守本流思想
「保守本流のバーキアン」と言うのは、エイブラハム・リンカーン大統領の思想である。バーキアンとは、イギリス18世紀のエドマンド・バークと言う思想家の思想を支持する人たちである。彼らはナチュラル・ラー派である。このバーキアンは「永遠の相の下に」と言う思想であり、世の中は永遠に変わらないと言う思想である。革命に反対する。革命など良いことはない。支配者による秩序を認めている。でもあまり手荒なことはするなと言う思想である。「貧乏人たちを助けることはできない。だからそのまま放っておくしかない」 自助努力派であり、福祉反対である。このバーキアン派の代表はウィリアム・ビル・バックレーと言う政治評論家である。
バーキアンと対立する思想派閥がロッキアンであり、アメリカ官僚や裁判官たちの思想である。「法律を守れ」と言う官僚や公務員たちの思想である。彼等はトランプを好きにならないだろう。トランプは公務員の数を大幅に削減する政治改革を断行するからである。
18世紀のイギリスにはトーリー党(貴族の保守主義)とホイッグ党(金持ち商工民の自由党)の2大政党が対立していた。イギリス国王を否定したアメリカには、トーリー党は存在しない。イギリスの商工民ホイッグ党がアメリカ共和党の思想になった。エイブラハム・リンカーン大統領がこのホイッグ党=共和党の創設メンバーである。
共和党ネオコン派は、ユダヤ系の急進的知識人の集団である。彼らはソビエト打倒を目標にしていた。彼等高学歴ユダヤ人たちが、レーガン政権とブッシュ政権の時に、米軍をアフガニスタンとイラクに侵攻させた。中東世界をアメリカ帝国に屈服させようとした。それがイラク侵略戦争である。そして、サダム・フセインを計画通り縛り首にした。(2006年) ところがネオコン派は、中東アラブ世界制圧に失敗した。そしてネオコンの衰退が始まった。ヒラリーを押し立てて、世界を戦争に引きずり込もうとしている。ネオコンは常にイスラエルとともに動く。ネオコンは、若いときに過激な左翼活動家だった。ところが、1980年代に共和党員になって、レーガン政権に潜り込んでいった。ロックフェラー財閥がこれを後押しした。彼らの多くはレーガン政権の高官として入っていった。その代表がジーン・カークパトリック女史(国連大使)で、第1世代ネオコンである。
ところが民主党に居残ったままの、元々の反ソビエト主義の左翼たちがいる。ズビグニュー・ブレジンスキーである。ブレジンスキーはヘンリー・キッシンジャーと同格であり、カーター大統領のお守り役で安全保障担当補佐官を務めた。コロンビア大学の教授になったブレジンスキーはデビッド・ロックフェラーの許可を貰って20歳でコロンビア大学の学生だったバラク・オバマを「この優秀な黒人学生を20年後に大統領にする」と育てた。
1980年代のレーガン大統領は、アメリカ白人の田舎の親父然としていて、トランプによく似ている。「レーガノミクス」と呼ばれた経済政策は、減税による景気回復が中心だった。「アメリカ国民に重い税金をかけるな。簡素な政府にしろ」と、福祉重視を言わない小さな政府主義だった。レーガン政権は、初めの理想を失ってリバータリアン達を追放して、どんどんネオコン達によって占領されていった。だから、対ソビエト軍事強硬派の連中が牛耳ってしまった。レーガンを棚上げして、ネオコンが操った。レーガン政権は、本来は他の出費と同じく軍備も減らす路線だったが、軍備増強だけはやり続けた。このことが1989年のソビエト帝国崩壊につながった。だからネオコンが勝利した。1991年末にソビエトが崩壊して、今のロシアになった。アメリカも大変な軍事出費がかさんでボロボロだった。この時、日本が経済大国になった。アメリカは日本に大金を貢がせて、米国債と言う紙切れを山ほど買わせることで日本のバブルを破滅させた。それ以来、26年間、日本の経済不況が続いている。
イラク戦争に失敗したネオコン派は退潮した。それでもネオコンは生きていてオバマ政権にも入り込んだ。ただ今でも生き残っているのが、ビクトリア・ヌーランド国務省国務次官補である。彼女の夫のロバート・ケーガンがネオコン第3世代の代表である。ビクトリーヌーランド女史は、明らかに統一教会員である。そしてヒラリー派である。ヒラリー自身が学生時代からのネオコン派の過激な活動家だった。彼女が書いた当時の論文は今も隠されて公表されない。
ネオリベラル派がヒラリー勢力である。ヒラリーたちが、2011年から「アラブの春」を画策して、アラブ諸国の政権を次々にアメリカCIAの工作員によって引っ繰り返していった。それでアラブ諸国は、混乱していった。トランプが言った。「リビアのカタフィや、イラクのフセインを殺すべきでなかった。アラブ世界にとっては彼らが生きていた方がずっとましだった」と。トランプは政治家ではないが、政治感覚に優れている。「ヒラリーがカダフィを殺したので、北アフリカ全体がおかしくなった。カダフィがISのような凶暴な原理主義者を上手に抑えていたのだ。カダフィ政権を倒したので彼らが暴れ出した。ヒラリーの国務長官としての外交政策は大間違いである」とトランプは言った。
トランプは国民意識を良くくみ取っている。外国への介入主義は、ヒラリーを中心にして人道主義を表面の旗印とする犯罪的行動である。ヒラリーの生き方は間違っている。と言うのが今度の大統領選挙の争点なのである。アメリカの母親たちは自分の子供がヒラリーが起こす次の戦争で兵隊にとられることを心配しているのである。だから民主党候補のバーニー・サンダースを応援するのである。