(10)トランプ一家が支える政界への進出
トランプは3人の女性と結婚している。みんな元モデルで美女である。最初の奥さんはイヴァーナであり、チェコスロバキアからの移民である。アルペンスキーのオリンピック選手だった。1972年にトランプと結婚し、1992年に離婚した。2番目の奥さんはマーラ・メイプルである。1986年に芸能界デビューした女優で、映画やドラマに出演していた。1993年にトランプと結婚した。そして1999年に離婚した。3番目の現在の奥さんが、メラニアであり、ユーゴスラビア西部からの移民である。3月22日の予備選で、クルーズ陣営がモデル時代のメラニアが「GQ」という雑誌で披露した15年前のヌード写真を取り上げてテレビCMで流した。トランプは怒って反撃してメラニアの写真を自分の広告に使った。ユタ州ではトランプは負けた。
最初の奥さんイヴァーナと離婚裁判になった時、イヴァーナは慰謝料+財産分与で2億ドルの現金と14億ドルの土地と邸宅を受け取った。イヴァーナは離婚裁判の取り決めで現在でもトランプ姓を名乗っている。トランプとイヴァーナとの間に3人の子供がいる。長女のイヴァンカが、トランプの中核会社の副社長をしている。トランプの後継者はイヴァンカである。2人の息子もトランプ企業に勤めている。
イヴァンカには、母イヴァーナの東欧系の血が入っている。ナット・ロスチャイルドと付き合っていたこともある。このイヴァンカの夫はジャレッド・クシュナーと言う実業家である。彼は不動産会社「クシュナー社」の御曹司で、週刊紙「ニューヨーク・オブザーバー」のオーナーでもある。ジャレッドの父、チャールズ・クシュナーは米国イスラエル広報委員会(AIPAC)の幹部である。チャールズはニューヨークの正統派ユダヤ人社会の首領ともいえる存在である。
ユダヤ教を信じる人々は3つに分かれる。①正統教義派 ②保守派 ③改革派の3つである。①は厳格に教典タルムードの戒律を守る。戒律を不変なものと考える。②はイスラエルでは多数派である。③は進行度合いが緩やかな人々で戒律を簡素にしている。ヘンリーキッシンジャーやポール・サミュエルソン達は③の改革派である。イヴァンカはこの正統派ユダヤ人社会のボスの息子と結婚して、彼女自身も結婚前はキリスト教からユダヤ教徒に改宗した。だから、ニューヨークのユダヤ社会はトランプのことを嫌わない。
映画「バック・トゥ・ザ・フーチャー」に出てくるビフと言う悪役は、トランプがモデルだと言われている。
2004年からテレビのリアリティショー「アプレンティス」が始まり、トランプ人気が再燃した。この番組は選ばれた十数名が企業家の見習いとなって、数々の課題をこなす様子を描いた。そして毎週、番組の最後に脱落者が告げられる。最後まで勝ち残った優勝者には、企業での役職と年収2000万円の契約が与えられた。ホスト役のトランプは、毎回、同番組の出演者に「お前は首だ」と宣告した。このセリフが全米で流行語となった。20代のイヴァンカも出演していて何時もトランプの傍らで出演者に厳しい一言を浴びせた。トランプはこの番組に2015年まで出演していた。
2012年大統領選では、オバマの出生証明書問題を追及した。「オバマはアメリカ生まれか疑わしい。大統領の資格がない」とオバマに、「出生証明書」の提出を迫った。オバマはこの要求に応じてハワイで生まれたことを証明するボロボロになった出生証明書を提出するという一幕もあった。アメリカでは日本の様に戸籍がなく「出生証明書」しかない。だからアメリカ人はこのボロボロになった紙きれの出生証明書を持っている。だから、毎回大統領選では、候補者の出生地に関する疑惑が出てくる。
アメリカの本当の裏側の世界を全部知っているトランプは、気合と根性で這い上がった暴力団気質そのものの男である。だからこそ、副島氏は、トランプは世界皇帝デビッド・ロックフェラーと勝負できると思っていたという。それなのに、5月18日にヘンリー・キッシンジャー宅を訪問してあっけなく軍門に下ってしまった。それで自分の勝ちを早々と取ったので、副島氏は啞然としたという。