(9)カジノ、プロレス、裏社会とのつながり
トランプは、いかがわしい商売もやってきた。トランプは、カジノもやるし、プロレス業やボクシングの興業もした。トランプをまねしたのが、日本では西部の堤義明氏である。彼が品川の新高輪プリンスホテルに2000人入る飛天の間を作ったのは、トランプの影響である。
2007年には、プロレス団体のWWEのビッグイベント「レッスルマニア23」にトランプは登場した。リングに上がってプロレスめいたこともやった。勝負に勝ってWWE会長のビンス・マクマホンの頭を楽しそうにバリカンで丸坊主にした。トランプがやってきたカジノとか音楽ショーなどのエンターテイメント・ビジネスには、アメリカ大衆がくっついている。だから、アメリカのテレビ、新聞が、うかつにトランプを叩けない。叩くと、自分自身の人騙しビジネスを叩くことになるからである。
トランプ自身は、酒もギャンブルも麻薬もやらない。トランプはアメリカの現実の中で金儲けの法則に忠実にもがきながら生きてきた男である。当然マフィアとのつながりもあるだろう。でもトランプは、それらを上手に処理して生き延びてきた。アメリカの財務省は、日本の警察に命令して山口組をはじめとする広域組織暴力団を壊滅させようとしている。その理由は、年間5兆円ぐらいの現金を彼らアウトローが動かしているからである。金融恐慌になる前に、現金取引を消してしまいたいのである。だからアメリカが山口組を潰そうとしている。
そもそも山口組を育てたのは駐留米軍である。朝鮮戦争の時、日本全国の港湾でアメリカ軍の艦船の荷役の一切を山口組にとりしきらせた。アメリカ政府が山口組を育てたのである。ラッキー・ルチアーノと山口組3代目田岡一雄の生き方はよく似ている。第2次世界大戦中、アメリカ政府は、ニューヨークのイタリア系の湾岸労働者と船員たちがムッソリーニ政権経由で、ドイツ軍にアメリカの輸送船団の情報を送るので、Uボートに待ち伏せ攻撃をされて船団が撃沈されることに苦慮していた。それでマフィアの元締めのラッキー・ルチアーノに全米の酒と売春と賭博と麻薬ビジネスを許した。その代り、ムッソリーニ政権と手を切らせた。これでアメリカの輸送船団が撃沈されなくなった。→政治の裏側は常にこのように穢いのである。
トランプは、マイク・タイソンなどボクシングのビッグマッチを開催してきた。200万ドルのファイトマネーを選手たちに払うことで、600万ドルぐらいのお金がカジノの泊り客から収益として上がった。
トランプは人生で2度の大きな危機を生き延びた。最初は1990年の不況である。この時アメリカの不動産業界はボロボロになってトランプもひどくやられた。1992年までにトランプの経営するホテルが相次いで倒産した。この時の負債総額は90億ドルと言われている。メディアからは「借金王」と嘲られた。だが、トランプはこの苦境を乗り切った。1993年からビル・クリントン政権が始まった。クリントンは日本叩きで日本の金融業界を痛めつけた。これが「金融ビッグバン」の計略であった。日本は長い不況に突入した。
1995年頃、トランプの不動産業界も再び景気回復の波に乗って経営状況が好転してきた。1996年にはミス・ユニバースの興行権を買収して、メディアで騒がれるようになった。
2度目の危機は、2007年のサブプライムローン崩れから始まった世界金融危機である。2008年9月15日のリーマンショックが大津波だった。この時トランプは打撃を受けた。売れる物は何でも売って身軽になって行った。ここでトランプはカジノ業から手を引いた。バクチが儲かる商売である時代が終わったのである。
2009年にはトランプはカジノ事業から撤退した。「タージ・マハール」「トランプ・プラザ」などを運営するトランプ・エンターテイメント・リゾーツ社は、トランプの朋友・カール・アイカーンに売却している。アイカーンはトランプから経営権を買った後、従業員の組合潰しをやった。だから従業員からの評判が悪い。だが、トランプは労働組合の権利を認めていた。トランプは、「お前たちホテル従業員を、給料は安いけれども雇用し続けてやる。何とか食べさせてやる」という思想で生きてきた人である。だから、破産の危機に瀕しても、従業員の首を切らないで面倒を見たという。労働者たちにしてみれば、経営者個人の人格よりも、ちゃんと給料を払ってくれる人の方が重用なのである。