(3)泡沫候補トランプは、なぜ指名を獲得することが出来たのか?
アメリカの不動産王ドナルド・トランプが共和党内の大統領者指名争いに勝利した。2016年5月3日のインディアナ州で勝利し、6月7日のカリフォルニア州の予備選でそれを決めた。この後は7月18日の共和党の党大会選挙で正式に指名される。ここで、民主党のヒラリー・クリントンと本選挙で一騎打ちになる。
ドナルド・トランプが「2016年のアメリカ大統領選に共和党から立候補する」と出馬表明したのは、2015年6月16日である。この時の出馬演説で「メキシコ人がアメリカに入ってくるとき、メキシコのベストな人々ではない。メキシコは問題が沢山ある人たちを送っている」「彼等はドラッグを持ち込む。彼らは犯罪を持ち込む。彼らは強姦犯だ。でもよい人たちもいる」と問題発言した。メディアはこの発言を、以後大きく取り上げている。トランプは、この後も泡沫候補扱いだった。アメリカのCNNテレビが毎日、「トランプお笑い劇場」の放送を続けた。ところが、2016年の2月からアメリカ大統領になる可能性が急激に現実味を帯びてきたのである。
2016年2月1日、アイオワ州の党員集会が開催された。アイオワ州党員集会では、トランプが7人、テッド・クルーズが8人、マルコ・ルビオが7人の代議員を獲得した。だからクルーズの勝ちだった。2月9日のニューハンプシャー州の予備選挙で大方の予想を裏切って、トランプが11人の代議員を獲得して勝利した。驚きが広がった。この後のサウスカロライナ州、ネバタ州でもトランプが連勝した。このあたりから大騒ぎになった。アメリカのテレビや新聞がトランプを連日取り上げて、CNNは朝から晩までトランプの番組になってしまった。アメリカ国民がそれを見て騒ぎ出した。それでもアメリカ国家を牛耳っているワシントンDCの官僚たちは本気にしていなかった。
ところが、3月1日のスーパーチューズデーでトランプが勝利した為、共和党本部=共和党主流派がこの時動揺した。彼等は焦ってトランプを叩き始めたのである。共和党主流派に寄り添う保守メディアはトランプ批判キャンペーンを始めた。→(日本のメディアもトランプ批判に追随している。日本メディアではトランプは奇人扱いである。)
アメリカでは対立候補を批判する内容の選挙CMに巨額の資金を投入する事が通例である。だが、トランプにはこんなCMは通用しなかった。30年以上もテレビのお笑い番組などに出演し続けてゴシップとスキャンダル攻撃にさらされてきたトランプには全く応えなかった。それらが全て逆効果に終わったのである。ニューズ報道番組でトランプ叩きを作り過ぎたので逆にトランプ宣伝になったからである。
トランプは「自分の選挙費用は自分で出す」と言って、ウォール街からの大口の献金に頼らず戦ってきた。このことがアメリカ人の好感を呼んだ。トランプの特徴は、本音でやる演説である。「これぞアメリカの下層と中間層の白人の本音だ」という内容をズバズバと話す。「下から噴き上げる白人中間層の政治への怒り」の事をポピュリズムと言うが、トランプこそは、2016年版のアメリカ・ポピュリストである。
2月20日に、サラ・ぺイリンがいち早くトランプへの支持を表明した。彼女はアラスカ州知事になる前の若いころは、旦那と鮭・鱒漁の漁船にも乗っていた女性であり、リバータリアンである。スーパーチューズデーの後にはクリス・クリスティーがトランプ支持を表明した。クリスティーは本物のアメリカ白人の親父である。根性と気合が入ったアメリカ白人の男である。ベン・カーソンと言う黒人の医者もトランプを支持した。福祉に頼らないで、しっかりした生き方をしている黒人たちがトランプの勢力下に入ったのである。