(16)米中貿易協定が決裂すればアメリカは「デフォルト」
茶番でいえば、アメリカ政府も負けてはいない。「米国債を誰も買ってくれない状況」を隠すために、自国の国債を買い増しているからである。
現実問題として、アメリカで最も人口の多い75都市のうち63都市が完全に破綻している。そのうち最悪の経済状態にある上位5都市は、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ホノルル、サンフランシスコである。
現状、アメリカ政府の財政危機への対処は見通しが立っていない。だからこそ、「愛国心溢れる」トランプ大統領は、「ベネゼエラ乗っ取り」の謀略に加担したのだ。
アメリカのデフォルトに備え、フランス、ドイツ、イギリスの3カ国は、アメリカが主導する国際決済網「スウィフト」から独立した別の決済システムの創設を発表した。その新たな決済システムは、表向き「アメリカの対イラン制裁の適用を免れるための措置」という名目にしているが、「ドル権離脱」を視野に入れている。
景気後退から恐慌=不況の懸念が高まる中国、恐慌はおろか経済破綻から国家破綻へ突き進むアメリカ。どちらが転んでも世界経済に与えるインパクトは大きい。しかもダブルとなった場合、世界経済は崩壊しかねない。
アジアの結社によれば、「中国がアメリカ製品の輸入を大幅に増やし延命資金をアメリカ政府に提供することが当面の着地点である」と話している。
おそらく中国はアメリカ政府のつなぎ融資が切れる2019年2月15日までに何らかの形で資金を渡したはずである。しかし、そうしたとしても根本的問題が解決されない限りその場しのぎの応急処置に過ぎない。事実、このつなぎ融資の切れた2月15日、アメリカ政府は国税庁の還付金に手を付けたと言われている。
こうした背景もあり中国の習近平国家主席がアメリカのドナルド・トランプ大統領との首脳会談を拒んでいるという。そうとは言え、中国との貿易協定が結べなければアメリカの国家倒産は確実となる。事実、米財務省が発表した2018年度の財政赤字は前年比17%増加の7790億ドル(約87兆1500億円)である。また米商務省が2019年3月6日に発表した2018年の貿易赤字も前年比10・4%増の8787億200万ドル(約98兆4000億円)となり過去最大を更新している。
アメリカによるベネゼエラ乗っ取りは失敗に終わった。当然、トランプ大統領はベネゼエラの石油資源に代わる延命資金を探している。直近の策としてトランプ政権は日本やドイツなどの同盟国に求める米軍駐留費の負担を今の1・5倍超も要求する計画を立てているが、到底呑める話ではない。
あとは安倍政権に馬鹿みたいに兵器を売りさばくぐらいしか手がないのが実情である。それを端的に示したのが2018年9月26日の日米首脳会談でトランプ大統領が「晋三が凄い量の兵器を買ってくれた」と大喜びした件である。
一機100億円のイージス・アショアを2セット。パトリオットの後継であるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル、1セット1000億円)も導入確実となった。護衛艦いずもを空母化、イージス艦の大量建造も併せて発表している。そのすべてはアメリカ製となる。実際、追加105機の購入を決めたF35だが、防衛計画でもF35は100機導入することが決まっており、名古屋の組み立て工場で製造する予定だった。リッキード・マーティンへの支払い自体に変わりはなく、正確には日本で建造する方が高くつく。つまり、この取引は日本製造を無理やりアメリカ製造へと切り替えさせたことにある。
それが米国政府の対外有償軍事援助(FMS)である。今回の決定でオスプレイや早期警戒機E2Dなどを含め安倍政権になってから対外有償軍事援助(FMS)のローン残高は1兆1377億円と5年前と比較して約6倍に拡大、2019年度に支払時期を迎えるローンは国内産兵器分と合わせて2兆円を突破、これに加えて2兆5000億円分のローンが追加になり、約5兆3400億円に達した。日本の年間防衛予算に匹敵する借金漬けの状態となった。今や日本の防衛予算は半分がローンの支払いという有様になっている。
今回の取引は兵器購入の確定で2兆円分の担保を得ることが目的だった。日本国内製造分を無理やりアメリカ製造に切り替え「FMS」のローンという借金札を得る。これで、ともかく2兆円分の金を手に入れる。それまでしなければならないほどアメリカの金庫は空っぽなのである。
この現実を隠すためか、プロパガンダマスコミは「アメリカ経済が復調傾向にある」と連日のように報じている。しかし、「3700万以上のアメリカ人が少なくとも90日、クレジットカードの支払いが滞っている」という状況である以上、隠しきれるものではない。フェイクニュースと切り捨て、敵対してきたはずの大手メデイアにすがるところが、現在のトランプ大統領の置かれた状況を示している。