(12)揺れる出版業界の生き残り戦略とは?
飛鳥「今、出版界も揺れているよね。例えば、某出版社のやり方と言うのは、まず本を出すでしょう。本を出した人の記念講演会をやるんだね。その記念講演会でしゃべったことをまた本の出すんだよ。そうしてまた、分野の共通する作家さんを集めて、朝から夕方までの大講演会をやって、それをまた本にして出すんだよ。これ、批判するわけじゃないんだ。一つの形としては成り立っているから、それはそれでいいの。でも僕はもう降りた。その気があったら、自分で本を出す。自分でツアーだってやるよ。」
山口「今やてますもんね」
飛鳥「だから要は、そんなやり方は僕とは合わなくなったから、基本的にはそことのお付き合いはもうないと思う。」
山口「ビジネスですから、ドライでいいじゃないですか」
飛鳥「そう。出版社もそういう風にして生き残ろうとするんだよ。生き残り戦術だな。これでは今の作家は儲からない。だって10人のコメンテーターの講演料も印税も、10分の1ずつですよ。AKBじゃあるまいし、出版社だけが儲かるシステムで、作家は儲からない。飛鳥昭雄なんか、いつでもラストスピーカーで、客を最後まで座らせておく「客寄せパンダ」と化していました。」
山口「昔の作家さんに比べて、今の作家は儲からなくなりましたよ。だって、昔の作家の話とか聞いていると、うらやましい限りじゃないですか。妖怪図鑑で名を挙げた佐藤有文さんは、20回以上増刷されて家が建ったとも言いますし、石原慎太郎が若い頃、散歩してて眺めのいい土地があったから、はい、ここで即決まって、散歩中に土地を買うんですよ。それぐらい、作家は儲かったんですよね。」
飛鳥「僕、最初出した本はごま書房からなんですよ。」
山口「ゴマから出したんですか」
飛鳥「初刷5万部です。出版不況の今では考えられない数字です。」
山口「まあまあいいですね」
飛鳥「初刷り5万と言うのは、当時1冊1000円ですから単純計算で、印税は10分の1。それが平台に置くと、バンバン売れたもん、僕だけじゃなくて。」
山口「いつですか。ゴマから出したのは。」
飛鳥「僕はコロコロコミックで「超能力」が1回終わった後、ワンダーライフに移行する前にごま書房で出したから、1985年ぐらいです。今、例えば作家に10パーセントの印税を渡すって少ないですよね。8パーセントが多いかな。」
山口「8パーセントが多いですね」
飛鳥「初刷りが1000部とかね。増刷無しですよ。もっと言うと、昔は小説でもそうですけど、最初はハードカバーなんです。次に新書版に降りてきて、最後は文庫本なんです。この3段階で小説家もドンドン儲かっていった。買う人も、新書か、文庫本まで待とうとか自由選択ができました。」
山口「そういうのもありましたね。三毛作ってやつ。」
飛鳥「今は,宮部みゆきだって最初から文庫本ですよ。文庫本って安いよね。600円くらいかな。」
山口「高くてそんなもん。下手したら500円台とかなりますね」
飛鳥「刷り部数が少ない。価格が安い。作家、食っていけないんです。」
山口「食えないですよ。直木賞もらってるとか、文豪ぶっている作家いくらでもいますけど、ロクに生活できないですからね。」
飛鳥「できませんよ、」
山口「威張ってるくせに貧乏な直木賞作家がゴロゴロいますよ。格好つけてますけど、すごい狭い家に住んでいて、食うや食わずって。作家ドリームなんて時代は終わりました。」
飛鳥「下手の賞もらうと困るらしいんだよね。仕事選ばなきゃならないから。」
山口「賞もらってもこれはビジネス用の本、これは儲ける本、これは自分の実験でやる本って、分けてやっていけばいいんですけどね。プロとしての使い分けですね。」
飛鳥「そう思うと、元々タートルカンパニーってタレントも含めてそうだけど、割とメディアミックスじゃん。」
山口「何でもありですからね」