(9)実は人類は何度も滅亡している?
山口「ちょっと話が、ずいぶん逸れてしまったんですけど。」
飛鳥「そうですね。逸らしたのは僕です。」
山口「Aiの話からなんですけど、この世はバーチャルリアリティだという話がいろいろ出てきまして。」
飛鳥「なるほど。この世界そのものがバーチャルだと。」
山口「そうですね。3月14日に亡くなったホーキング博士が、99パーセントは、この世はバーチャルであると言いました。それから確か、バンク・オブ・アメリカの傘下のあるシンクタンクが、50パーセントの確率でバーチャルであると、そんなことを発表してるんですね。それに関して、飛鳥先生はどう思いますか?」
飛鳥「僕はそれ、凄くよく分かります。なぜなら、皆様が見てる光景というのは、全部過去の光景なんですよ。現実に、その瞬間というのは、人間には絶対に見られないんです。感知できるはずもなく、無理なの。光の速度もありますけど、目に入ってから信号に変えられて脳に行って、脳で構築し直してから見てるから、その瞬間は誰も見たこのがない。これって怖いですよ。誰も瞬間を知らない世界に住んでるわけですから。」
山口「存在しないかもしれない、と。」
飛鳥「ある意味では、我々が思う範囲のこの世は、存在しないのかもしれない。だから、昔の人たちはよく言いましたね。我々が見ているこの光景は、むしろ死ぬときに走馬灯のように見る光景を見ているだけで、実はもう死んでるんだと。」
山口「中国の故事である一炊の夢ってやつですね。田舎から出て来た学生が。」
飛鳥「そう。ずっと自分の長い人生を見て。」
山口「俺は出世するんだと言って、飯屋に入って一生分の人生を見るんですけど、それは夢で、死ぬ瞬間にパッと目が覚めて、俺の人生は一炊の夢だったと気がつき田舎に帰るという、かなり切ない話ですよね。」
飛鳥「あれ、すごくリアリティがあるのよ。」
山口「結局、物理学の最先端の情報には、観察しないとその宇宙は存在しないという考え方があるじゃないですか。観察したら、宇宙が現実化する。観察すると存在し、観察しないと存在しない。そんな物理世界ないですよね。」
飛鳥「それを思わせるのはVRですか。」
山口「バーチャルリアリティ。」
飛鳥「CGを使って、これからこれがよりリアルになってくるでしょう?現実とVRの世界って、区別つかなくなってくるんですよね。」
山口「そうなりますね。」
飛鳥「ゲームなんかでも、実際、中で自分が戦うわけでしょ。それが超リアルな空間で現実と全く同じように戦闘するわけですから、下手をするとこの世界に帰って来ないですよ。」
山口「来ないですね。ネトゲ廃人になるんです。」
飛鳥「そう。この世界に戻って来るのは、食べるのと排泄のときだけなんですよ。それすら嫌だとしたら、高濃度点滴だけで栄養補給しながら、自動排泄装置をオンにしたままバーチャルの世界で生きていくわけです。そうなってきたら、昔、押井守氏が作ったアバロンですか。あの世界と変わんなくなってくるんですよね」