(5)山口敏太郎VSオカルト誌「M」
飛鳥「AIの世界でも似たようなことが起こるかもしれないですよね」
山口「急に戻りますね、話が」
飛鳥「人間に近づくということはそういうことでしょう。AIの中でも、ひょっとしたら生存競争や蹴落としがあるかもしれないですね」
山口「実はオカルトの世界で山口敏太郎が生き残っているのは、最長寿のオカルト専門誌「M」に弓引いたからなんですよ。反骨ののろしを上げたからファンが判官びいきでついて来た」
飛鳥「そうですか。やっぱりライバルが必要なわけですね。M編集長と言うのは、ある意味必要なわけですか」
山口「ライバルじゃないです。あの人はいい大学出て、いい成績で、一流企業に入ったからあの地位にいるだけであって、実力で上がったわけじゃないですから。安全地帯にいる人に誰もカタルシスを感じません。そういった意味では、サラリーマンと、僕みたいな腕一本でやってきた作家とを、一緒にしてほしくないです。リアルに殺し合いをしてない彼らとは違います」
飛鳥「それは違いますね。しかし、サラリーマン根性だけでは編集長にはなれませんよ。やはりそれなりの実力がないと・・・。でも山口さんの場合は、退路を断って一本立ちした人ですから、そうれを言う資格があるかもしれないね」
山口「でも、」そういう壁があったからこそ、僕は行けたという気がするんですよ。いつ死ぬかわからないギリギリのところがね」
飛鳥「現在の山口敏太郎と言うのは、要は巨大オカルト雑誌「M」に弓引いたからこそ存在すると。」
山口「それも全部、僕はプロレスを参考にしています。馬場さんが天下を取っていた時に、猪木さんが馬場さんに弓を引いて、新日本プロレスができた」
飛鳥「分かりやすい。猪木です、猪木」
山口「違うんです。僕は前田日明さんです。猪木さんの新日本が人気全盛期の時、前田日明さんが新日のスタイルを否定して、ニュースタイルを出していって、UWFブームが起こるんですよ。これをじーっと見ていました。僕の当時の担当だったのはS君と言うのですが・・・」
飛鳥「今「M」の副編集長ですよ」
山口「ナンバー2ですよね。でも、S君に出した企画が全然通らないんです。だから、ここにいてはメジャーになれないと思った。並木一郎さんを超えることはできないと思ったわけですよ。僕はフォーティアン協会出身なので並木さんは師ではありますけど、越えなきゃいけないのに。それでは、先輩たちにチャレンジするためにはどうしたらいいか? それは簡単だ、と思って「M」に弓を引いたんです。前田日明さんが猪木さんに弓を引いたのと同じ手法ををとったんですよ。M編集長に逆らうと干されると周りから言われましたが、僕は全然平気だった。むしろファイトができる。だから、今となっては、そういう競争は「M]が意地悪をしてくれたおかげで出来たと思っています」
飛鳥「自分の世界を構築できたんですね。山口敏太郎流のシステムをね」
山口「だって追い込まれて、飢え死にする寸前まで追い込まれて。生きるか死ぬかですよ。かみさんと一緒に首括る覚悟でM編集長に反乱を起こしたんです」
飛鳥「大変だったね。某有名運送会社は辞めていたわけだし、生活は瞬く間に困窮したでしょうし・・・」
山口「はっきり言って、自殺するか、まで追い込まれました。でも侍ジャイアンツじゃないけど「威張った奴」嫌いなんです」
飛鳥「某日通の会社を辞めたんでしょう?」
山口「それは、本宮ひろ志の「天地を喰らう」を読んで影響を受けて、もう全部食料を捨てなきゃダメだと思って、退路を断って戦ったんですよ」
飛鳥「なるほど、背水の陣ってわけだ」
山口「実際、命取られることはないですから、今の時代は気が楽ですよ。まだ「M」が開拓していなかったテレビやコンビニ、ネットが僕にはあったんです」
飛鳥「不っと気が付くと、あの時テレビ界には山口敏太郎と僕がいたんですね。結構私はテレビ界長いんですよ。大阪の時代を含めると実は40年以上やっている。でも、敏太郎と言う人物がテレビ界を制覇してきたというのは聞いていたんですよ」
山口「テレビ界はプロレスがわかっていますからね。ここで見えを切らなければいけないとか、ここまではしゃべって良いとか。必死にコンプライアンスを研究した。ここは割とストレートな発言、これは放送コードギリギリまで攻められるとか、そういうのはプロレス心で分かってます」
飛鳥「それにビックリしたのはコンビニの本が山口敏太郎の本で占められて始めたんですよ。これ何だろう、何が起こっているのだろうと思っていましたが、要は老舗の「M」が手薄なところ、まだそれほど注目していないところを、おぬしが開拓したんだよね」
山口「コンビニを馬鹿にしていた「M」編集部があって、テレビを軽く見ていたM編集長がいて、僕はネットとテレビとコンビニしか攻めようがなかったんですよ。逆にそれが、今の世代に受けたのかもしれません」
飛鳥「非常にいいところに目を付けたんですね」
山口「兵法としては、敵が攻めてないところの陣地を取るのが当然でしょう。曹操がここ、見たいに「M」が攻めてるわけでしょう。こちらは周辺から固めていくしかないので、あの方法しかなかったんですね。今考えれば、奇策を取るしかなかったんですよ」
飛鳥「結果論なんだが、敏太郎君が通ってたところを今「M」が攻め込んできているわけですよ。実は「コンビニに「M」の本を出せ」と言ったのは僕なんです。今まで沢山のデータやテキストがあるから、「それをまとめたらコンビニに出せるぞ」って言ったんだけど、当時のM編集長は否定した。それでお主の担当のS君に「コンビニ本絶対いいよ」って言ったら「いいですね」って言ってくれました。でも最初「ちょっと怖いな」って言うから「際者は僕の漫画本も一緒に出して、絡めれ出したら」と言ったら、わかりましたってなったんです。それで出したんですよ。僕はその時、敏ちゃんと「M」との関係を詳しく知らなかったんですよ。知ったのはもっと後だったからね」
山口「そうですね。荒れが正解でしたね。「M」としては」
飛鳥「正解ですよ。結果的に敏ちゃん領土に攻め込んだ。という結果になったんですけど」
山口「別に構わないですよ。サラリーマンのMさんにはハンディ上げますよ。僕はそれが逆にビ。ネスモデルの失敗だと思うのです。この前「M」でUMAの緩い探検本みたいなのがでたんですよ。あれは、東北新社の番組「緊急検証!シリーズ」で僕が出したUMAの飼い方とかあるんですが、あのテイストで書いてるんですよ」
飛鳥「作家は誰ですか?」
山口「編集部が実質作っていて、誰かが監修かなんかで入っている気がしますけど」
飛鳥「緊急検証!シリーズ」は今意外とモデルケースとして使われているんですよ。地上波でもそうです」
山口「そうなんです。あれは逆に自分のスタイルを強固に守らないとダメなんですよ。Mさんがリーダーとしてガッチリした「M」というスタイルを守るべきだったのに、インターネットに入って来る、テレビに出る、コンビニに進出すると、あれで「M」のブランドイメージが逆に損なわれて、実売部数の下落が止まらないじゃないですか。よく使われている大手の印刷会社とかに問い合わせたら、大体の部数を教えてくれるんですよ。実売がいっていないんです。出版業界の人間はみんな知っています」
飛鳥「実は、飛鳥昭雄のネオ・パラダイムASKAシリーズは多い時に3冊出たんですよ。今では入稿してから出るのは半年後、去年11月に原稿納めて出るのは8月末ですからね。他の作家さんの本も出さねばならないし、今ではM編集長は学研プラスの顔になったので、上からの命令でテレビとかで忙しいんじゃないの」
山口「部下もうまく使って、編プロにも頼むとかすればいいんですけどね」
飛鳥「最近、「M」のグッズが売れまくっているんですよ。ちょっと前までは「M」と言う雑誌はレジに持っていくのが恥ずかしいものだったんですよ。だから、多くの人は他の雑誌を買ってサンドイッチにして持っていったんです」
山口「それ昭和の頃のエロ本みたいな存在ですね」
飛鳥「だって、オカルトお姉ちゃんが踊る、その中にネタとして出て来るんですよ。「M」体操だっけ?」
山口「そうです。でもそこまで恥ずかしいですか?」
飛鳥「ところが今、「M」のロゴでいろいろなものが出始めているんだよ。凄いことなんだけど、ネオ・パラダイムASKAシリーズと言うのは、昔はその編集者のボーナスの査定に使われていたんですよ。どれだけ売ったのかの売上高で決めていたと聞きました。そこから先の数式は判りませんが、M編集長から直接聞いた話ですから間違いないと思います。その査定法が今はもう使われなくなった様です。「書泉グランデ」という大型書店が噛んだ神保町にあるんですけど、あそこに僕だけのコーナーがあるんです。そこへ行くと、いろいろなネオ・パラダイムASKAシリーズの表紙が貼ってあって「これは今、品切れ中」とかわかるわけです。確か10冊ぐらいが品切れになっていたので、M編集長に聞いたら、「もう増刷しない」という。考えてみたら、ここ数年飛鳥本が増刷していないんですよ」
山口「何でですか?」
飛鳥「営業の方が自信がないとか、1000部刷って余ったらどうするんだとか、グチャグチャ言って来るらしいです。コンプライアンスの問題とか。」
山口「それ営業の発言じゃないですよね」
飛鳥「みんな後ろ向きなんですよ。僕はそれを聞いて、「これはもうダメだ」と思ったから、今年、自分の出版社をつくったんです。基本的には飛鳥昭雄の本はもう自分の飛鳥堂出版でしか出さないと、そういう風にしました」
山口「それはいい方法かもしれないですね」
飛鳥「もちろん出版コードを取りますから流通に流せますが、あえてアマゾン中心で販売し、あとは書泉グランデのように直接注文がある書店に飛鳥堂から発送するようになります」