(13)メキシコも革命政権成立
トランプが「壁」を作ると息巻いていたメキシコでは、2018年7月1日、大統領選、上下両院の議会選の他、州や市町村3000以上の公職で一斉に選挙が行われた。その結果、政権与党が完敗し、大統領選では元メキシコ市長の左派候補だったアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールが勝利した。
メキシコの既存体制が崩壊へと向かう最大の原因は、国内に蔓延する汚職や犯罪、格差などに対する一般メキシコ人の怒りだった。国民が不満を募らせている事象の典型的な例は「水道事業の民営化及び外資企業への売り渡し」であり、「水道料金の高騰とサービスの低下」である。
これは日本でも他人ごとではない。国内すべての水道を外資に手放そうとしている麻生太郎並びに既存体制の売国奴たちがいる以上、メキシコを見習ってもらいたい。
オブラドール新大統領は、古い体制を見直すとともに「麻薬合法化の可能性も排除しない」と公言している。つまり、彼はメキシコ市長時代に「麻薬組織の撲滅」を大々的に試みたことがあった。その時に取った措置は、軍による取り締まりや、全ての学生を対象に学校で尿検査を実施するなど、強制的で非常に厳しいものだった。しかし結果は、失敗に終わっている。その経験を踏まえて、彼は180度方針を変えようとしている。その狙いは、違法な麻薬カルテルを合法企業にして、メキシコ国内の凶悪化かつ広域化する暴力犯罪を止めることだった。メキシコでは「政治家や警察」と「麻薬組織犯罪」の癒着がひどく、近年は特に無法な混乱状態である。今回の選挙戦でも130人以上の候補者や選挙関係者が殺害されている。また、オブラドールは「麻薬の品質を管理して、違法ドラッグによる極めて高い死亡率を引き下げる必要がある」とも述べている。
すでにカナダでは娯楽用大麻を合法化している。その目的も、厳格な規制に基づいて大麻を合法化することにより、若者を大麻から遠ざけたり、違法薬物を犯罪組織の資金源にできなくすることだという。勿論、政府には「合法化に伴う税収の増大」という思惑もある。
日本では、「ドラッグ犯罪」は、まるで人殺しの如く報道され、人でなしのように批判を受ける。しかしドラッグの最大の犯罪は、それを扱う犯罪組織の資金源になることにある。法で禁止するから、犯罪組織の資金源になる以上、いっそ法的に認めて政府や公的機関の管理下に置き、安全に使用すればいいだけの話である。それをせず、あくまでも犯罪としてきたのは、まさにドラッグシンジケート=犯罪組織の利益になるからである。
ドラッグシンジケートを運営するハザールマフィアは、麻薬密輸で儲け、その代金として武器を提供してきた。これに対処すべくメキシコ新大統領は画期的な麻薬対策を打ち出したのだ。「麻薬の合法化」および「真実和解委員会の設置」と「証言による麻薬カルテル患部の免罪もしくは減刑」を提案、麻薬戦争を終結しようと動き出した。麻薬戦争絡みで2018年だけでも20万人以上がメキシコ国内で殺害されている。以下にメキシコがハザールマフィアの食い物にされていたかが理解できる。
新大統領の政策が実現すれば、ハザールマフィア=ブッシュ一派の南米麻薬資金および権力が大打撃を受けるのは間違いない。日本と北朝鮮の覚せい剤ネットワークもいずれ明るみに出る日が来るだろう。
トランプ政権は「ドイツ、フランス、ベネゼエラ、イランに政変劇を起こしたい」と考えている。2018年10月28日、ブラジル大統領選挙の決選投票で極右とされるジャイル・ボルソナロ下院議員が大差をつけて勝利したのもその一つだろう。結果、2019年1月1日からはブラジルにも実質軍事政権が誕生することになった。それに際し、ボルソナロは「反キューバ・反ベネゼエラ・反中」を公言し、「親米・親台湾」のスタンスであることに大きな意味がある。
ボルソナロ政権の発足はアメリカ、正確には軍事政権による対中政策の一環だろう。2019年3月21日、ブラジル警察は前大統領のミシェル・テメルを「犯罪組織」の指導者として横領やマネーロンダリングに関与したとして逮捕している。親中で反米だったテメル前大統領を排除したわけである。
ブラジル政変中、「ホンジュラスから北上する難民集団がアメリカに近づいている」と、アメリカメディアが大騒ぎする事件があった。事実、アメリカ軍は、メキシコと米国南部の国境に向けて大砲や戦車を送り込んでいる。明らかに何かが起きている事が窺える。その証拠に、アメリカの国土安全保障省が米軍に難民対策に乗り出すよう要請したところ、米軍は「我々の仕事ではない」と拒否している。この時期、アメリカの中間選挙の最中だった。その意味でハザールマフィア=旧勢力によるトランプ政権に打撃を与えるか、脅し、示威行為という可能性もあり、アメリカ軍の矛盾した動きへとつながっている。
キリスト教圏である中南米を、西洋の枠組みとして重要なエリアにするため、アメリカはキリスト教をベースとした西洋文明の中心になろうと考えてきた。それだけに中南米への影響力を高めておく必要があり、手を伸ばすようになっていることを踏まえると、色々見えてくるものがある。