(10)シャマル・カショギ殺害事件の真相
⑩サルマン皇太子はすでに死んでいる
アメリカが「石油ドル体制」のドルという翼とすれば、もう片翼の石油はサウジアラビアが基盤となってきた。そのサウジでも異変が起きている。
2018年4月に、サウジアラビアの首都リヤドにある宮殿近くで「激しい銃撃と爆発が発生した」と報じられて以降、サウジの実質的最高指導者とされるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が公の場に登場していない。
ブルームバーグ通信(2018年10月6日)がサルマン皇太子の独占インタビューを報じているのだが、その記事に掲載された写真や動画も、全て4月より以前に撮られたものしかなかった。そこで気になる事件が、反政府のジャーナリスト、ジャマル・カショギが2018年10月2日、トルコのサウジ総領事館内で消息を絶ったというニュースである。この事件では、トルコメディアが「カショギが総領事館内で拷問、殺害された際の音声は録音され、スマートウォッチから外にいた婚約者のスマートフォンへ送られていた」と報じており、トルコ政府も「彼が殺害された証拠映像を入手している」との声明を出している。そのために、サウジ政府に対する批判や国際的なボイコットの動きが雪だるま式に拡大、国際社会から厳しい批判に晒された。
この事件の背景として、「サルマン皇太子は既に殺されている。因みに現在サウジの実験を裏で握っているのは、なんと「逮捕間近」のイスラエルのネタニヤフ首相だ」と噂されている。つまり、この事件も革命の一場面である事が窺える。石油ドル体制を巡る暗闘でもある。
その視点から事件を洗いなおすと、2018年6月4日、イスラエルの実質同盟国であるヨルダンのハニ・ムルキ首相が、反政府デモの責任を取って辞任した。
サウジアラビアについては、ジャーナリスト、ジャマル・カショギ殺害を巡り、2018年11月16日、一部マスコミが「CIAは正式にムハンマド・サルマン皇太子が黒幕だと結論付けた」と大々的に報じている。CIAは駐米大使のハリド・ビン・サルマン王子(サルマン皇太子の弟)がトルコのサウジ領事館に赴くカショギに勧めた電話の傍受記録や、トルコ当局が仕掛けた盗聴器の音声記録などに基づいて結論を出したという。
そうした中、事件の黒幕であるはずのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の「死亡」がほぼ確実となってきた。安倍内閣の中枢に近い政府関係筋が、サルマン皇太子と常に行動を共にしていた昔からの弁護士に連絡をしたところ、サルマン皇太子は2018年4月に発生した銃撃戦で頭部に銃弾2発を受けて即死した」との情報をつかんだという。
サルマン皇太子は2017年11月に実施した「欧米旧体制側の王族や閣僚、企業家たちの大量逮捕」及び「それに伴う莫大な財産の没収」などにより、サウジ国内の旧体制派から相当な恨みを買っていた。それで旧体制派の巻き返しのために、「サルマン皇太子を暗殺して、操りやすい影武者に置き換える」という計画が水面下で進行していたという。
要するに、サウジアラビアでは石油ドル体制の利権争い、その石油管理者であったサウジ王室のお家騒動が複雑に絡み合って、壮絶な内輪もめと勢力争いの舞台となっている。
この混乱に拍車をかけているのが、旧支配者たちである。気になるニュースがある。アメリカのマスコミが「トランプ政権はトルコ政府との関係修復のために、アメリカに亡命中のイスラム聖職者フェトフッラー・ギュレンをトルコに送還する法的方法を模索している」と報じだした。ギュレンとは2016年7月に発生したクーデター未遂事件に関与したとして、トルコのエルドアン大統領がずっと身柄引き渡しを求めていた人物である。
これまで得た情報から、ギュレンは17世紀に救世主を自称したサバタイ・ツヴィを中心に興ったサバタイ派のリーダーである可能性か極めて高い。つまり、ディープ・ステイトの重要人物なのである。トルコ政府は、現在83カ国に対してギュレンの活動に関与した組織幹部452名の送還を求めている。彼らが裁判にかけられることになれば、欧米旧権力が画策していた「人工世紀末」の疑惑も公になる可能性も出て来よう。
こうした流れの中で、サウジ政府が対米石油輸出の量を減らし始めている。ドルを押さえるアメリカと石油管理者のサウジの間に亀裂が入ってきたのは間違いない。
いずれにせよ、石油ドル体制が揺らいでいるのは、サウジのオイルマネーの枯渇からも読み取れる。すでにサウジアラビアの資金3~5兆ドルが凍結し、スイスにあるクレディ・スイスとUBS銀行に預けていた数千トンの金も、没収された模様である。さらに、2018年10月23日から25日にサウジの首都リヤドで開催された国際投資フォーラム「未来投資イニシアチブ」への参加や協賛を突如キャンセルする動きが世界中に広がった。サウジ人ジャーナリスト、カショギ事件を理由にキャンセルしたのである。