(7)エドワード・ヒース事件とイギリスのEU離脱の関係
④加速するEU解体
イギリスにも大きな動きがあった。2018年4月29日、イギリスのアンバー・ラッド内務大臣が移民政策を巡って引責辞任した。テリーザ・メイ政権の閣僚が不祥事で辞任したのは、わずか半年で4人にものぼる。
イギリス情報機関M16によれば、ラッド内務大臣が辞任した本当の理由は、英国内で発生した「神経剤による元スパイ暗殺未遂事件」や「獅子あの「アサド政権による毒ガス攻撃」の捏造に加担し、戦争を煽ろうとしていたことへの責任を取らされらたからである。これはイギリス内務省が、国内向けの情報機関である「M15」を管轄下においているのが要因である。EU離脱後にメイ首相は辞任、その後にイギリスとEUの通商関係は直ちにWTO(世界貿易機関)の加盟国・地域という枠組みに代わるという。
イギリスがEU離脱を図るのは「ヒース事件」が関わっている。保守党党首だったエドワード・ヒースは1970年の総選挙で保守党を勝利に導き、首相に就任するが、真っ先に行った政策がEUの前身となるEC(ヨーロッパ共同体)への加盟だった。イギリスがECからEUへと加盟してきたのは、このヒースの決断による。しかもその理由が、「14歳の少年との性的関係」をナチス派勢力に撮影されたのが原因だったという。これで恐喝されたヒースはEC加盟を受けざるを得なくなった。
こうした背景もあり、イギリス政府関係者や国民の間では、EU反対の声が長年くすぶり続けていた。その意味で、イギリスが「合意無き離脱」を選択する可能性は低くない。ヒースの裏切りと言う視点から見れば、自然なことだとわかる。
EUに反旗を翻したのは、イタリアやイギリスだけではない。すでにハンガリー、ポーランドも独自に反EUの動きを強めている。特に顕著なのがポーランドである。
2018年7月4日、ポーランド政府はEU執行部のも反対を押し切って、「最高裁判所に関する新法」を施行、最高裁判事の定年を70歳から65歳に引き下げて27人の新最高裁判事を任命した。約70人いる判事の内最高裁トップを含む3分の1以上を引退させ、大幅に人事を入れ替えた。
その狙いは、ポーランド政府要人96名が死亡した2010年の「政府専用機墜落事故」がある。この事故について、当初から不自然な点が多く指摘され、2016年あたりから本格的再調査が進められていた。その結果、気体の残骸から「爆発物」の痕跡も見つかっている。→、2010年当時、ポーランド政府は、ユーロ導入を拒んでいた。しかし、墜落事故が起きて当時の政府関係者が死亡した直後に、ポーランドは自国通貨ズウォティを廃止してユーロ導入へと一気に舵を切っている。その後にユーロ導入に奔走したドナルド・トゥスクは欧州理事会議長の座に着いた。つまり、ポーランドの政府関係者には「その飛行機事故に加担した見返りにトゥスクはEU中枢のポストを手に入れた」という疑念があったのである。
ポーランド政府が裁判所の判事を総入れ替えした背景には、トゥスク欧州理事会議長に刑罰を与えることが目的だと言っていい。
こうした欧米内部の戦いは、最終的にEU本部の崩壊へとつながっていく。アメリカもまた、EU解体に向け、動いているのだ。事実、アメリカのトランプ政権は、事前通告もなくEUの外交的地位を格下げした。さらにダボス会議に参加しない旨をツイッターで発表している。もはやEUへの敵対を隠さなくなっている。すでにEU解体は既定路線となっていることがわかる。
⑤宗教界の不気味な動き
経済危機のイタリアは正式に中国主導の「一帯一路」構想への参加を表明した。この動きを理解するには、2018年2月のあるニュースが関わっている。
バチカンと中国政府が共産党公認のカトリック教会(中国天主教愛国会)の司教選任を巡って事実上の合意に達したという歴史的な出来事である。イタリアはバチカンの影響が強い。中国政府が中国内のキリスト教布教と、信徒の安全についてバチカンと合意した。ヨーロッパ情勢は、この宗教の動きを知ることが重要である。その意味で、次のニュースも非常に大切となる。
正教会の分裂である。
一般的なニュースではトルコのイスタンブールにある正教会本部=コンスタンティノーブル宗主教が、10月11日、「ロシアのモスクワ総主教からウクライナ正教会が独立すること」を公に認めたと報じている。それを受けて、ロシア正教会は「コンスタンティノーブルとの全ての関係を断ち切る」と発表、正教会全体が最も大きな分裂の危機に直面することになった。
ロシアと正教会の関係は、後で述べるが、現在のロシアを実質的に支配しているのがロシア正教会である。ロシアの絶対的な権力者はウラジーミル・プーチン大統領ではないという。
2019年3月3日、リーマ法王フランシスコがイスラム教誕生に地であるアラビア半島を訪れている。翌日、訪問先のアラブ首長国連邦のアブダビで宗教間会合に出席、その際に他の宗教指導者たちの前で「宗教間の連携もしくは共存共栄」をイスラム教の指導者と共に呼び掛けている。
世界に15億人の信者を持つローマ・カトリック教会の最高司祭がアラビア半島をはじめて訪れ、同じく15億人の信者を持つイスラム教の指導者と共に声明を出すというのは、一神教の世界にとってかなり意味が深い。
リーマ法王のアラビア半島訪問は、「世界政府の構築」に向けた動きだという。この動きに最後まで反対しているのが欧米旧権力のハザールマフィアとサウジアラビアやイスラエル政府という構図となる。