(4)「あり得ないことなどあり得ない」時代の幕開け
明らかに「孫正義潰し」の動きがあったことは事実である。実際、ソフトバンクが提携する「ファーウェイ=華為」は、その名の通り「中華人民共和国の為」の企業である。ファーウェイの創始者で孟晩舟の父親、任正非は中国人民解放軍の元軍人であり、中国政府との結びつきが強い。ファーウェイ自体、中国軍の電子化のために設立したハイテク企業なのだ。
現在、アメリカは中国と覇権争いを行っている。そのターゲットとして中国の基幹企業であるファーウェイに対し、国際的なボイコットを呼びかけ、オーストラリアやニュージーランド、イギリスなどに続き、同年12月7日には日本政府も各府省庁や自衛隊が使用する情報通信機器からファーウェイ製品を排除する方針を発表している。
先のPayPay にせよ、決定打となったのは「北京」経由の個人決済システムだった。従来の国家間の個人決済システムはアメリカのNSA(国家安全保障局)を経由してきた。それを北京に切り替えるためのシステムである以上、狙われるのも当然であった。
実は、それだけではない。
ソフトバンクの孫正義は2017年、サウジアラビアの資金力を基盤とした10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を立ち上げた。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は彼のビジョン・ファンドへとさらに450億ドル出資すると約束していたが、カショギ殺害事件が発生してからは、そのサウジの資金源も凍結された。(カショギ殺害事件→サウジアラビアの反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギが、2018年10月2日にトルコ・イスタンプールにあるサウジアラビア総領事館に入って殺害された事件)
そのために、孫正義はソフトバンクを上場して、その穴を埋める資金を調達しようとしたともいわれている。
いずれにせよ、孫正義は「用済み」となって捨てられようとしている。何とか生き延びようと必死に動き、あがいているようだが、「時代の流れ」がそれを許さない。
多くのメディア、経済専門誌は、カルロス・ゴーン逮捕にせよ、ソフトバンクの危機にせよ、従来の文脈で語るだけでお茶を濁している。それでは「今」を理解できない。いま、世界で何が起こっているのか。それが理解できないことは、これから起こることも理解できないことを意味する。
もはや、従来の価値観で物事を判断する時代は終わった。いま、求められているのは、新時代へ向かって変革の時代を迎えた世界を正しく認識すること。それこそ「革命」と言っていい激動の時代が幕開けしたのである。革命の時代、それは一寸先が闇を意味する。あり得ないことなどありえない。そんな時代だ。その証明として、いや、生贄として「平成時代の巨星」であったカルロス・ゴーンと孫正義が選ばれた。この2人だけで終わる話ではない。もっと大物が、もっと驚くべき人物が逮捕になり、あるいは「突然死」するだろう。あるいは巨大企業が倒産し、消滅するだろう。巨大な組織や国家までもが消え去ることも当たり前になるだろう。
信じられないような「事実」が頻発する時代に必要なのは、荒唐無稽として切り捨てられてきた「事実」を受け入れる柔軟な心構えである。陰謀論などと言って切り捨て、小ばかにしていた「情報」から正しい認識へとたどり着く術なのだ。
それほどまでに世界は激動している。ありとあらゆるものを呑み込み、流し尽くそうとしている。私たちは、その激流の中を泳ぎ切り、未来へとたどり着く必要がある。忘れてはならないことは、この革命の後に待つ「未来」は明るいということである。だから絶望してはならない。