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金融再起動の最新情報(2)

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(2)かって日本の会社は社員のためにあった!

 経営という視点で平成を眺めれば、戦後の復興と経済的躍進を支えてきた「日本式経営」から「欧米型経営」へと切り替わったことが理解できる。その分岐点に登場したのがカルロス・ゴーンなのだ。

 日本式経営の最大の特徴は、マツダの歴代フォード出身社長たちが目を見張ったように「長期計画が遂行しやすい」という点にあった。逆に言えば、株主への還元を第一義とする欧米流の経営は、常に短期での高収益が求められる。短期で最も手軽で確実な方法は、人件費の圧縮である。次は会社資産の売却となる。人件費を減らすには、アメリカならばレイオフ、日本ならば非正規雇用、派遣社員の急増となる、安い賃金で非正規の工員たちをこき使い、利益を出すために平然と解雇を繰り返す。福利厚生をドンドン減らし、施設も売却する。そうしてひねり出した利益を株主に莫大な配当として渡し、それを行った「プロフェッショナル」な経営者たちは、莫大な役員報酬を得て次の会社へと移る。これが21世紀となった平成の時代の在り方となってしまった。

 だが、「戦後の昭和」と「20世紀の平成」は違った。日本式経営では「持ち株制度」があったからである。企業の株は、創業者やオーナー一族と経営陣を除いて、その多くはメインバンクを通じて信頼できる企業で保有し合っていた。また、ボーナスの一部として社員に株を渡すストック・オプションを採用する会社も珍しくなかった。当然、各企業が株式を持ち合う以上、株式配当を強く求めることはなく、きちんとした経営方針を示せば株価の低下も受け入れた。企業間による株式の持ち合いは「ものを言う株主」のような強欲な連中を排除できるのである。とりわけ、外資や部外者を排除できる点で非常に菅れていた。

 株主が安定すれば、企業は長期的視野に立って経営を行うことが可能となる。長期プランの経営計画には、社員の安定雇用が不可欠である。社員が安心して働けるという確信を見出せることが最優先の経営方針となる。そのために編み出されたのが「年功序列賃金制度」と「終身雇用」である。この2つが機能すれば、労働条件は会社の成長と共に充実していく。社員が逃げ出さないようにするには、福利厚生を充実させ、会社が得た利益をきちんと社員に還元しなければならない。経営方針が「利益を社員に還元する」こととなれば、当たり前だが労働組合と経営陣は対立することはない。労使一体が可能となり、経営はますます安定する。かっての日本の会社は顧客と株主、そして社員のためにあったのだ。

 戦後日本の経済発展は、欧米企業では不可能な「長期的計画」の基づく商品やサービスを展開することで実現した。「メイド・イン・ジャパン」が世界を席巻したのは、日本式経営があったからである。 

 日本式経営では、社員の代表が社長となる。誰もが普通に学んで、普通に働けば、普通の暮らしが約束されていた社会が人類史上、初めて成立したのである。それが「21世紀の平成」の20年足らずで失われてしまった。

 平成時代の30年で、日本はどうなったのか?

 2016年1月、労働組合連合の調査によれば、非正規労働者2000万人超の内、7割が年収200万円以下であった。しかも、年収100万未満は38・4%、全体の4割弱である。つまり、日本の全世帯の内、3割がすでに「貧困層」に落ちているのである。

 先進国でまともな収入を得るには、高度な専門知識が必要になる。貧困層とは、その教育費を捻出できない家庭のことであり、格差の固定を意味する。今の日本の奨学金制度は、奨学金(スカラシップ)といいながら、その実態はサラ金より悪質な学資ローンである。2015年には、学生の52・5%が400万円前後の借金をして社会人になっている。

 それだけではない。日本の「虎の子」と言っていい金融資産も奪われてきた。狙い撃ちされたのは260兆円に及ぶ「郵貯マネー」だ。2001年、郵政民営化を訴えた小泉ブームによって郵政グループは民営化され、その資産は、株式投資できるようになった。

 それ以前「昭和の時代」、日本人が汗水垂らして稼いだお金は郵便局で貯金となり、その金は「財政投融資」に使われてきた。大半は地方自治体のインフラ投資になった。インフラが充実すれば、人々の暮らしはよくなる。こうして日本人のお金は日本人のために使われてきたのだ。

 それが、株式投資に回されればどうなるのか? 郵貯マネーだけでなく、年金基金(180兆円)、公共マネー80兆円も株式に投資されている。つまり、たとえ利益が出ようとも日本人の生活を豊かにすることはない。すでに日本の企業は外資によって押さえられているからである。

 会社四季報があれば見てほしい。株主構成を見ると、上場会社は英語名の投資ファンド、外資の信託銀行が大株主となっている。日本の信託銀行でも、外資の傘下となっており、名目上は自社株の委託管理だが、実態は日本企業の富の強奪である。

 大株主となった外資ファンドは、管理する自社株の価値を上げるように経営陣に要求する。しかも外資ファンドは、株価に応じて高額な役員報酬という餌を用意している。経営陣は人件費をコストカットし、名目上の数字を良くしようとする。こうして会社の利益は株主へと吸い上げられ、社員に還元されることはなくなった。

 外資ファンドの経営者や株主をたどっていくと、世界の富の99・9%を支配する「700人」の名前が必ず登場する。もはや、日本人の生活を良くすることはない。だからこそ、非正規雇用が増え、3割の世帯が貧困層に陥ってしまったのだ。

 カルロス・ゴーンは、世界の富を支配する連中たちにとって実に都合がよかった。だからこそ、プロパガンダに利用され、徹底的に持ち上げられてきたのである。


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