(66)歴史的現代~近未来→世界(その4)
聖徳太子は「未来記」を通じて天体の大接近を預言する。
「生羽飛虚空 巌石現眼口」の意味は、羽が生えて空を飛び、目と口のある岩が出現する」である。
これを直訳解釈すれば、「目と口があり、羽を生やして天空を飛翔する岩石」となる。そんな不気味な岩が存在するはずがない。だが、もし宇宙を飛び回る光の尾を引くほうき星を鳥と想定すれば、彗星の解釈が可能となる。ところがまだ問題がある。彗星を構成する物質はほとんどが氷で、岩石は稀だということである。それに彗星規模では地球を転がすことは不可能である。衝突でも転がせない。潮汐力はほとんど働かないからである。そのためには質量が足らなすぎる。そこで可能性があるのは、惑星規模の新地殻天体の誕生である。長い尾を引くのは、灼熱の高圧高温ガスを後方にたなびかせているためである。
そんな天体が誕生する可能性は実際にあるのだろうか?
そこで注目したいのが、「巌石現眼口」である。しかし、眼球を持つ天体などあるはずがない。あるなら眼球に見える模様を持つ天体ということである。そんな物があるだろうか?
一つあった。木星である。木星を見てみると、一か所だけ特徴的な部分が存在する。そこは激しい木星大気の流れにも動じず、いつも同じところに留まり続ける「大赤斑」である。それはまさに木星の目に見える。大赤斑の巨大さは、長さ3万キロ(時には5万キロ)、幅1万3千キロもあり、地球3個が楽に入る大きさである。
「ガリレオ探査機」の調査で、大赤斑はカール・セーガンたちが唱えた巨大な低気圧(台風)ではなく、周囲より9~14キロも盛り上がっていることが確認された。どこの世界にも、一か所の留まりながら周囲より盛り上がる低気圧など存在しない。科学的にも絶対にありえないのである。そこで最も考えられることは、大赤斑の下に超弩級固形物が存在し、そこから真っ赤な噴出物が上昇していることである。それは地球の大きさをはるかに超える超弩級火山の存在である。
木星はガス天体ではない。地球と同じ地殻天体であり、1994年7月、木星に衝突した「SL-9 シューメーカー・レビー彗星」が残した大穴を観測した「イギリス赤外線天文台」は、膨大な量の水の存在と、他にも様々な元素を観測した。
これだけでも、木星が水素とヘリウムしかないガス天体惑星とする根拠は消滅した。ガリレオ探査機から木星に放出された「ノーズ・コーン」は、木星深部が乾いている情報を最後に音信を絶った。その結果を受けて、NASAは木星の最深部に水が存在しないと発表したが、それはイギリスの観測結果と矛盾する。しかし、そこが陸地(特に砂漠)だったらどうなるのか? その事からイギリスが観測した位置は、木星に存在する超弩級海洋だった可能性が出て来る。
木星の「白斑」を観測した結果、やはり大量の水が存在することも確認され、結果的に木星には、湿っている所とそうでない所があると判明した。まさにそれは地球と同じである。
白斑は、出現と消滅を繰り返し移動することから、巨大な低気圧であることが分かった。すると、台風を産み出す海洋の存在が見えてくる。これらあらゆる木星の観測結果が、木星が巨大な地殻天体であることを物語る。
現在、重力が宇宙を支配するのではなく、プラズマが支配する構造が見えている。だが、そのプラズマの性格にはまだまだ未知の部分が多く、重力の大小をプラズマが引き起こす現象に過ぎないとすれば、木星や土星の質量が小さいのもプラズマの影響となる。
火山から真っ赤な噴煙が立ち昇り大赤斑を形成しているとなると、そこが大噴火を起こせば、天体内部のマグマが噴き出すことになる。噴火規模と方向にもよるが、それが木星の引力圏を突破し、太陽の引力に魅かれて内太陽系を目掛けて突進してくることが考えられる。
その新天体は灼熱の膨大な量のガスを後に噴出しながら、宇宙空間を突進することになる。ガスの尾は木星の大赤斑と同じ真っ赤で、たなびく尾はまさに鳥の羽のように見えるだろう。
聖徳太子は、神罰を与える巨大な原始天体が、地球目掛けて突進してくると「未来記」を通して警告していると思われる。
二つの巨大質量の天体がニアミスをすれば、互いに潮汐力が働いて無事では済まない。特に生命活動が活発な地球の被害は甚大で、その多くに致命的な損失を与えることになる。未曽有の大カストロフィが地球を襲うのである。
「岩」が口をきくとあるのは、原始天体とのニアミスの際、凄まじい轟音が空気を切り裂いて飛び交うのかもしれない。実際は真空中で音はしないが、天体規模のプラズマが飛び交えば、天地を引き裂くほどの激烈な轟音が世界中に走るはずである。
人類が未だに見たこともない雷(火球)が大地を蛇のように嘗め尽くす。灼熱の原始天体が放つプラズマは、摂氏1万度を超える可能性がある。プラズマの超高熱は理論上無限大だからである。そんな地獄のような地球の最後に、果たして生き残れる人間などいるのだろうか?