(71)最初の災いが起きる前に起こること
ヨハネは鉢による最初の災いが起きる前に、次のようなことが起こることを記している。
「わたしはまた、火が混じったガラスの海のようなものを見た。更に、獣に勝ち、その像に勝ち、またその名の数字に勝った者たちを見た。彼らは神の竪琴を手にして、このガラスの海の岸に立っていた。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第15章2節)
「彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とを歌った。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第15章3節)
勝った者たちは、ガラスの海岸に立ち、モーセの歌を歌ったという。モーセは様々なヘブライ構造物に陰陽一対を仕組んでいる。アークもそうだが、神殿の基本構造や十戒石板も陰陽一対になっている。そのモーセに関わる歌が、「ラッパ」から「鉢」へと移る箇所に登場するのは偶然ではない。それをヨハネが第7のラッパの後で記しているのは、陰陽一対、ラッパと鉢が一対になっていることを示唆しているのである。
復活した原始キリスト教徒が、イエス・キリストとモーセの歌を歌うのは、ヤハウェが導き、モーセに率いられて海を渡るイスラエルを暗示している。その先頭に、新旧約聖書の預言者だけではなく、原始キリスト教会の預言者も立っているのだろう。それも1人や2人ではなく、復活された原始キリスト教会の歴代預言者の姿もあるはずである。彼らは死から復活して立っている。
そのシーンは、イエス・キリストがモーセを導くヤハウェ(エホバ)であること、新約神と旧約神の融合を意味し、2つが一対を成しているという示唆でもある。
イスラエル人と共に紅海を渡ったモーセは、シナイ山で一対の十戒石板を授かる。
「モーセがシナイ山を下った時、その手には二枚の掟の板があった。」(旧約聖書「出エジプト記」第34章29節)
その後、イスラエル人は約束の地に入り、新内半島で移動式神殿だった幕屋は、ソロモン神殿へと変わった。そこも一対構造になっている。
「彼は神殿の前に日本の柱を作った・・・(中略)・・・その柱を聖所の正面の右と左に一本ずつ立て、右の柱をヤキン、左の柱をボアズと名付けた。」(旧約聖書「歴代誌 下」第3章15~17節)
「この柱は外陣の前廊の前に立てられた。一本は南側に立てられて、ヤキンと名付けられ、もう一本は北側に立てられて、ボアズと名付けられた。」(旧約聖書「列王記 上」第7章21節)
神殿の前に立てられたヤキンとボアズの2本柱は、日本の神社の前に立つ「鳥居」の原型でもある。かって鳥居は2本柱に太い縄が張られただけの構造だった。
モーセの時代、少なくとも預言者は2人いた。1人はモーセ、もう1人はモーセの姉のミリアムであり、この2人で預言者の陰陽を成していたのである。(ミリアムは自分の方がモーセよりも上だと増長したために、神から叱責されて病に陥ったことがある)
このように、モーセは陰陽一対の象徴的存在でもある。
小アジアの7つの教会の指導者たちはこのようなカッバーラの仕掛けを知っていたため、黙示録を正しく解読できた。だから、「七つのラッパ」と「七つの鉢」の災害を、時系列で受け取らなかったはずである。
次に、「七つ目の鉢」の箇所で、666の回答が記されている。
「わたしはまた、竜の口から、獣の口から、そして、偽預言者の口から、蛙のような汚れた三つの霊が出てくるのを見た。これはしるしを行う悪霊どもの霊であって、全世界の王たちの所へ出て行った。それは、全能者である神の大いなる日の戦いに備えて、彼らを集めるためである。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第16章13~14節)
つまり、「最初の6=竜=ルシフェル(サタン) 2番目の6=獣=世界総統 3番目の6=偽預言者=バチカンの法皇」となる。
「蛙」は、聖書では災いや汚れを示す場合に用いられる。蛙から出てきた「三つの霊」も、666と同じく「ルシフェル・獣・偽預言者」各々の霊を意味し、ヨハネが「悪霊どもの霊」と記す彼らは、3匹で「死の樹」の3本柱を構成する。
汚れた霊の3匹は、世界中の国々の指導者に声をかけ、戦争に参加せよと命令を下す。彼らは蛙のように、いつの間にか川から這い出し、寝床の奥にまで侵入する。
「ナイル川に蛙が群がり、あなたの王宮を襲い、寝室に侵入し、寝台に上がり、更に家臣や民の家にまで侵入し、かまど、こね鉢にも入り込む。蛙はあなたも民も全ての家臣をも襲うであろう。」(旧約聖書「出エジプト記」第7章28~29節)
汚れた666の3匹が世界の指導者をどこへ駆り立てるかというと、ユーフラテス川の西のイスラエルに通じるハルメギドである。そこは「世界最終戦争(ハルマゲドン)」が勃発する、人類最後の地である。
「汚れた霊どもは、ヘブライ語で「ハルマゲドン」と呼ばれる所に王たちを集めた。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第16章16節)
ハルメギドという地名は「軍隊の丘陵」という意味である。イスラエルの北西部のガリヤラ南部、エルサレムの北約100キロに位置する南北約32キロ、東西22キロのこの荒れ地には古代イスラエルの軍事要塞が築かれていた。この地名は「ギリシャ訳聖書」でハルマゲドンへと変わり、世界最終戦争を意味する言葉として知られるようになった。
現在、メギドは国立公園に指定され、荒れた野と畑以外は何もない。最も近い町は、アフラという人口15万ほどの地方都市で、そこからバスでメギドまで行ける。現在もメギドはイスラエル国内の交通の要で、イスラエルが戦場になった場合、守る側も攻める側も必ずメギドを通過しなければならない。しかも、ナポレオンがエジプト遠征の際、メギドを見て、「世界の軍隊がここで大演習できる」と言ったと伝えられるほど、戦場には格好の地形らしい。だから、古代イスラエル人は、地下水道施設のある頑丈な要塞をこの地に築いたのである。