(58)「七つの頭・十本の角・七つの冠の竜」
ヨハネの黙示録は、ここからさらに複雑化する。
しかし、カッバーラの合鍵があれば、マスターキーでなくても道に迷うことはない。象徴にはそれぞれ意味があり、そのまま受け取らない限り、惑わされることはない。むしろ、象徴を理解することによって、より深い意味が読み取れるのである。
「天に大きな印が現れた。一人の女の身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。女は身ごもっていたが、子を産む痛みと苦しみのために叫んでいた。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第12章1~2節)
この箇所は、聖母マリアが幼子イエスを生む聖夜の様子を記したものとされている。しかし、カッバーラではこれも象徴に過ぎない。重要なのはその象徴が何を意味するかである。直訳しただけでは、背後に隠れている本体を見失ってしまう。これは、イエス・キリストの誕生にも匹敵する重要な出来事を暗示している。
聖書学的に言うと、イエス・キリストの誕生に匹敵するほどの出来事はこの世にはない。しかし、生まれる者がイエス・キリストの分身ともいえるものなら、比喩で使われることは許される。
解き明かせば、こうなる。この出来事は第7の封印に収められていることから、福千年に関わることは明らかである。そして、「女」は原始キリスト教会、「子」はシオン、つまり神の王国を意味している。
福千年においては、指導者的立場になるのは神の王国である。そうなったときには、原始キリスト教会も預言者もすでにその役目を終える。なぜなら、福千年ではイエス・キリストが1000年間を治めるのだから、まだ見ぬ出来事を信じる「信仰」も「預言」も、不要になっているからである。
それに先立って、原始キリスト教会はイエス・キリストが福千年を統治する神の王国「シオン」を建設する使命を担っている。その大変さが、出産の苦しみという形で象徴されている。この世の苦渋は原始キイスト教会(女)が神の王国を建設すること(出産)によって終焉し、そのシオン(子)が次の時代を受け継ぐ。
女が「身に太陽をまとい」とあるのは、原始キリスト教会の教義がヒエラルキーの最高位「太陽の輝き」を持つことを暗示する。神界と直結する「至高の三角形」のことである。それは月の輝きの教会でも星の輝く教会でもない。太陽の輝きを持つ教会という意味である。
「月の足の下にし」は、至高の三角形の下に位置する「倫理的三角形」を従わせるということである。「倫理的三角形」は「月の輝き」の位置に属し、神仏を信じた他の様々な宗教の人々と善人を指している。彼らは、信仰する宗教や道徳に照らしてに生涯正しい行いをした人たちで、福千年の間に復活する。
「十二の星の冠」は、「アストラル三角形」を構成する「星の輝き」の位置を指している。バチカンが直訳したような、聖母マリアが冠をかぶるわけではない。
これが両義預言であれば、太陽系の惑星の数も12個あることになる。そして、ヤコブ(イスラエル)の子ヨセフも、比喩を用いてそう預言している。ヤコブはイスラエル12支族を産んだ祖である。
「ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。「私はまた夢を見ました。太陽と月と十一の星が私にひれ伏しているのです」 今度は兄たちだけでなく、父にも話した。父はヨセフを叱っていった。「一体どういうことだ。お前が見たその夢は、わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか」 兄たちはヨセフを嫉んだが、父はこのことを心に留めた。」(旧約聖書「創世記」第37章9~11節)
この頃、ヤコブの一番末の子ベニヤミンはまだ誕生していないが、自分の星が自分を拝むわけがないので、ヨセフにひれ伏す11個の惑星にはやがて生まれるベンヤミンが含まれている。
この預言によって、兄たちの恨みを買ったヨセフは、エジプトに売られてしまう。
その後、ヨセフはファラオの信任を得て宰相の地位に上り詰め、後に生まれたベニヤミンを含む11人の兄弟が、宰相ヨセフを伏し拝むことになる。だが、これによって預言をすべて解釈できたかというと、そうではない。
問題は、ヨセフの言葉の中にある。11個の星がひれ伏しているのは「わたし」に対してであり、「私の星」とは表現していない。兄弟を星と表現しているのに、ヨセフ自身のことを星とは言っていない。些細なことだが、カッバーラは些細な点に真理を隠すから、無視できない。最初、ヨセフを咎めたヤコブも、ここに何らかの意味があると悟った。だから、「父はこのことを心に留めた」のである。
「太陽と月と十一の星が私にひれ伏している」は、その後の父母(父ー太陽、月=母)との再会を示唆している。自分の子供は12人だから、星も12個あるのだ。これは21世紀に再び新しい星が出現することの複合預言でもあり、このことは、我々もヤコブのように心に留めなければならない。
父が「太陽」、母が「月」と表現される以上、12人の子供は太陽系に存在する星の数を示しているはずだ。しかし、現在確認されている太陽系の惑星は、正式には9個である。
2006年8月24日、チェコのプラハで開催された「国際天文学連合(IAU)」の総会で、冥王星がこれまでの惑星の地位から格下げされ、「矮惑星」となった。しかし、巨大な衛星「カロン」を従えることや、公転軌道の一部が海王星の内側に入ることなどから、他の矮惑星とは別格とされ、惑星に与えられるギリシャ神話の神の名である「プルート」の名を剥奪されなかった。どちらにせよ、人と神の尺度は違うため、ここでは12個を不動の尺度として扱う。
「①水星 ②金星 ③地球 ④火星 ⑤木星 ⑥土星 ⑦天王星 ⑧海王星 ⑨冥王星」
NASAは超冥王星が存在する可能性を示唆しているが、それを加えても太陽系惑星の数は、矮惑星の冥王星を含めて10個である。
そこで気になるのは、火星と木星の間にある「アステロイドベルト」の存在だ。ロシアの天文学者セルゲイ・オルローフ教授のグループは、この小惑星帯を消えた惑星の残骸と見ており、その惑星を「フェイトン」と名付けている。